先日船村徹さんの特番がBSテレ東にて放送され、船村さんのご子息で作編曲家の蔦将包氏が、島倉千代子さんの「哀愁のからまつ林」について作曲家目線で語っていました。
島倉千代子さんの「哀愁のからまつ林」は最高音がミ(hiE)で最低音がソ(mid1G)です。
語るようなメロディーを高音から低音まで切々と歌い込まれていて、哀愁ある美しい歌声が一段と引き立ち心にしみ入ります。
今の女性演歌歌手の歌う曲で最高音がミの曲はほとんどありません。高くてもド(hiC)ぐらいまでで、島倉さんの曲をカバーする際も最高音をドぐらいまでに下げてカバーされています。
歌本で昭和30年代の島倉千代子さんの曲の譜面を見ていると、高音のミやファの出てくる曲はいくらでも存在します。
「恋しているんだもん」も「東京だョおっ母さん」も「思い出さん今日は」もみんなファが最高音です。
島倉さんの場合は、このような高音であっても張り上げることなく、低音と高音の声質も変わることなく、天性の哀愁を帯びた可憐な歌声で自然に歌えているのが大きな魅力です。
因みに最高音ソ(hiG)が出てくる曲も「東京の人さようなら」「お見合いワルツ」「愛した人はいない街」等数曲ですがあります
また、「初恋の人さようなら」の"おてがみ"の箇所のように中音のファから1オクターブ上の高音のファまで一気に跳ね上がる曲などもあります。
カバーした歌手皆さん異口同音に、島倉さんはサラッと歌っているので難しくあまり感じなくても実際に歌ってみると難しいとおっしゃいます。
例えば恋しているんだもんなどはカラオケだと原曲キーは5度も上げる必要があります。原曲キーで歌える人はかなり限られるのではないでしょうか。
島倉さんの歌声を聴いていると他の歌手ではなかなかない音域、音階が頻発するので聴いていて楽しいですね
歌番組で他の歌手の曲を聴いていると、島倉さんだったらここの音は上がるはずなのにと思うことも儘あります。
今回は島倉千代子さんの曲の中でも特に難曲だと思う曲を昭和30年代の曲の中から3曲挙げてみました。
第3位「おもいでの花」作曲万城目正
この曲は最初の音が高音のファ(hiF)から始まるという素人はもとよりプロが歌うにもかなり困難な曲。
第2位「嫁っこ船頭」作曲船村徹
この曲は出だしですら高音のレ(hiD)なのにそこから更にファ(hiF)までロングトーンで上がって行くという難曲。
第1位「花散る下田」作曲古賀政男
この曲は最高音がソ(hiG)、最低音がソ(mid1G)で音域が2オクターブ以上ある上に、音の高低、細かい節が多く、台詞まであるという、文句無しに最高難易度を誇る曲だと思います。
これだけの高音であっても耳をつんざくような声にならず、音圧も一定で芯のある歌声は長時間聴いていても疲れません。
そして説明しにくいですが、島倉さんの歌声は1音1音に丸みを帯びた心を穏やかにさせるような成分が豊かに入っているように感じます。
まさに癒しの歌声なのだと思います