さてさて、再生ボタンを押してっと……

リポーター
『今日は、ミルクちゃんの歌とダンスの練習風景を見せてくれるんですよね?』
ミルク
『はい!少しでもみなさんに、私のことを知ってもらえたら嬉しいなと思って。』

 ミルクちゃん、はきはき受け答えできててすげーなぁ〜。

ピンポーン!

ま、また誰かきた…だと?
嫌だなぁ、これも居留守にしようかな。

ピンポーン!

またしつこいな…。そういや、さっきから誰がインターホン鳴らしてるんだろ?
……って紗佳たちじゃん!

ガチャ
太郎
「紗佳たち、俺に何の用だよ?」
紗佳
「も〜、何の用だよ?じゃないでしょ!なんで無視しようとしたの!?」
莉花(りか)
「そうよそうよ!」
太郎
「い、いやそういうつもりじゃ…」
優美子
「まあまあ…、二人とも。あのね、私たち3人でクッキー作ったの!もしよかったら食べて。」
太郎
「そうだったのか!ありがとう。」
紗佳
「いえいえ〜。明日感想聞かせてね!……ところで、太郎くん今日一人なの?」
太郎
「あぁ、今日は留守番頼まれてんだよ。」
優美子
「そうだったんの。一人で留守番ってちょっと寂しい気持ちになるわよね。」
莉花
「そうそう、普段家族や友だちと過ごしているから、別の世界にいる感覚になるというかね。」
太郎
「別の世界にいる、なるほどな。俺は今まさにそんな感覚だよ。まあ、良い意味で。」
紗佳
「へぇ、どんな楽しいことしてるの?なんか今日の太郎くん、、ちょっとふわふわしてるよね。」

ギクッ。やべっ、口を滑らせちまった。

優美子
「大丈夫?なんか突然顔色が悪くなったような…」

やべ、また変な方向で話が進まれても困る…。また話を逸らさなくては…

太郎
「そ、そういや、俺以外のヤツにも渡してるのか?」
優美子
「うん、さっき公園で会った翔太たちにも渡したわよ。」
紗佳
「で、このあとは菜津美ちゃんのところに渡しに行くつもり。」
優美子
「健治のところにも渡しに行ったんだけど、誰もいなかったんだよね…。」
太郎
「ああ、健治ならついさっき俺の家に来てたぞ!」
紗佳
「そうだったんだ!健治くんすぐ帰っちゃったの?なんか用事あるとか言ってた?」

あ、やべっ。健治を無理やり追い返したなんて言いにくい…。

太郎
「え、え〜と、なんか言ってたかなあ〜?アハハ☆」
莉花
「なんか今日の太郎、挙動不審。」
紗佳
「確かに。まあ、いいや。菜津美ちゃんのとこ向かってる間にばったり会えるかもしれないし!」
優美子
「さやちゃんの言うとおりね!それじゃあ、お邪魔しました。」
紗佳・莉花
「また学校でね!」
太郎
「おう!ありがとうな。」


 やれやれ、今日はやたらと人が来るな〜…。やっと、落ち着いてミルッコちゃんを見れるよ。

ミルク
『これが、普段私がお守りにしてる花の形のキーホルダーです!』

おー!これはかわいい!!俺も買っちゃおうかな!?

ミルク
『これは、私の好きないちごのドーナツです!ついつい食べ過ぎちゃうんです(笑)』

 うおおお!ミルッコちゃんの好物が聞けて嬉しいぜ!さっそくドーナツ買いに行こうかなぁ〜?
 あ、そうだ。このあと歌も披露するみたいだから応援グッズの準備でもしようっと。

ーー30分後

はあ、興奮し過ぎで疲れちまったぜ。もう15時過ぎか。ちょっと休憩してから残りを見るとするかな。

ピンポーン!

ん?また誰か来たぞ?
お母さんたちは17時過ぎに帰るって言ってたけどなぁ
…って菜津美じゃん。なんの用だろ?

