漁師達も手伝い雄武村は

完全に木に囲まれ、その存在すらも

隠れた。出入りは木の間を掻い潜る。


これでヤマセ(海側から吹く風)は

無理だが反対側から吹く風や雪を

防ぐ役目もするであろう!


流石にヨンさんの考える事は

想像を超えるよな。


俺達はどれだけヨンさんと奥さんに

助けられたか?そう言えば、

そろそろか?


ああ、もう産まれても大丈夫だと

凄腕の婆さんに言われたから、

楽しみで仕方ない!


ヨンさん?お産は女の戦場だぞ?

俺の女房の時なんて、叫び声が

外まで聞こえぞ?


みんなそうだったよな。

あんたのせいだー!海に沈めー!

なんて叫び声はザラにあるぞ?


そ、そうなのか?

凄そうだな?


だからよー。奥さんが何て叫ぶか

皆んなで賭けてるんだ。


ヨンはウンスは何て叫ぶのか?

気になってきた。



ウンスとサヤは、毎日のように

話をしていた。


よくそんなに話す事があるなぁ?と

ミョンジュもヨンも言っていた。


大体は二人の出会いから結婚するまで

の話とか、ヨンとウンスは100年後では

どうだったのか?

長い話をしても尽きなかった。


ウンスは何百年も先から来たんでしょ?

一回戻れた時に両親に会いたいと

思わなかった?


あの時、ヨンの事しか頭になかったわ。

助けなきゃ!って。でも、まさか

100年前に来るとは思わなかったの。

ヨンが居たから良かったけど、

もしかしたら、一人で此処に来たの

だと思うと、怖くなる事もあったよ。

だって、蒙古が彷徨いてるのよ?

捕まったら、辱めを受けたわ。

そんな事絶えられないわよ。


そうだよね。私もそんな事されたら、

舌を噛むわよ。

サヤは蒙古に両親を殺されて、

逃げてこの村に着いたという。


ヨン達が帰って来て、

木で村を隠したと言った。



地下室もあるし、これで

この村はこれから起こる史実から

免れるか?被害があっても生き残れる

者もいるだろうと思った。


夕餉を食べ終わると、

ウンスが何か考えていた。


どうした?憂いは話すと約束したぞ?


あのね…ヨン…

ウンスは懐からあの奇妙な物を

出した。


これを観たいの。帰る時には埋めて。


ああ、どういうカラクリだ?


ウンスは部屋の壁にそれを映した。

手術をしている。


ウンス?これが、映画とか言うやつか?

うん…映画はこうやって物語が映るの

これは、手術の技法を映したものよ。


すると、

ウンス、風邪は治った?

と母親と父親が映った。


えっ?ウンスの瞳から涙が溢れた。

野菜を送ったけど届いた?

あなたもひと言いって!

俺はいいよ。

いいから!

ウンスや…そこで電源が切れた。

押し直してもつかない。


ウンスのご両親か?


泣きながら頷く。


帰りたくなったか?


違う…けど…今だけ…ごめん…


ヨンは子供をあやすように

ウンスを抱きしめ背中を擦った。

そして、姿勢を正すと壁に向かって


お義父殿、お義母殿!私は崔瑩と

申します。お嬢さんを連れて来て

しまい申し訳ございません。

ですが、お帰しする事ができません。

手放せないのです。生きていけないのです。

もうすぐ二人の子が産まれます。

どうか、お許し下さい。

一生幸せにします。一生愛します…

ヨンの頬を涙が伝う。


ヨン?私ね…あの時代にいる頃、

ほとんど実家に寄り付かなかったの。

野菜が送られて来ても家に

帰る時間もなくて、いつも腐らせて 

しまっていたの。

自分が親になろうとしている今、

両親の有り難みがわかったわ…

だから、突然オンマとアッパに

会えて嬉しかった…


そうか?俺の側に居てくれるか?


他に何処に行くの?

あなたがいないと生きて行けない!

今、胸にオンマとアッパの事を

きざめたから、良かった…


俺もご両親に挨拶できた。

許してくれないだろうけど、

手放せぬ…

ヨン…私もよ…両親はきっと許して

くれるわ。娘の幸せを願わない親は

いないわ。


ウンスや…予定日とやらは?

