なにか怪しくないかな。これ。

大阪・関西万博の開催そのものとともに、同博での交通渋滞の切り札、あるいは今後の都市間移動のホープとされている「空飛ぶ自動車」ですが。いろんなメーカーがいろんなものを出してきていますけど、それらはどう見ても「クアッドコプター」(ローターが4つあるヘリコプター)あるいは「マルチコプター」(ローターがたくさんあるヘリコプター)ですね。

我々が子供の頃の「未来予想図」に必ず描かれていた、透明なチューブのなかを浮き上がって推進する「エアカー」からみると、自動車にはほど遠い、というか、あれはどう見ても航空機でしょ。あんなものがそこいらへんから、ふいと飛び上がって、万博会場に横付けできるわけがないでしょう。最低でもヘリポートくらいの規模の離発着場がないと。

 



そういう場所が大阪の交通ターミナル至近に設置できるとは思えないし、万博のパビリオン付近についても同様。あれだけの規模の機体が飛ぶのですから、強い「ダウンウォッシュ」下向きの気流が発生しますよ。離着陸時には近くには行けませんよ。

それに、今出ているものって、多くても4人乗りですね。パイロットがいなくて全自動飛行するにしても、4人しか乗ることができない。それが「交通の切り札」というのは無理がありますね。それなら、例えば大阪駅(梅田駅)から、夢洲会場までバス専用レーンを設けるほうがよほど現実的です。

あと、このことにふれている人が誰もいないのも疑問ですが、あれは当然航空管制の対象なのでしょう。そうでなくても、伊丹・関西・神戸の3空港と八尾飛行場のある過密空域に、あんなものが割り込む余地はありますか。

あったとして、航空管制を受けるためには、確か現行の法規ではそれぞれの機体が無線局でなければならないのですよね。でも自動操縦でパイロットが乗っていない、となると、管制もリモートで受けるということなのでしょうか。現実的にそんなことが可能なのかな。

まあ、大阪市街地の高層ビルが備えているヘリポートから、どんどんピストン輸送する、ということなら、一日に千人規模の輸送は可能かもしれませんが、おそらくかなり高い料金ですよね。わざわざ乗る人がいるのでしょうか。

現実的でない感じがします。おそらく実際には、万博が開催されたとして、初期にデモ的に何回か飛ばす、くらいに終わってしまうような感じがします。機体そのものの開発も含めて、もう間に合わないでしょう。

まだもう少し、クルマは空を飛ばないでしょうね。技術的にも、インフラ面でも、法律面でも。その課題が具体的に抽出できる、というだけでもムダであるとは思いませんが、現状で交通の切り札と言い張るのは無理。それは無理。