高麗では、二人が居なくなって、

二年半経っていた。

その間、特興君とソン・ユは、飛虫の毒と

敗血症で、もがき苦しみ死んで行った。


しかし、国境付近の小競り合いは

まだ続いていたが、禁軍やウダルチが

護った。


王は、まだ諦めてはいない。

天門付近には、交代で見張りを

置いていた。


テマンは三日前から其処に居た。


野生の感だろうか?

何か来る!

と思った瞬間、天門が青白く渦を

巻いていた。

中から馬に乗った大きな男が

出て来た!


て、テジャン?い、医仙様?


テマナか?

わぁ~~ん!テジャン!ぐしゃぐしゃに泣く


あれから、何年絶った?


二年半です。


そうか…

スリバンの宿は?

け、開京に向かっていけば

右にあります。


わかった!すまぬが、マンボの所へ

行って、其処に馬車を頼めるか?


イェーテジャン!

涙でぐしゃぐしゃになりながら

テマンはあり得ない速さで走って行った。


マンボの店でスリバン宿まで

馬車をと頼む。

その足で、チェ尚宮の所へ行った。


テマン?天門ではないのか?


テ、テ、テジャンが!


戻ってきたのか?


はい!


医仙は?


一緒です!


どこじゃ?今、何処にいる?


スリバンの宿に馬車をと頼まれました。


チェ尚宮は、馬に乗り、直ぐに

向かった。物凄い速さだ!

テマンも後を追う。

ヨンとウンスは途中で双子の

オムツを替えたり、乳をやったりして、

ゆっくり宿を目指した。


ヨン?二年半だって…


思ったより時は、進んでなかったな?

不安か?


うん…考えてみたら、此処にいたより

村に居た方が長かったから、

この先…物凄く不安…


俺が守るから!信じてくれ!


うん…


疲れているだろう?とヨンは

チュホンをゆっくり走らせ、

スリバンの営む宿についた。

ウンスを降ろし、プンを抱かせる。

自分もバンの紐をとき、抱いて

宿に入った。


ヨンア…

叔母上が居た。


はっ?なに?子か?子がおるのか?


ウンスが入ってきた。

あっ!叔母様…


なっ…子か?

ヨンがチェ尚宮の前まで行って、


長男のバンだ!と抱かせた。

そして、ウンスからプンを受け取ると

長女のプンだ!


ふ、双子なのか?

お前にそっくりではないか?


チェ尚宮がポロポロと涙を溢す。

取り敢えず、部屋へ。

案内された部屋に入った。


天界に行っておったのか?


いや、あの時チュホンに引き摺られ、

着いた先にウンスも後から着いた。

今から100年前の高宗の時代だ!


そんな…

苦労しなかったか?


何でそんなに真っ黒なんだ?

ずっと下を向いていたウンスに


嫁御の身体は大事ないか?


バンが抱っこされたまま叔母の

頬をペタペタ触る。


嫁御?って?


話せば長くなる。


こっちもだ!


テ、テジャン?テジャンの子供ですか?


俺以外、誰がいる?

ウンスと俺の子供達だ!


高宗の時代は蒙古が勢力を増していた時か?


ああ、俺は漁村で静かに漁師をやっていた。


嫁御に被害はなかったか?


俺がずっと一緒にいたんだ。
 
そんな事をさせるわけがない!


あの…叔母様…いえチェ尚宮さん…

嫁御って?


二人が居なくなって、直ぐに鉄原の

親戚に頼んで、医仙を貴族の養女に

してもらい、お前の正妻として、

族譜に載せた。

しかし、第二夫人もおる!


叔母上!!

ヨンはウンスを抱きしめて、

大丈夫だから!と言った。


まあ、よく聞け!

第二夫人は魏王の養女、即ち

王妃様の義姉にあたる柳恩修様じゃ!


はあ?どういうことだ?


王妃様が先々の事を考えた策じゃ!


貴族の養女と魏王の養女が

たまたま同じ名前だったと言う事じゃ!

同じ人物だがのぉ。

魏王の養女だと知れば、手出しはできまい。


えっ?私は、第一夫人でもあり、

第二夫人でもあると言う事ですか?


