トランプVSバーニー・サンダース~類似点と相違点

2018.11.282019.1.20修正

 

Ⅰ【トランプVSバーニー・サンダース】

(1)前回ブログで、「トランプ大統領(2017.1.20就任)の言動に多々問題があることに異論は無い。」【しかし、相手を非難して終わるのではなく、個別に解決策を考えることが重要だ。】「これまでの「主流派経済学、経済・政治を行うエリート、評論する知識人」の理解の仕方・行動では、現下の問題を解決できない。」と書いた。

前回ブログ【参考リンク】何故なんだろう?/国際政治:

米国大統領の玉石混交~今の世界の課題は「自由貿易の過剰」・解決方法は何か【その1】~【その5】

https://ameblo.jp/t1997/entry-12422256583.html


(2)①2016年の大統領予備選挙。民主党では非主流派のバーニー・サンダースが、妻クリントンと接戦だった。他方、共和党では非主流派のトランプが大統領候補になった上、そのまま大統領に当選した。

②実は予備選挙で、民主党指導部と妻クリントン陣営により「サンダース側に不利な情報のメディアリーク」など不公平な扱いや、不正行為疑惑があり、全国委員長が辞職している。また一般代議員票では妻クリントンを上回ったが、一般代議員の投票結果に縛られない特別代議員の投票をほとんど得られず、総数で下回った。これらが公平に行われていた場合に、本選挙が「トランプVSバーニー・サンダース」だった可能性を否定できない。

③また2020年大統領選挙は、「トランプVSバーニー・サンダース」も有り得る。


(3)①トランプについて、新聞・雑誌が言う支持者は、「学歴が高校卒業までの白人」「農業・製造業の底辺」「非民主的な思想の持ち主」などとなる。しかし【前二者は、元々は民主党の支持層である】、またトランプは意外なことに、けっこう長い民主党歴がある。

②バーニー・サンダースが政策上重視するのは、即ち支持者は【労働者、低所得者、経済的に苦労している若者】だ。これはトランプの支持者と重なっている。

③更に政策的主張では、かなり重なっている。このため、まずバーニー・サンダースを取り上げ、次いで2人の政策について【類似点と相違点】を書き出す。そこには、今の世界の課題である【自由貿易の過剰】への対応策が色濃い。


Ⅱ【バーニー・サンダースの属性】

1【政治経歴】

(1)学生時代

1941年生まれ。ニューヨーク市立大学から、シカゴ大学(政治学)。人種平等会議、学生非暴力調整委員会、学生平和ユニオン、アメリカ社会党・社会主義青年同盟。1963年、人種隔離政策(バスや食堂で白人と黒人を別席にする等)に反対。


(参考)米国で人種差別を禁止する公民権法ができたのは1964年【それまでは人種差別は合法だった!!最高裁判所も憲法に違反しないと判決していた】。例えば、黒人に投票権が無かったり、識字テストで除外した。白人と黒人は席が別の人種分離だった(会社で仕事する部屋・席、教育を受ける学校・教室、鉄道・バスの車両・座席、公共施設・ホテル・レストラン・映画館など)。

その後、1964年公民権法に基づく「積極的差別是正政策」(アファーマティブ・アクション)〔入学選抜、雇用・就職で歴史的差別を考慮する〕、大学進学機会拡大、エリート層への参入促進。1967年異人種間結婚を禁じる州法が最高裁判所で違憲。1968年公民権法は不動産取引(売らない貸さないなど)で差別禁止。

(参考)学生非暴力調整委員会(1960年結成)は公民権運動を進める組織。①シット・イン運動(飲食店の白人専用席に座り、注文が通るまで座り続ける非暴力直接行動)、②フリーダム・サマー運動(黒人の投票登録に同行して手伝う)。


(2)バーリントン市長(4期8年)、連邦下院議員(8期16年)、連邦上院議員(2006年~)

①州の地域政党・労働ユニオンから選挙出馬・落選・・・連邦上院議員選挙、バーモント州知事選挙。

②上記選挙で得票率が高かった地域の、バーリントン市長選挙に出て当選(1980年)。市政では「低価格住宅供給、累進課税制度導入、児童ケア、女性の権利、若者のための施策、風力・太陽光発電、環境保護」を行い、「住みやすい町」に選ばれる。

③連邦下院議員選挙に当選(1990年)。(なおこの間、知事選挙、連邦下院議員選挙に落選あり。)

