松本薫選手の存在感 | 暇老身辺雑記

松本薫選手の存在感

 スポーツにそれほど関心がある方ではないが、オリンピックの中継をつい毎日見てしまう。これまで映し出された日本選手のなかで、私にとって最も印象的だったのは松本薫選手であった。柔道会場への入り口で出場待ちする彼女を初めて見た時、一瞬ギョッとなった。何かに憑かれたような顔つきで前方を鋭く睨み付けながら小刻みに体を動かしている。まるで獲物を狙う野獣を思わせるものがあった。その彼女は「野獣」、「野生児」などと呼ばれ、外国のメディアからは「アサシン(暗殺者、刺客)」と名付けられていると知り成程と納得した次第だ。

 出場待ちの際に何かを呟いているのが気になった。呪文でも唱えているのかと思ったらTVの解説で『落ち着け、落ち着け』と自分に言い聞かせていたと知った。闘争心が先行し過ぎて、自分の能力を超えた技を出してしまうのを自ら戒めていたのだそうだ。

 平和が長く続き、豊かになって飢える人も殆どいなくなった現在の日本に、彼女のような容貌と闘う雰囲気を持つ人は見掛けなくなった。そのむき出しの闘争心で57kg級での金メダルをつかみ取ったのを讃えたい。