ガチャ
太郎
「おーっす、菜津美。よく俺の家がわかったな。」
菜津美
「やっほー!ここが太郎ん家なんやね!さっき、クッキー届けに来てくれた紗佳に道案内してもらったんやでー。」
太郎
『そうだったのか。そんで突然どうしたんよ?」
菜津美
「昨日の宿題返却で先生ったらうちのと太郎の宿題渡し間違えしちゃったみたいで、届けに来たんやで。届けるの遅くなっちゃってかんにん…。」
太郎
「あ、そういうことか。ありがとな。菜津美の持ってくるからちょっと待っててくれ。」
ーー
菜津美
「突然来ちゃってごめんね。ホンマにありがとう。」
太郎
「気にしなくて大丈夫。こっちこそありがとうな。」
菜津美
「それじゃぁ、また明日……って、なんか騒がしない?」
太郎
「た、確かに。」

近所のおばさんA
「ちょっと、ちょっと。聞いた?何やらあそこの家で事件が起きたらしいわよ?さっきおまわりさんが向かってるの、私見ちゃったのよ!」
近所のおばさんB
「あらあら、物騒ね〜。何やら、帽子をかぶった男の子があそこの家から交番まで走っていったって…」
太郎
「なっ…………」
菜津美
「え、た、太郎。誰にも言えない犯罪まがいの隠し事でもしてはったん!??」
太郎
「待て待て、そんなマジになるなよ!」
おまわりさん
「君たち、大丈夫か?犯罪がどーのこーのと聞こえたが…」
太郎
「えぇ!マジで交番のおまわりさん来ちゃったよ、どーすんだこれ…」
おまわりさん
「先ほど、少年が血相変えてこの家から走る去るのを不審に思った近所の人から、相談があってね、様子を見に来たんだ。」

…ん?帽子をかぶった男の子?走る去る少年?それって健治じゃね?
アイツ、俺がいつもと違う態度をとったもんだから動揺して、全力疾走したってことか。

おまわりさん
「君、本当に大丈夫なのかい?お父さんとお母さんはお家にいるの?」
太郎
「こ、これは違うんですよ。実は、ついさっき友だちとかくかくしかじか……」

30分後

おまわりさん
「いやぁ、本当に何事もなかったようで良かったよ!ちょっと友だちに怒っちゃっただけだったんだね。でも、周りの人が誤解しないように気をつけるんだよ?」

太郎
「えぇ、まあ………これから気をつけます()」(こんなバカやらかしたやりとりを、おまわりさんに事細かに話さなくちゃなんて恥ずかしすぎる…)
おまわりさん
「友だちとは仲良くやるんだよ!」
太郎
「は〜い。」

太郎の家にて…

うぅ、ちくしょ〜…。今日は、散々な一日だったぜ。
 でも!まだ続きを見れる時間はある!誰も来ないだろうからお母さんたちが帰ってくるまでに一気に見るぞ……

ピンポーン

 え?また誰かが来たのか?嫌な予感しかしないんだけど…
ん?また優美子?何の用だろう?

ガチャ

優美子
「何度もごめんね…。ちょっと心配だったから見に来たの…。」

 もしかして、俺が一人で留守番してたからか?優美子って優しいんだな…

優美子
「健治についてきてって頼まれたから。」
健治
「やあ、太郎、やっと会えたね。」
太郎
「Oh ………」チーン

優美子
「え?大丈夫?」
健治
「お邪魔しまーす!」
太郎
「あ……!」

 しまった。ちょっと動揺しているスキを突かれた…。まあでも、部屋にはハイテンションでミルッコちゃんを応援してたって証拠はないし平気……じゃねーや!テレビ画面はミルッコちゃんが話しているシーンで止まってるし、応援メッセージを書いた応援グッズも置いちゃったし…(泣)お、オワタ……

健治
「いやぁ、太郎の家は落ち着きますな〜、ってあのテレビに映ってるのはなんだ?」
優美子
「どうしたの?」
健治
「これは、ミルクちゃんが出演してた特番じゃん!しかも応援グッズまである。」

 あぁ……(泣)一番バレちゃいけないやつにバレちまった…。こうなったらヤケだ!

健治
「太郎……。」
太郎
「な、なんだよ!?俺はミルッコちゃんの大ファンなんだ!!CDやグッズも集めるほどなんだぞ、文句あっか!?」
健治
「…………」
太郎
「普段の俺とは全く違うぶっ壊れテンションで応援してんだぞ!?どうだ!?これでお前に隠し事はない!みんなにバラすがいい!」
健治
「……いやぁ、太郎の好きなことが知れてよかったよ!」
太郎
「……へ?」
健治
「だって太郎、普段僕に対するきっついツッコミばかりで、自分のことあまり話してくれなかったじゃないか。」
太郎
「お、おう……。」
 
