寒い季節も去り、四月になると、

ウンスのお腹はみるみる大きくなり、

産み月くらいはあるのではないか?

と子供達が育っていた。

サヤのお腹も目立ってきた。

地下室も出来上がり、其処は

思った以上の生活空間になっていた。


ウンスはやはり食欲が落ち血虚も

あった。

しかし、漁村だ!先輩オンマ達が、

アサリや他の貝で汁物を作ったり、

煮出したもの、赤魚を焼いて

持って来てくれた。


これは、血虚によく効くから

ちゃんと、食べて飲むんだよ。と

置いていく。有り難い話だ。


ウンスは子供達の為にちゃんと

食べた。毎日届けてくれたから、

血虚は治っていった。


流石に浜のオンマには敵わないわ。

こんなに効くなんて、

知らなかった。


ウンスでも知らない事があるのか?


だって、現代では何でも薬頼みだもの。

薬湯より効くのよ?

っていうか、ここの生活は身体に

良いものばかりでしょ?  

青魚は身体の中の血を綺麗にするし、
 
海藻も貝類もホントに身体には

良いのよ?だからヨンだって、

元気だし、筋肉も凄くついたし、

顔をいいし、優しいし。


おいおい、それは違うだろう?


だって、テジャンの時より、

随分変わったわよ?


ああ、それはあるかもな。

潮風が気持ちいいし、大海原で

漁をするんだぞ?心も洗われるさ。

そして、愛しい女房が待ってると

思うと、楽しくて仕方ないぞ?

あっ!明日は凄腕の婆さんの検診と

やらか?俺も行くからな。


翌日の検診にもれなくヨンが

ついてきた。


おお!大きくなったのぉ。

どれどれ中を見るぞ?


はあ?そんなとこみるのか?

俺しか知らないのに?


クックッと笑う婆さん。



嘘じゃ!まだみないぞ。


婆さん!!


いつも難しい顔をしてるから、

からかってみたくなってのぉ。

じゃが、今度は見るぞ?

双子は早産の可能性が高い!

子宮口…赤子が出てくる所じゃ。

そこを見なければわからぬからな!

赤子達は元気じゃ。

して、キレ者の亭主。

少しゆるりと愛でろ!

赤子がビックリして出てくるぞ?



そうか。凄腕の婆さん!気をつける。

ゆっくりならいいのだな?


そうだ!気を貰っておるだろ?

たいした子供達だ!

その気は女房からも貰っておるだろ?

まあ、楽しみに待て。


ウンスはお婆さんとヨンのやり取りを

聞いて、堪えきれず笑う。


はぁーっ!面白い!

凄腕の婆さんとキレ者の亭主って…

会話を聞いてるだけで笑える〜!


ウンスや。真面目に話してるんだぞ?


だからよ!どんと構えてなさいよ?

生まれる時は生まれるのよ?

その時は、陣痛で酷い事を言うかも

しれないわ。


陣痛とはそんなに痛いのか?


キレ者の亭主!

陣痛は男には堪えられぬ程じゃ!

男が体験すると死ぬとまで

言われておる。


そ、そんなに痛いのか?

ウンスがかわいそうではないか?


ヨン?それがお産よ?

命を産むのよ?私頑張るから!


凄腕の婆さん?

宜しく頼む。


ヨンはお腹を撫でて、

母上をあまり痛くするな!と言う。


淡い光で温かくなる。


ほお、父親の言葉がわかってるようだ。

心配するな!

嫁の方が肝が座っておるがな。


ウンスはもしもの場合の手段を

ヨンに教え込んだ。

起こりうるあらゆる事を話して、

ヨンに託した。


ウンスは何故?お産に詳しいのか?

聞いた。


医者になる研修期間中は、

色々な部門に行かされて学ぶのよ。

産科にいた時に何度かこの手法を

手伝ったし、他の事にも係わったの。

だから、助かると信じてるのよ。


その事は、凄腕の婆さんにも

話してあった。


心配するな?腹を切らずとも、

この子達は産まれてくる。

親思いの良い子じゃ。


何故か?お婆さんに言われると

安心した。


帰り道

あのお婆さんも内攻を持ってるのね?


ああ、そのようだ。

子供達の様子がわかるようだ。


何?透視能力?凄いわ!


透視能力とは?


例えばね、此処に厚い壁があって

その向こうに誰か居るとすると、

その人の姿形がわかる能力の事よ。


なるほどなぁ。あの凄腕の婆さんは

お腹の子と話せるようだ。

安心させる為に言ってるのではなく、

本当に話してるようだ。


いいなぁ〜。私も話してみたいな。



話しかけてみれば良い。

温かく感じるであろう?


うん!不思議に思ってたけど、

ヨンの子だから、内攻があっても

おかしくない!と感じてるわ。


そんな凛とした顔で言うウンスを

綺麗だと思った。

絶対に幸せにすると改めて思った。


家に帰ると村長が来ていた。


ヨンさん!ここの税収やら、無くして

くれて、村を守る為に存在まで

消してくれて、なんとお礼をして

いいのかわからず、これを。


紙を受け取ると、そこには、

崔瑩の名前と妻 柳恩修と書かれていた。


話を聞いて二人にここだけの族譜を

作ってみたんだ。この村では永遠に

残る二人が夫婦だという証明だ!

その写しを持ってきたよ。

本物は二人が此処に居て我々を

守ってくれた証拠だと大事に保管して

おくよ。


その族譜をウンスが手にすると、

声を出して泣いた。


ウンス!ウンス!俺達は夫婦だ!

例え帰っても、夫婦だ!そんなに 

心を痛めていたなんて、許してくれ

ないか?順序が逆になっただけだ。


ううん、いいの…これだけで

凄く幸せよ。この村で私達は

夫婦だった…それだけで生きて行ける…


何を言ってるんだい?奥さん?

二人は俺達には最初から夫婦だよ。

村の連中を見てごらん?

二人が仲睦まじいから、自然と

みんなが妻や夫を大切に思うように

なったんだよ?この私もそうだけど。


村長さん?私達も同じですよ?

最初は喧嘩したり無視されたり

だったんですよ。それがいつの間にか

居ないと生きていけない存在に

なって、この村に来てから、

夫婦になっていったのですよ。
 
だから、ヨンはまだまだこの村を

守ろうとするはずです。


これ以上何を守るのでしょうか?


村長?ここの山は楓の木がたくさん

育ってます。村の入口から周りを

山から根ごと持って来て、植えたい

のです。漁師も手を貸しますが、

力のある男達を借りたい!

この村を木で覆って完全に隠すのです。

地下室があるからと油断しては、

いつ蒙古が来るかわかりません。

どうか協力を。


おお!そういう事か!

ヨンさん?みんなが漁に出てる間は、

こちらでやっておくから、

心配しないでくれないかい?

ヨンさんはこれから奥さんの

出産も控ているでしょう?

明日から取り掛かりますよ。


これで雄武村は更に安全に

なると思った。



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