伊藤計劃・円城塔著「屍者の帝国」河出書房新社
幾つかの新聞の書評欄で取り上げられ話題の書だとの触れ込みで、書店に大量に平積みされていた。早世した伊藤計劃が残したプロローグだけの遺作を芥川賞作家の円城塔が書きついで完成させたエンターメント長編との惹句も興味を惹かれた。伊藤計劃の著書「虐殺器官」が面白かった記憶もあり、本書を購って帰り期待して読み始めた。しかし、7分の1程読んだところで、残りを読む気がしなくなってしまった。理由は内容にリアリティーが全く感じられないためだった。
小説は全て虚構の世界の物語だが、それを現実の世界のように描き出すのが作家の技である。たとえSFでも、いかにも現実に起こりそうだと読者に感じさせることが必要だと私は考える。
本書は、フランケンシュタインが試みた屍体をロボットのように動かす技術が進歩して19世紀末に広く実用化されるようになった状況を記述している。屍体の脳にプログラムをインストールする事により、単純労働をさせるのが可能になったとの説明である。これに私は強烈な拒絶感を抱いてしまった。屍体を有効利用すると言う考え方について行けないのである。また屍体の腐敗を防ぐ処理法、屍体を動かすエネルギー源などには何の説明もないのにも失望した。