 …これはこれで予想の斜め上の展開だぞ…。健治のことだから、みんなに言いふらしに走り回ると思ってたんだが。

太郎
「……お前は、俺が好きなことで興奮してると知ってドン引きしないのか?」
健治
「え?しないよ?僕が帽子に対して人生を捧げてるのと一緒だろ?」
太郎
「ま、まあそうだな。」(お前のソレとベクトルが違う気もするが……。)
健治
「それによっぽど恥ずかしいことでなければ、趣味や好きなことは全面的にアピールしてもいいと思うよ。それが普段の自分とギャップがあろうとも、ね。」
太郎
「け、健治…。」
優美子
「健治の言う通りだと思う。私も、料理が好きなことは友だちに知ってもらいたいし、お話もたくさんしたいし。」
太郎
「そうだよな…。お前らの言うとおりかもしれない。」
健治
「そうだよ! ただの僕専用のツッコミマシンで定着しちゃうのは嫌だろ?」
太郎
「それは絶対嫌だ!!」
優美子
「フフ……。なんだか結局いつもの二人の会話になっちゃったわね。」
健治
「じゃあ、太郎〜。その特番の続き見ようよ。ミルクちゃんのこと僕も知りたいし。」
太郎
「え!?いいのか?」
健治
「うん。僕は人の趣味を探るのも好きなんでね。」
太郎
「なんかちょっと、表現が悪いような…。」
優美子
「せっかくだから、3人で見よっ!」
ーー
ミルク
『皆さん、今日は一日ありがとうございました!』

優美子
「ミルッコちゃんって、歌も踊りも上手なんだね!」
健治
「ミルッコちゃんって、本当にがいいんだね!特に笑顔のときとか!」
太郎
「おおっ!わかってくれるか健治?俺もミルッコちゃんの笑顔好きなんだよ!」

リポーター
『それでは、ミルクちゃん。テレビの前の皆さんに最後に一言お願いしてもいいですか?』
ミルク
『あ、はい!今日は楽しんでもらえましたか?少しでも私のこと知ってもらえたら嬉しいです。これからも一生懸命……えっと…が、頑張るつもりなのでよろしくお願いします。それじゃあ〜、ミルバイバイ〜☆』

太郎
「ミルバイバイ〜!今度は生で会いたいよぉ!!」
健治(あれ…?最後の表情にちょっと違和感が…。なんでミルッコちゃんの顔にちょっと青いオーラがあったんだろ…?)
優美子
「…?健治、どうしたの??」
健治
「なんでもないよ?ただ、余韻に浸ってただけ。太郎の興奮してる姿に。」
太郎
「いや、そっちかよ!(笑)」

健治
「ってもう17時回ってたのか。僕は帽子チェックがあるから帰るわ。」
優美子
「私も帰るね。一緒にテレビ見れて楽しかったよ!」
太郎
「俺もだ。二人ともまた学校でな!」
健治
「また学校で。今度は僕のオチのない話も聞いてもらおっと。」
太郎
「お前も相変わらずだな(笑)」

ーーその夜
 いやぁ、なんか今日は一日色々ありすぎて疲れたぜ。でも、なんか健治に言われた言葉でなんか気持ち的に、楽になった気がする。
 …俺は、普段と違う姿を健治たちに見せることに対して、すごく怖がっていたのかもしれない。だから、俺自身の話題を出すことを避けていたんだろうな。でも、今日の出来事で、ちょっとずつ話していくのもありかもしれないと思えるようになった。
…とにかく
 もう一回、ミルッコちゃんの番組を見ますか!

ミルク
『みなさん、こんにちは!』

太郎
「うおおお!」
次郎
「おーい、そろそろ夕飯……」
太郎
「かわいいな〜」ニヤニヤ
次郎
「た、太郎…?」
太郎
「お?次郎どうした?」
次郎
「お母さーん!太郎が変なもん見てニヤニヤしててやばいよー!」
太郎
「いや、待て待て!俺はミルッコちゃんの番組見てただけだぞ!?おい、次郎ってば!」

ーー翌朝、教室にて

太郎
「なあなあ、健治。ミルッコちゃんのことなんだけどさ、」
健治
「ん〜?それでそれでどうなったの?」
紗佳
「ねえねえ!太郎くんがあんな積極的に健治くんに話しかけるの珍しくない??」
翔太
「それは思った。そして、太郎がアイドルのことであんなイキイキして話してることにも驚いたぞ。」
菜津美
「珍しいこともあるもんやね。でも、二人の話うちも聞きたいわぁ。」
拓哉
「健治と太郎、何食べてこんなに話すようになったのかも聞いてみようかな〜。」
優美子
「朝からみんなで楽しい話ができそうだね♪」

☆第5話終わり/第6話に続く☆