おーい!ウンス!今日も大漁だぞー!

真っ黒に日焼けした逞しい夫が

漁から帰ってくる!


おかえりなさーい!ヨン!

ここの生活は、みんなで協力しあって、

公平に保たれてる。

それぞれが釣った魚を集め、

家で食べる分を分けると、

あとは市場に売りに出し、そのお金は

みんなで分けるという、

ウンスに言わせると理想的な社会だ!

ヨンも船を買った。

漁は週に一回は大きな船でみんなが

一緒に漁に出る。


漁に出ている間、ウンスは薬草の

知識を身につけていった。

一人で山に入るのは危険だと、

必ずヨンがついてきてくれた。

家が大きかったので、一部屋を

薬房のようにして、ウンスは、

村人に薬湯を煎じたりしていた。


ヨンさんところの奥さんは、

薬草に詳しいんだな?


ああ、昔、薬房にいたから。


あんなに綺麗な奥さんなら

離せないだろう?


ああ!俺の宝だ!


実際、毎晩ウンスを抱いて離さなかった。


雄武村に来てひと月になろうとしていた。


魚はヨンが捌いてくれた。何故かと

言うと、ある日ウンスが厨房に

居るとき、ぶつぶつと何か言っていた。


それでは今から鯛の解体手術を

行います。


ウンス?と呼んで振り向いたら、

口を覆い、手術用のメスを持っていた。

ぷっ!ハハハ大笑いするヨン!


そんなに大袈裟に捌くのか?


しゅ、手術の練習よ!


どら?かしてみろ!


鮮やかな手付きで捌いていく。


凄いわ!漁師になりたいとか前に 

言ってたのは本当だったのね。


この村に来てから、ヨンは

武人の頃と違ってよく笑うようになった。

ウンスはその笑顔が大好きで

毎日毎日好きが増殖していた。


みんなで漁に出る日、波が少し高かった。

 
気をつけてね?


俺を誰だと思ってる?


う~ん、私に夢中なテジャン!


間違いなく!抱き上げて口づけると

じゃあ、行ってくる!と漁に出た。

しかし、沖に出ると海練が酷く、

引き上げようとした時、一人が

海に投げ出された。

綱を投げて、みんなで引き上げようと

した時、投げ出された時、一緒に落ちた

魚をつくモリが、脇腹に刺さった!

何とか引き上げると、

モリを抜こうとしているカンに


抜くな!そのままだ!とヨンが

大声で言う。

陸(おか)につくと、板に乗せた。

うちへ連れて行く!

まだ日が高いのに外が騒がしい。

ウンス!ウンス!怪我人だ!とヨンの

声がする。慌てて出ると、

脇腹に見事に刺さったモリを見て


此処に寝かせて!

モリを抜かなかったのは正解よ!

これは腎臓と肝臓までいってるかも?

助けられるか?

補佐してくれる?それと…

あのバッグを持ってきて!


ヨンがバッグを持ってくると、

みんなに頭を下げた。


頼む!ここで見た事は秘密にしてくれ!


そんなのわかってる!みんなが言う。


みんな口をタオルで覆って!

ウンスは麻沸散で麻酔をかけた。

メスで脇腹を大きく切開した。

モリを抜くわ!臓器に傷をつけないよう

ゆっくりよ。


ちからのあるヨンがモリをゆっくりと

抜いた。出血しだした。


出血点を探すわ!ヨン?フックで

大きく開いて!ウンスが手探りで

探す。ここだわ!クランプを取って!

クランプを渡すと血管を止める。

腎臓は大丈夫だけど肝臓が損傷

してるわ。誰か?針を焼いて小さい針よ!

カンは言われた通り針を焼いた。

これで。小さな血管を焼くわ!


その様を見ていた者全てが
驚愕していた。何という医術。
モリを受けたミョンジュの妻が
駆け付けた。


何をしているの?殺す気?


黙ってて!命を助けるために

こっちは必死なのよ!


ウンスの迫力に後ずさる。


オッケー!ヨン?肝臓の傷を縫うわ。


流れるような手付きで縫っていく。

実際ヨンもこれ程の手術をみたのは

初めてだった。ウンスは優れた

医者だったに違いない!と思った。

そして医者なのに何もできないのか?と

言った自分を恥じた。


はい!カット!糸を切る。

あとは、切開した部分を縫うわ。

手術を始めてからのウンスは

物凄い集中力だ!流れる汗をヨンが拭く。

慎重にかつ正確に綺麗に縫っていく。

最後に、カットと言うと糸を切った。


ありがとうヨン!お疲れ様でした。

ミョンジュさんの奥さんね。

目が冷めたら大丈夫よ。


本当に助かるの?


ああ!ヨンが自分の傷を見せた。


ここを剣が貫いた。

その時も、ウンスに助けられた。


あっ!ウンスはバッグの中から
抗生剤を出して打った!

家で経過を見る事にした。
夜になってミョンジュが目を覚ました。

痛み止めの、アスピリンがあったので

それを飲ませた。


ごめんね…ヨン

ん?どうして?

医術は封印するはずだったのに、

もう此処に居られなくなるでしょ?


ウンスとなら何処でも生きて

行けるさ。しかし、あの集中力は

ハンパないな?

クスッ ヨンったらすっかり私の言葉が

うつってる。


ウンスができるかぎり少ない荷物を

出して荷造りしだした時、

村人達がやってきた。


訳ありだって知ってるよ。

誰にも言わないし、今まで通りだ!

だから、出ていくな!

ヨンさんの身体は傷だらけだ!

武人だったのだろ?奥さんが医員だった 

のはたまげたけど、仲間の命を

救ってくれた恩人だ!そして

この雄武村の住民だよ!


ありがとうみんなとウンスが頭を

下げた瞬間、ウンスがふらついた。

ウンス!ウンス!しっかりしろ!

あれだけの手術をしたのだ。

疲れて当たり前だ。

ヨンはウンスを寝かせた。


奥さん大丈夫か?


ああ、あれだけ集中力を使ったんだ。

疲れて当たり前だ。


ミョンジュの妻が

助けてもらったのに、酷い事を

言ったわ。ごめんなさい。


ウンスはあれぐらいでへこたれる女じゃ

ありませんよ?俺でも敵わない。


朝方目覚めたウンス。

ヨンが隣で心配そうに見ていた。


疲れて倒れたみたいだぞ?

大事ないか?あれだけの手術を

したんだ、もう少し休んで。


大丈夫よ?患者さんは?

二人で様子を見に行くと、

ミョンジュの妻が看病していた。


あの…ウンスさん?ごめんなさい。

助けてくれてありがとう。

それと、倒れる程神経を使ったみたいで

大丈夫ですか?


ウフフぐっすり寝たから大丈夫よ。

久々の大手術だったから緊張したみたい。


朝、村人が来て 

ヨンさん?今日は漁に出なくていいよ。

奥さんについててあげな。

その分、みんなで釣ってくるよ。



雄武村のみんなは優しかった。


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