④連邦上院議員選挙に当選(2006年)。・・・無所属だが、支援を民主党・バーモント進歩党・アメリカ民主社会主義者等から受ける。民主党と院内会派を組む。上院では、労働者層を重点に、中産階級と富裕層との格差縮小に取り組む。【行き過ぎた自由市場主義による貧富の格差拡大、国内産業の衰退を批判】。


(3)政党

①基本的に、無所属で一貫している。選挙に際して、一時的に入党したり、支援を受けたりする。「共和党と民主党は同じ」と評価している。民主社会主義者を自称する。

②連邦上院で民主党とは統一会派を組んでいるが、2016年大統領予備選挙のときだけ、民主党に入り、予備選挙敗北後に離党して無所属に戻った。他方、民主党上院は、サンダースを「有権者対策(アウトリーチ、票田の拡大)委員長」に任命して、同氏の支持者、議会での影響力・固定票を取り込もうとしている。


(4)大統領予備選挙(2016年)

①前記Ⅰのとおり、民主党に入党して予備選挙に出た。元々は、前記Ⅱ1(3)のとおり無所属が基本。このため、予備選挙で妻クリントンに勝ちそうになると、民主党指導部から、党の乗っ取り(加入戦術)と非難されたり、妨害を受けたりした。

②ところが、前記Ⅱ1(3)のように、固定票・支持者を持つサンダースの助けを民主党も必要としている。

③共和党やトランプとの対比で、民主党はリベラルと言われる。日本の進歩的人士が「リベラルの退潮を憂うる評論」をしたりする。しかし、サンダースと対比すると、【リベラルな中道主義とはいったい何なのか】という疑問が湧く。夫クリントンや英国労働党ブレア(「第3の道」)のように、【リベラルの皮を被った共和党や保守党】ではないか。


(参考)英国労働党ブレア「第3の道」1997年英国総選挙

【第1の道】弱者への単純な再配分(福祉国家主義)

〔手法〕給付/〔政策期待〕受けられるサービス拡充/〔副作用〕財政支出増加

【第2の道】政治的再配分を否定する(新自由主義)

〔手法〕福祉削減、民営化/〔政策期待〕経済活性化/〔副作用〕貧富格差拡大、若年層失業増加、犯罪増加

【第3の道】旧来の福祉国家主義が持つ限界と、新自由主義がもたらす歪みの両方を乗り越えたい

〔手法〕新自由主義と大差無い?/〔政策期待〕機会平等/〔副作用〕機会平等が実現しない?新自由主義と大差無い?


【サンダースの道】夫クリントン、英国労働党ブレアとの比較(更に仏蘭西○○党マクロンとの比較?)

〔手法〕バーリントン市長のときに「低価格住宅供給、累進課税制度導入、児童ケア、女性の権利、若者のための施策、風力・太陽光発電、環境保護」、連邦上院議員として、「労働者層を重点に、中産階級と富裕層との格差縮小に取り組む。【行き過ぎた自由市場主義による貧富の格差拡大、国内産業の衰退を批判」/〔政策期待〕中産階級と富裕層との格差縮小、社会システムを介して富を得た者が、社会システムの維持コストを負担する/〔副作用〕特に無し(逆に社会が安定、個人の幸福感が上がる)


(5)政治資金

上記選挙では、個人献金、草の根ボランティアによる1口27ドル献金、インターネットのクラウドファウンディングを活用。


2【移民の子孫】【ユダヤ人】

①父はポーランド系ユダヤ人移民。母はロシア・ポーランド系ユダヤ人(ニューヨーク出身)。父の親族は、ホロコーストで多く殺されている。だから、サンダースは政治の重要性を幼少期から意識している。

 なお兄は英国在住で、緑の党政治家のラリー・サンダース

②大学卒業後の数か月間、イスラエルのキブツ(集団農業共同体、1909~)に行く。

初期のキブツは、若者から理想的共同体の建設と見られることがあり、報道写真家の広河隆一も行ったことがある。当時は、イスラエル建国時に、パレスチナ人追放があったことを知られていなかった。


【参考、リンク】映画紹介:「パレスチナ1948 NAKBA(ナクバ)」

https://ameblo.jp/t1997/entry-11384583279.html?frm=theme


3【生活歴】

①出身はニューヨークだが、自然環境を求めてバーモント州に移住(後に政治的地盤になる)。

 移住先で様々な仕事をする(大工、ドキュメンタリー映画製作者、地域新聞フリーライター)。

②事実婚、結婚、再婚をしている。


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【その2】<トランプVSバーニー・サンダース~類似点と相違点>

Ⅲ【バーニー・サンダースの「玉」「石」・・・トランプとの比較】 (1)~(7)

https://ameblo.jp/t1997/entry-12434409590.html