予備知識を全くなしに観ました。
METOPERA メトロポリタンオペラ
2022-2023年シーズンの見逃しでいつものお気に入りの前方センターに近い席に座ったのですが全く時代の違うそれぞれ環境も違う立場も違う3人の女性たちの1日がほぼ同時進行する脚本。きっと混乱すると覚悟しながらみていたのにすんなりと入ってくるんです。
主人公のひとりが1920年代のヴァージニアウルフというイギリスの作家であること、もうひとりは1940年代アメリカ・ロサンゼルスの中流家庭の幸せ(そう)な主婦、最後のひとりが1990年代ニューヨークのバリバリ働く女性であることは見始めてわかってきました。
原作も読んでいなければアカデミー賞を取ったという映画も観ていないから元がどういう形で表現されていたかも知りません。
彼女たちのそれぞれは似通ったところもなく、悩みも別々で、満足感が得られない日常のイライラや良かれと思って頑張ったことがうまくいかなかったり、創作の苦しみから逃れられなかったり、ひとつも楽しい話はありません。
同時に舞台上に居たり、歌う場面が重なっても観ていて混乱しません。
この演出、すごくないですか⁉️
見ながらそれぞれが絡み合うとは思っていませんでした。
結末に絶望もあったり、むしろ、辛いし、苦しい。
それなのに、見終わったとき、そうだよね、それでも生きている私はこれからも生きていくんだ、とあきらめのネガティブではない納得感が広がっていました。
不思議です。
不思議な感情がわきおこります。
たぶん、
傑作だと思います。
幕間のインタビューで
作曲家のK・プッツと上演台本作家のG・ピアスがコロナ渦に作曲家と舞台台本作家がメールでやり取りしながら作ったと、舞台稽古が始まったら演じる歌手たちと話し合いながら作ったと話してました。
メトのコーラス隊のアンサンブル力はすごいんですが更にダンサーたちの物語を彩る舞台セット~20世紀初頭のロンドン郊外の雰囲気、20世紀半ばのアメリカンドリームのような能天気さ、20世紀末のあの時代~が実に分かりやすく歌手たちの居る空間の違和感のなさや3つの時代の特徴をとらえた衣装や背景のセット(美術衣裳:Tパイ)で上手く表現されていてます。
歌手たちの感情の役割みたいに効果的な振り付け(振付:アニーBパーソン)も出演者の多いメトの舞台上で上手く交通整理が出来ていました。
ちょっと、ねじまきクロニクルのダンスに通じるものを感じました。ねじまき鳥クロニクルのほうが前に観ているから(そのときもシュールなのに違和感よりも面白味を感じて悪くなかったんです。)もしかしたらこっちからヒントを得たのかしら?(ちなみにねじまき鳥はイスラエルの奇才 インバル・ピントと気鋭のアミール・クリガーの演出、演劇界の俊英 藤田貴大の脚本で舞台化し、音楽を大友良英が手掛けた創造性豊かな意欲作~成河さんがすごくて、門脇麦さんも存在感、渡辺大知さん、そして大貫勇輔さんの素晴らしさを再認識した作品)
メトの新作オペラは全て凄いんです。
感動がじわじわ広がります。
めぐりあう時間たちの映画版では、