健治の部屋にて

お母さん
「健治、そろそろ起きて!ちょっとお願いがあるんだけど。」

土曜日の午前9時を回った頃

 深い深い眠りについている健治のもとに、忙しない雰囲気でお母さんが起こしにやってきた。



健治

「ムニャムニャ…なんだよ。休みの日くらいゆっくり寝かせてくれよ。」



お母さん
「休日のお父さんみたいな発言しないでよ。寝てるとこ悪いんだけどちょっとお願いがあるんだけどいい?」

健治
「ん〜、何?一生のお願いってことか…?」

お母さん
「い、いや…一生のお願いとは一言も言ってないんだけど。 …そうじゃなくて、ちょっとお留守番をお願いしたくて。」

健治
「え?なんで?お父さんも春菜も家にいるっしょ?」

お母さん
「…寝てたから知らないと思うけど、お父さんは朝から釣りに行ったからお昼過ぎまで帰ってこないよ。で、これからお母さん、春菜の付き添いしなきゃいけないのよ。」

健治
「付き添い?」

お母さん
「春菜が友だちとカラオケ行くんだけど、子どもだけで行っちゃだめだから一緒に行くことになってる。」

健治
「しょうがないなあ、わかったよ。それがお母さんの一生のお願いってことだね?」

お母さん
「…これじゃあ、一生のお願いを使い続けなきゃいけなくなるね…(呆)」

 このあとも、お母さんと健治の掛け合いは続いたが、どうにか健治に留守番を頼むことができたようだ。
 お騒がせボーイにお願いごとをするには長期戦を覚悟しないといけないみたいである……。

春菜
「わーい、友だちとカラオケ楽しみだなぁ〜!」

お母さん
「それじゃ健治、留守番お願いね!もし、友だちの家に遊びに行くことになったら、テーブルの上にメモ残していって。」

健治
「わかったよ。お土産よろしくね!」

春菜
「お兄ちゃん、カラオケは旅行じゃないよ?」

お母さん・春菜
「行ってきまーす!」

 こうしてお母さんと春菜は外出し、家の中は健治が独りとなった。さっきまでのにぎやかさはどこへやら…さぞ静寂な空気に……

健治
「よし、自由だ自由だ!ひとりで何しようかな??逆立ちでゲーム?帽子の手入れ?あ〜迷っちゃうな!」

ドタバタ!ドタバタ!

…包まれていなかった。
 我らがお騒がせボーイ、1人で10人分の騒がしさを発揮。この騒がしさには電柱にいたカラスも血相を変えて逃げ出すレベルかもしれない。
 …結局、体を動かしただけでやりたいことが手につかない健治。しかし、台所に目をやったとき何かを思い出したようだ。

健治
「…そういや、昼飯どうすればいいんだっけ?この前みたいにチャーハン用意したとか聞かないもんな〜。」

※チャーハンの一件は、第4話を読んでみてね!

 どうやら、お母さんからお昼ごはんのことを何も聞いてなかったようである…。すると、それを狙ったかのようにけんじのお腹がぐうぅと大きな音を立てた。

健治
「うお?こんなにお腹が鳴るなんて。ってそりゃあ朝飯も食べてないもんな。 全くご飯くらい用意してくれればいいのに。お母さんめ。」

 なんだかだんだんとお母さんへ対する不満の方が強くなっているようだが、実は、冷蔵庫の中におにぎりが3つ、戸棚の中にはカップ麺が用意されていた。しかし、この日の健治はとあることを思いつき、完全にスルーしてしまうのであった。
 その思いついたこととは……

