完成しました。

これで来年の静岡ホビーショー向けの飛行機、機体のタスク3機が完成です。まあ、ひとまずはよろこばしい。この後は人形などの共通工作があるので、結局5月まで細々と続くのですが、やはり機体ができているのはね。大きいですからね。

これ、3機ともアメリカの戦略偵察機「SR-71」なんじゃないの、と思われるかもしれませんが、実はこれのうち銀黒のものが今回完成の「YF-12A」戦闘機です。えっ、戦闘機って、これ、SR-71でしょ。偵察機でしょ、と思われたかもしれません。

SR-71の強大な推力を生かして、ミサイルを抱えていち早く高高度に進出し、ソ連の超音速爆撃機を迎撃するのだ、という思想で作られたものです。おそろしいことに、純粋な開発機である「X」ではなくて、量産先行であることを示す「Y」がついています。米軍はこの計画にかなり本気だったのです。

それにはこの時代の米軍が、ソ連の爆撃機がアメリカ本土に核爆弾を抱えて空襲にくる、という妄想に偏執的に脅えていました。実際にはソ連からロシアに至るまで、あの国がそんな高性能爆撃機を保有した例がないのですが、そこはどうしてもそういうことにしておきたかったようですね。

このYF-12Aは機体の後半部分はほぼSR-71ですが、機首に火器管制レーダーを据えた関係で、機首左右の「チャイン」という空力付加物を除かなくてはなりませんでした。そころがこのために全体の空力特性が大幅に悪化し、胴体下面左右と中央に「ベントラルフィン」と呼ばれる補助翼を取り付けないと不安定で操縦しにくい、ということになってしまいました。

兵装は「AIM-47」と呼ばれる専用のミサイルを前部胴体下部右側のウエポンペイに3発収納します。どの資料でも3発とあるのですが、プラモではどう見ても2発しか入らないし、実際に2発の部品しかありません。このあたりは正直なところよくわからないですね。

テストでは、マッハ3で飛行しながらのミサイル発射が可能で(ミサイルそのものはマッハ6も出る)17回のテストで16回命中ですかね。優秀な性能を示したのですが。

SR-71が飛行準備から実際の飛行まで数日かかるような機体でした。特に高速のために機体表面が高温となるため、機体内の燃料タンクはその高温で密閉するように作られており、地上では漏れた燃料がしたたり落ちてくる、というようなおそろしいことになっていました。このためSR-71では「JP-7」という、揮発性のほとんどない「殺虫剤程度の引火性」という特殊な燃料を使っています。

そんな機体を、いつともしれないソ連機の空襲に備えて、常時待機させるというのはどう考えても現実的ではないわけです。かと言って、きたから、今から準備、と言ってもそれがととのうのは数日後です。

いくらなんでもそれは無理、ということで、試作4機ができていたのですかね。YF-12A計画は中止となりました。ところが、この超高速からのレーダー誘導長距離ミサイル、という思想と技術は、後のF-14トムキャットとその専用ミサイル「AIM-54」フェニックスで結実したのでした。

この銀と黒の機体については、あまり鮮明な資料写真がなく、かなりの部分が推定です。一説には、この機体で黒い部分がのちの「ステルス」素材、電波吸収素材で作られている、というのですが、それならコックピットフードの一部が銀なのはなんだね、ということになりますので、それは眉唾ですね。

謎の多い機体ですが、それなりに魅力的で、来年の静岡でも、うわ、こいつらまたやりやがった、と思ってもらえるとうれしいです。