そういう事じゃ。

別人で、名前が一緒だったという、

他の者を欺く為に第二夫人まで

載せた。魏王の養女が第二夫人なら

側室になろうと名乗り出れば、

謀反に値する!


驚くような事実に、ウンスは

涙が止まらなかった。


バンとプンが泣き出した。


なんじゃ?どうしたのだ?

ほらほら、泣くんじゃない。


バンとプンを寝かせると

ヨンとウンスが手際よくオシメを替え


テマナ!後ろを向いててくれ!

と言うと、ウンスがバンに乳をやり

ヨンに渡す。ヨンは背中を

トントンさせ、上手にゲップを出す。

プンが終わるとウンスも同様にする。


いつ産まれたのだ?

ああ、俺とウンスの誕生日に産まれた。


なんと!嫁御と生まれし日が一緒なのか?


ああ、子供達もだ。


運命じゃ!奇跡じゃ!

その時、双子がコロンと

寝返りした。


ヨン?ヨン?見た?


ああ、偉いぞ!と双子を抱き上げると、

嬉しそうに笑う。


そんな幸せそうな四人を見て、

チェ尚宮は涙する。彼奴があんな顔を…


100年前にお産を…しかも二人も

産んでくれたのか?大変で

あったであろう?


超安産だったぞ?陣痛も子供達が

痛くないようにしてくれたし、

凄腕の婆さんがいたから、助かった。


ち、超?

ああ、物凄く安産だったと言う事だ!

バン、プン!ばぁばだぞ!

と目の前に寝かせる。


おおーお。可愛いのぉ。下がるだけ

目尻が下がっているチェ尚宮。


して、お前はこれからどうする?


ああ、俺達は一年向こうに居て、

天門が開く日を待ったが、

こっちでは、二年半も経ってるなら、

海沿の別邸に行って、また漁師でも

やるさ!今更王宮等、行っても

変わっておるだろう!俺がやる事も

なかろう?


そうか!覚悟を決めて帰って来た

のじゃな!だが、王様、王妃様、

重臣達、チュンソクに礼を言え!

特興君とソン・ユを陥れる為に

みんなで策を練り、亡き者にした。


えっ?死んだのか?  

それが一番気がかりだった。

わかった!帰ったら、二人で

王宮に行く。


屋敷は住めるようにしてある!

お前達がいつ帰って来てもいいように。

しかし、子がおったとは、思いも

寄らなかった。

嫁御や…此奴の代でチェ家も終いと

思っておったのに、産んでくれて

ありがとう。

しかしじゃ!お前達?婚儀は?


阿呆か?蒙古が彷徨く時代に

そんな事できるか?

族譜はある!ほら?と

村長が新しく家族の名前を入れた

族譜を見せた。


順番が逆じゃが、明日、菩提寺で

婚儀を挙げていけ!用意は頼むから。

それくらいの我儘を聞いてくれ!


叔母様?わかりました。


ウンス?いいのか?別に挙げなくても

俺達は既に夫婦で家族だぞ?


だって、叔母様が待ってたのよ?

それくらいの孝行してあげなさいよ!


まあ…ウンスがそう言うなら、

そうするか…

翌日、馬車に乗り菩提寺に行った。

ウンスは女官達に連れられて、

支度させられた。

ヨンも着替えるが、それは

ウダルチの正装だった。

ヨンはウンスを迎えに行くと

固まった。

叔母上?どういう事だ?

こんなに豪華で綺麗すぎるではないか!


ふん!腑抜けめ!

これは王妃様が用意した王族の衣装だ!


ちょっ、ちょっと待って下さい。

では、第二夫人として婚儀を

挙げるのですか?


いや、両方じゃ!

正妻として、そして第二夫人として

誰にも文句は言わせぬ!


子供達も連れて行ってよいか?


ああ、好きに致せ。

ヨンとウンスは双子を抱いて、

手を引いて本堂に入った。


そこには、王様、王妃様、重臣達、

ウダルチの面々が居た。

なっ…

みんなも驚いた!まさか子が

いるとは思わなかったからだ。

王妃が立ち上がり


義姉様…お子が?


