西村賢太「苦役列車」(新潮社2011年刊) | 暇老身辺雑記

西村賢太「苦役列車」(新潮社2011年刊)

 私は長い間、私小説と言うジャンルの作品は読んでいなかった。何冊か読んでも、感動も受けず、エンターテイメント性も感じなかったためだ。私小説を発表しようとする背後には、自己顕示欲、露悪趣味、ペダンティシズムなどが渦巻いているような気がして、楽しい気分にはならない。

 それなのに「苦役列車」を読んでみようかと思い付いた。昨年度の芥川賞受賞作であり、著者が中卒のフリーターで前科もあると言う特異性に興味を持ったからだ。

 読んでみるとまさに私小説であり、港湾労働で日銭を稼ぐ日々の実態が事細かに記されている。しかし、読み進めても気分は暗くなるばかりであった。また、著者が「慊い(アキタリナイ)」、「叱呵(シッカ)」、「嵩押し(カサオシ)」、「我儘者(ワガママモノ)」、「黽勉(ビンベン)」などとやたら難しい単語を多用する事も気に入らない。中卒でもこんな漢字を駆使できるのだと言う顕示欲が透けて見えるように思えた。

 総じて言えば、この小説を読んだ事を悔いた。やはり、今後は私小説を読まない事にしよう。