健治
「せっかくだから1人で、飯の準備でもしようかな。家庭科でも調理実習したし。さすがにちょっとくらいなら家を調理する心配はないだろ…。」

 なんと、健治が料理を作ってみようとしているではないか。主人公として、みんなに良いところを見せてやってくれ。


健治
「あ、パスタあるじゃん。これにしよ。」

 
 健治は、戸棚からパスタを取り出し、茹でるために鍋に水を入れ火をつけた。これは順調に進みそうだ。

健治
「……ところで、パスタのパッケージに書いてある8分ってなんだ?もしかして、8分で作れってことか?」

 違う違う。その8分は茹で時間のことだ。
 しかし、健治はパッケージの細かいところを見ず、その「8分」というキーワードで作り始めてしまった。  

健治
「よ〜し、8分で作るには…。沸騰するまでなんて待ってらんないし、もうパスタ突っ込んじゃおっと。」

ドバーン
 健治は、適当な量の麺を鍋の中に入れた。この量は、大人3人分相当ある。そんなこともつゆ知らずに健治は己の直感と記憶で作り始めるのであった。


ー10分後

健治
「よ〜し、できたぞ。健治特製スペシャルパスタ!」

 健治の手には、平皿に盛られた硬くて味付けが一切されてない大盛のパスタがあった。…果たしてどんな手順でこうなったのかは読者の皆さんの想像にお任せしよう。

健治
「初めてにしては上出来でしょ!」

 上出来ではない。これは悪魔の料理だ。

健治
「…でも、なんか足りないな。あ、味付けしてないんだった。どーしよ、パスタソースないし、適当に塩とドレッシングをかけておこう。…あれ?かけたらなんか色がおかしくなったぞ。なんかこれ食べたくないなあ。」

 突然食べる気がなくなった健治。しかし、せっかく作ったので捨てるのら以ての外だ。

健治
「そうだ、もうすぐお父さん帰ってくるし、これはお父さんのお昼ごはんということで。解決!」

 1人で納得していると、タイミングよくピンポーンとインターホンが鳴った。健治は、足早に玄関に向かい扉を開けた。

健治
「はーい、て、優美子じゃん。どうしたの?」
優美子
「こんにちは!健治の家に回覧板届けに来たの。…ってあれ?ひょっとして留守番中?」
健治「ありがとう。そうだよ。お母さんから一生のお願いとして頼まれたからさ。あ、でもお父さんがそろそろ帰ってくるはず。」
優美子
「そうだったのね。(一生のお願いってなんなのかしら…。)」
健治
「それで留守番中にさ!…」

 そんなこんなで二人が他愛もない話を続けていると、健治のお腹の虫が鳴った。

優美子
「あれ?健治、ひょっとしてお腹空いてる?」
健治
「そうなんだよ。お昼ご飯作り盛大に失敗しちゃったんだよ。あと一歩で天才的なご飯ができそうだったのに。」
優美子
「え?天才的なご飯どんな感じだったのか気になるな…。ってそうじゃなくて!お昼まだなら私の家で一緒に食べない?」
健治
「いいのか?あ…でも僕がしたいのは料理をすることなんだよなあ。」
優美子
「…だったら、私と一緒に料理する?私も帰ったら留守番なの。」
健治
「よっしゃ、今度こそ天才的な料理を作るぞ!」

 優美子の提案に対して、健治は非常に嬉しそうだ。しかし、健治は、何かを思い出したかのように、リビングに走っていった。どうした?お騒がせボーイ。

優美子
「ど、どうしたの…?健治」
健治
「出かけるならメモ用紙に書いておきやがれこの野郎って言われてたんだんたった。」

 そこまでひどくは言われてないはずだが…。
 健治は、リビングに積まれている紙の切れ端を1枚取り出し、要件を書き始めた。
ーーー
これからお出かけしてきます。
ーーー

健治
「ちょっと情報量少ないけど平気っしょ。あと、この食欲をそそらないパスタどうしようか…。そうだ、お父さんの分ってことにしちゃおう!」
ーー
これから出かけてきます。

お昼ご飯にパスタを用意しました。残さず食べてね
ーーー
健治
「よし、テーブルの上にメモ置いて、その上にパスタを置けば……これでOKだ。」

 う〜ん、いろいろな意味でOKではないのだが…。読者の皆さんは、何が足りないのかもうお気づきだよね?

健治
「お待たせ!それじやあ、優美子の家へレッツゴー!」
優美子
「うん!」ニコッ

 こうして、二人は優美子の家へ。何だか優美子もニコニコと嬉しそうな表情をしていた。二人は、どんな料理をするのだろうか。


☆続く☆