ウンスはみんなが待っていたと

ハラハラ涙を流した。

ヨンが慌てて抱き寄せる。


王様、長きの不忠をお許し下さい。



順番が、逆ですが、このような場を

設けてくれ、有り難く思います。

柔らかな笑みで、言った。


詳しい話は後じゃ!

早う挙げてしまえ!


チェ尚宮と女官が、双子を預かると

和尚に従い、婚儀をすませる。

これで、二人は真の夫婦と

相成った!ヨンや…誠に良い縁じゃ!

ウンスは眩いくらいに輝いてたいた。

ヨンは前にウンスに聞いた

天界の結婚式を

思い出し、

ウンスを立たせると

向き合わせて


私、崔瑩は柳恩修を妻とし、

病める時も健やかなる時も、

富める時も貧しき時も、

愛し、敬い、慈しむ事を

この命尽きるまで誓います!

と言う。

私、柳恩修は崔瑩を夫とし、

病める時も健やかなる時も

富める時も貧しき時も

愛し、敬い、慈しみ、

来世でも、結ばれる事を誓います!

と言うと、微笑みあって口づけた。


みんなはその光景を夢ではないか?

と見ていた。


あっ!指輪の交換!

それは、もうしてあるからいいだろ?

と手を見せた。


王様、すいません。

妻の時代では二人で誓いを

立てるそうなので、妻の為に

しました。


良き式じゃった!

ここの皆が承認じゃ!

キャッキャッと喜ぶ双子を

受け取ると、


どうだ?母上は綺麗だろ?と

笑いかける。

王妃様が、

チェ・ヨン!子供達を見せて

くれまいか?


ヨンは双子を抱いて連れて行くと


なんと!そっくりではないか?

愛らしいのぉ。

こちらが長男のバンです。

そしてこちらが長女のプンです。

王様も覗き込む。

テジャンともそっくりだ!


王様!俺は、もうテジャンでは

ありません。と礼をすると、

ウンスと一緒にその場を去った。

着替え終わると、ヨンが迎えにきた。


はあ〜っ、緊張したー!

肩が張ったわよ?


やっぱり、雄武村とは違うな?


チェ尚宮が 

このまま屋敷に行け!

と言うので、馬車に乗り、

屋敷に着いた。


ねえ?此処なの?すっごーい!

チェ家って本当に凄いのね。


俺もこの屋敷に帰るのは

久しぶりだな。

門を、開けると、使用人が並んでいた。

旦那様、奥様、おかえりなさいませ。


若様とお嬢様は乳母のカジンが

見ます。


乳母?冗談じゃないわ!

子供は親が見るのが当たり前よ!


ククツとヨンが笑う。

そういう事だ!この屋敷には

いつまで居るかわからん!

乳母などいらぬ!

それに子供達はウンスの乳しか飲まぬ!


旦那様、それでは体面が…


体面?久々に聞くな。

俺達は1年間漁師夫婦として暮らした!

何でも二人でやってきた。

あまり俺達に構うな!

使用人達はオロオロしだした。

そこに叔母が来た!


叔母上!なんだ?この使用人達は?

乳母はいらない!

子供達はウンスの乳しか飲まぬ!


そう怒るな!では、食事の支度と

洗濯をする者と庭の手入れを

する者だけ残す!

皆、マンボに頼んだスリバンじゃ!


ああ、わかった!


急いで子供達の寝台を用意した。

と子供部屋に案内する。


嫁御の部屋は…

俺と一緒でいい!

毎日一緒に、寝ていたから、

閨はそこでいい!


閨って…何だか響きがエッチね。


だろ?この時代は閨とか房事とか

エッチに聞こえるだろ?


え、えっちとはなんぞや?


ああ、物凄く厭らしいって事だ!


何だかお前も雰囲気が

変わったのぉ? 


そりゃそうだろ?1年間も漁師を

やっていたんだ!

そう言えば、一度キム・ジュンが

村に来て、俺を、拷問にかけると

言ったが、叩きのめしたら、

垂れ流したぞ?

それ以来、来なかった!


キム・ジュンとはあのキム・ジュンか?


ああ、史実にあるだろ?

チェ・ハンの時代だったが

歴史を変えぬよう静かに暮らした。

漁師は最高だぞ?

ニヤッと笑うヨンであった。


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