ツイッターで話した Gold Finger の件について。ちょっと補足しておきます。

 

まずは経緯から。レズビアン・バーとして日本で最も有名な、かつ東京レインボープライドでも大掛かりなフロートを出していた Gold Finger が「シスジェンダー女性に限る」と明記するようになった件です。

 

 

わたしが一番気になっているのは、これで傷付くトランス女性がまた増えてしまうことです。

 

LGBの方も、自身の性指向の在り方が社会に受け入れられていないことでとても悩んでいるし、ヘテロの人が普通に享受できる権利から排除されているのは分かってますけど。

 

でもそれ以前に、トランスジェンダー、なかでもトランス女性は就職できない、トイレさえ普通に使えないetc、カミングアウトしなくても周囲の社会から最初から排除されて抱える困難さは別格だから。(一般論としてトランス男性の方が“パス度”が高くなりやすい面は厳然とあるし、トランス女性は不当に潜在的性加害者として扱われやすいのも事実だよね)

 

ただでさえ一般的に自己評価の低くなりやすい(自己嫌悪の強い、と言った方が良いかもしれない)トランス女性が人生に絶望するきっかけになりかねないと、真剣に心配しています。

 

田舎の小さなビアン・バーがシスジェンダー女性に限って安心して遊べる場を…と言うのとはわけが違うからね。ある意味で日本最大のレズビアン・コミュニティーの核となる組織がトランスジェンダー排除を打ち出したと言う事の持つ意味は。だからビアン自認じゃないトランス女性までも傷つける。

 

 

ただ、Gold Finger を利用している人と、Gold Finger を運営している人の問題とは、個人的には区別して考えたいです。

 

東京の、新宿2丁目と言う地域にあってすら、ビアンの人が安心して遊べる場所は少ないんだよね。2丁目の店なら女性二人でいても他の場所のバーみたいに変な男にちょっかい出されたりする心配は少ないかもしれない。

 

でも、そこの多くは本来はゲイの人の居場所です。だからこそ、ビアンの人が自分らしく安心して遊べる場は大事で貴重だと思う。安心して遊んで欲しいし、楽しんで欲しいと思います。皮肉ではなくて心からそう思う。

 

ただ、その安心と引き換えに、一般社会からだけではなく、クイア・コミュニティー内からも排除されるトランス女性の痛みにも、いつか気付いて欲しいと思う。

 

 

それとは別に、レインボー・フラッグを掲げて営業していて、LGBTのパレードにも積極的に参加していて、「“すべての女性”のため(でもトランスジェンダーを除く)」と謳っている運営・経営サイドには、もう少し誠意ある対応があるべきだと思います。そもそもストーンウォールの反乱だって、必然的に可視化・差別されている有色人種のトランスジェンダーが先頭を切らざるを得なかった。

 

で、その後、ゲイ・プライド・ムーブメントが起きてからは、最後までトランスジェンダーだけは排除され続けてたんですよね...

 

LGBTと言う言葉は、そう言う過去の経緯を飲み込んでの政治的連帯を表すものだし、その象徴がレインボーフラッグなんでしょ。それを掲げて営業するビアン・バーが、「差別的だと分かっているけど、利用者の安心のために止むを止まれずにトランスの方には遠慮してほしい」と言うのなら分かる。

 

でも、昨年から激しさを増すばかりのトランス女性排除の流れの中で、某東大教授まで「トランス女性は女性に対する性的加害を狙う男に過ぎない」って文章を発表している中で、さらっと「シス女性に限る」って公表することは、“トランス女性排除がレズビアン・コミュニティー全体の意向”として引用・利用される可能性が高いことは百も承知のはずなのに。

 

この間の東京レインボー・プライドで「ハッピー・プライド」ってハイタッチしてなかったの? もうすぐ始まる世界的なレインボー月間でトランス女性を排除しながらレインボーフラッグを掲げ続ける?

 

 

トランス女性にとっては、クイア・コミュニティー内ですらこうなんだから、一般社会でトイレすら安心して使わせて“もらえない”のはもう当然の事。絶望しかないよね。

 

個人的な話をちょっとするとね。わたしは身体が大きいので、男性トイレを使っても直接的に性被害を受ける可能性は低いです。そんなわたしですら、トイレ内で嫌な・怖い思いをさせられることはある。

 

すれ違いざまに大きな音を出して床を踏み鳴らすとか。一度されてから注意して距離を取るようにしてるから、蹴られたりは無いけど。でも、そうやって敵意を向けられる経験があるだけでも、お手洗いを使うの躊躇するようになるよね。

 

一番怖いのは、睨みつけてトイレからずっと後を付けてくる人。女性服売り場を回り道したりしても明らかに後を付いて来る。完全に振り切ったと思うまで、階段・エスカレーターや駅のホームには絶対に行かない。

 

日常でそんな思いをしながらも、誰でもトイレがない時は基本的に男性用トイレをわたしは使う。わたしが女性用トイレを使うことでトイレを使うことが不安になる女性がいて欲しくないから。トイレを安心して使えない辛さはわたしが一番よく知っているから。どこまで行っても男にしか見られない自分に涙を流しながらだよ。

 

 

同性婚やセクハラの問題にも出来る範囲で取り組んでいる。だって、差別は無くすべきだと思うし大嫌いだから。

(↑クラウドファンディングの景品でもらったステッカー。蛇足だけど、WeToo、のスローガンに本来とは別の意味を感じるようになっています。「わたしたちだって…」)

 

そんな中で、女性の、しかもクイアのコミュニティーから後ろから突き飛ばされたような気持ち。(分かってたけど、でも今このタイミングで?!)

 

わたしは手術の後の痛みの中で、性の事では絶対に負けないと決心したけれど、それでも傷付きます。そうやって傷付き続けている(わたし以外の)トランス女性がある時、限界を超えてしまう可能性がわたしに不安と怒りの気持ちを抱かせるんです。

 

 

それでも、わたしはその怒りの気持ちをレズビアン・コミュニティーに向けることは絶対にしない。わたし自身の在り方としてそうで痛いし、人の属性全体にマイナスのタグをつけることは差別だと思うから。