あと三週間後位よ。


それまで漁は休む!ウンスの側にいる!


大丈夫よ?心配症ね?


俺の母親は、身体が弱く、

無理して俺を産んだんだ。

それから、寝たり起きたりの日々で

幼き頃に逝ってしまった。

父親は寡黙な人だった。

16の時、亡くなり一人になり、

赤月隊に入ったんだ。

だから、心配なんだ!


初めて聞いたヨンの話。

この人は両親の愛情をあまり知らず、

一人で生きて来たの?


そしてウンスの中にずっとあった憂い…

ヨン…ひとつだけ聞いていい?


ああ、ウンスがまだ持ってる憂いだろ?


メヒさん…許嫁だったんでしょう?

だって…鬼剣にずっと巻いていたでしょ?

許嫁って、婚約者でしょ?

契りを交わしたって叔母様に聞いたわ。

現代では婚約者と言ったら

深く愛し合ってる人達で

結婚を控えてる人の事なの。


それか?ウンスの最大の憂いは!


メヒとは、赤月隊に入って知り、

女人が少なかったせいか、メヒに

惹かれる者も多かった。

俺もその一人だった。

お互いの背中を守り戦った。

いつか情勢が落ち着いたら、

婚姻しようと約束したが、

忠恵王に辱めを受けそうになる所を

師匠が止めて、鬼剣で刺され

非業の死を遂げた。

それを自分のせいだと言い、

違うと言ったが、俺の手を離し

自ら命を絶った。それを止められ

なかったと自分を責めた。そして、

残っていた仲間も次々と理不尽に

死んで行き、守れなかった自分を

更に責めて、七年間時を無駄に

凍らせてしまった。

今思うと、幼い初恋だったのだと

わかる。俺はウンスがいないと

生きていけないが、メヒがいなく

なっても生きてきた。

ほんとにお互いを思っていたなら、

すぐに後を追ったはずだ。



巻いてあったのは、外して私物の箱に

入れてチュンソクに渡した。

もし、処分してなくて、戻って来たら

そのまま燃やす!





例えメヒが生きていても、俺は 

ウンスを選んだ!

それでも、不安か?


もう、いいわ。凄く辛く重い鎧を

一人で背負って生きてきたのね。

生きていてくれて、ありがとう。


俺は嘘は言わぬ!あの時…ウンスと

結ばれた時、初めて女人を抱いた。


知ってるわ。でも、その布を見る度に

胸がチクチク痛んだの。


すまない!ちゃんと話さなくて。

一番大きな憂いを

与えてしまったんだな。

その憂いを無くしてくれないか?

妊婦に気鬱を与えてはならないと

言われていたのに、最大の気鬱を

与えてしまった。幸せすぎて、

忘れていたなどとは言い訳だな?

どうしたら許してくれる?

いいわよ。おあいこだもの。


おあいこ?ウンス?


私も天界で、お付き合いした人が

二人いたわ!一人は医学部に

いる頃から憧れてた先輩で彼女に

なれた時は浮かれたわ。

だけど、いいように使われたわ。

論文も書かされて、自分の物にされた。

それでも、優しくされると許したわ。

もう一人は、完全に身体目当てだった

のかも?ホテルに誘われて、

断ったら、それっきりだったけど、

別に悲しくなかったの。前の先輩に

二股かけられた腹いせで

付き合った人だったから。


ヨンは血が出る程、拳を握りしめてた。

ヨン!大変!

ウンスが手当をしていると、


俺はウンスに気鬱を与えて置きながら

ウンスの話に耐えられない程の

嫉妬をした。ウンスはこんな思いを

ずっと胸に隠していたのか?


でも、私が初めてだったって、

あなたがよくわかっているでしょ?


あなたがメヒさんと口づけたのなら、

私も他の男と口づけたことは

ここで全て無かった事にしましょう?


ダメだ…と激しくウンスに口づけた。

長い口づけにウンスが、

ヨン…これ以上はもう…


あっ!そうであった!危うく抱いて

しまうところだった!と焦る。

それが可笑しくて、クスクス笑った。


ヨンって、以外と焼き持ちやきなのね?


以外とではないぞ?

相当な焼き持ちやきだ!


お互いに思いを吐き出して

ヨンはウンスを抱きしめて眠った。


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