デイヴィッド・イーグルマンのこの間の本「あなたの知らない脳 意識は傍観者である(Incognito)」が面白かったので、別の本も読んでみました。

 

邦題「あなたの脳の話(The Brain)」

脳と意識と自己の関係の不思議さは、こちらの本の方が順序だっていて面白いです。

 

この本で面白いと思ったとこ。あ、英語版からのユーキ訳なので、用語は正確じゃないかもです。

 

 

・「脳神経が発達して“あなた”を作るのではなく、脳神経が取り除かれて残ったものが“あなた”になる」

多くの動物は生まれつきの脳神経の結びつき(シナプス)を遺伝として持っていて、そのため生まれてすぐに立ち上がったり、その他本能的な多くの行動をすることが出来る。回路をハードウェアとして持っているイメージ。

 

人間はこの遺伝子が決定するシナプスが少なくて、環境に応じてプログラムを書き換えながら適応します。生まれて直ぐは様々な環境での可能性を探るために、感覚器官からの入力に応じてシナプスがどんどん作られていきます。2歳がシナプス数のピーク。

 

その後、繰り返し使われるシナプスが強化され、使われないシナプスは弱くなっていきます(日本人なら「L」と「R」の聴き分けのシナプスは細くなる)。

 

人間としての発達の可能性の中から、環境に応じてシナプスが(半分くらい)刈り込まれて私たちになる。なんか面白いでしょ。

 

 

・「あなたは物事を“そのありのまま”に知覚するのではなく“あなたのありのままに”知覚する」

布に色素をたらした物を見て何も感じないとしても、同じ色素が「国旗」を描いていたら何らかの反応を引き起こす。そしてその反応は個人のそれまでの経験によって全く異なっている。

 

何十億ものシナプスが新たに作られたり刈り込まれたりした結果があなたの知覚であって、あなたの知覚や感覚と同じものはいまだかつて存在しなかったし、これからも存在しないだろう。

 

 

・「私たちは色彩を世界の根本的な性質の一部だと思っているが、脳の外側の世界には色彩は実は存在しない」

色彩は光の波長の違いを脳が解釈したもので、波長が色を持つのは脳内だけ。

 

これは中学生の頃から不思議に思っていたことでした。小学校で3原色って習うでしょ。でも波長は長短の一直線上の変化のはず。なんで色の再現に原色が3つ必要なのか。大人になって、「人間の色を識別する感覚器官が3種類だから」って知ったときは嬉しかったな。

 

本に話を戻すと、世界が鮮やかな色彩や香りや音に満ちあふれているように感じても、脳の外の世界は無味乾燥な、波長の違いや浮遊分子の種類や空気の振動の違いが存在するだけなんだってさ~。

 

 

この間、この本についてツイッターに書いたことも簡単に。

 

「苦しむ他者を見る時に反応する神経は、自分が痛みを感じる時に使う神経そのもの。他者への共感が人間には本来備わっている」

「ただし、自分と違う属性の相手には共感のレベルが下がる」

「さらに、環境によっては相手を人間として見る神経が反応しない“非人間化”が起きることがある」

この辺はユダヤ系のイーグルマンはよく知っているのかもしれない。

「非人間化を意図的に起こすには(デマも含む)プロパガンダが有効」

 

ヘイトスピーチのようなものが広がれば、社会全体がある集団を「神経反応として人間と認識しなくなる」って怖いですね。

 

人の脳神経が発達するためには感覚器官からの刺激と反応が必要なように、人の脳が機能するためには他の脳との相互作用も必要だという。その時に、人が他の人とどう向き合うかで神経回路のレベルの構造・反応から異なってくるということですよね。

 

差別の問題を考える時にも、そして教育の事を考える時にも心に置いておきたいことだと思いました。