ハノイとその郊外-エピローグ
出発前には、ハノイに7泊もしたら退屈するのではないかと思っていた。しかし実際には密度の濃い日々が続いた。
首都ハノイに滞在して、ベトナムはまさに発展の途上だと強く感じた。郊外で何か所か見掛けた工業団地もまだまだ空き地が一杯であったし、道路も今後さらに整備せねばロジスティックスの面から進出をためらう企業もあるに違いない。港湾設備、流通用倉庫、鉄道網、工業用水、発・給電設備等、他にも整備すべきものはいろいろあろう。しかし、何年かすれば、ベトナムは世界の生産基地として他国を凌ぐ存在になっているような気がする。その理由は、ベトナム人が優れた頭脳、手先の器用さ、粘り強さを備えているからである。もといた会社にベトナムからの研修生が4人来ていると聞いたが、その評判は上々であった。なにしろ、フランスの植民地支配から独立を闘い取り、世界最強と目された米軍を打ち破った国民である。しかも平均年齢は若くて勤労意欲に富む。しかし、意外な問題点もある。ベトナム航空の機内誌の記事にあったが、大きな工業団地が出来ると労働力の確保が難しくなるらしい。と言うのは農業(水稲は南部で3毛作、北部でも2毛作)で十分生計を立てられるので、離農して工場勤務しようとする人が少ないのだそうだ。
一昨年訪れたホーチミン市と同様に、ハノイも市街地の道路事情は良くない。交通信号は非常に少なく、横断歩道は方々にあるが、単車の流れが止まる事はない。横断歩道を渡る際にはエイヤッと決断して車道に足を下ろす。すると単車が流れを変えるので、ゆっくりと一定の速度で小幅に歩を進める。急に立ち止まったり、屈んだり、バックしたりすると危ない。各単車が歩行者の動きを予測して走っているから、不規則な動作には対応出来ないのである。歩道もスムースには歩けない。多くの面積が単車の置き場として使われ、理髪師、靴磨き、宝くじ売りなどが歩道で営業している。また、小さな飲食店の前には日本の銭湯のような椅子が置かれて、食事の場所になっている所も多い。それらを縫うようにして歩かねばならないのである。