赤井寅三 セラピー -7ページ目
 ここ数日、一気に春の陽気になり、自転車で走る楽しみが倍増している。
 自分の足で漕いで風を受けての移動は、やっぱり楽しい。他の動力を使わない、自力での移動(下り坂と追い風は除く)。自由でもあるし自己責任でもある潔さみたいなものを感じて、自分で自分に酔う。そんな小っちゃな幸せが、目的地まで続いて行くのだ。
 
 「自分の足で移動する」というごくごく当たり前の行為を、特別な感情で受け止めたことがあった。
 うつ闘病生活が四年目に入った頃のことだ。
 病気になり二年間まるまる何もせずに休養した後、三年目の正月から私は書店員のバイトを始めた。しかしその一年後に、店内のBGMの選択と音量を巡って当時の店長と喧嘩になり、クビになってしまった。それから一月ほど昼間から酒を飲む生活が続いた。このままじゃいけない、と思った私は当時の家族を離れ、故郷の実家で療養することにした。両親も望んでいたので、期限を決めずに、気分が軽くなるまでしばらくいようと思っていた。
 
 その頃がうつ闘病のピークだったような気がする。
 「堕ちる所まで堕ちきってしまった…」という、どん底感。元の元気さを取り戻せる自信を持てなくなっていた。
 故郷での療養はそんな私に最適だと思った。というより、他にそれに適した場所がわからなかった。
 
 実家での療養の二日目、天気も良く冬にしては暖かい日だったので、私は午前中から散歩に出ることにした。懐かしい中学校の周りを歩いて、昔と変わった所と変わらない所を探していたりしているうちに、どんどん気分が軽くなってきた。気が付いたら隣の学区にまで入っていた。真新しい市立図書館に入り、休憩がてら次の目的地を考え、さらに歩いて行った。結局帰宅したのは夕飯の前だった。
 その晩、私はなかなか寝付けなかった。
 久しぶりに長い距離を歩いたので体は疲れているはずなのだが、これからのことを考えていたら頭が冴えてきたのだ。
 「今日おれは、自分の足で歩いて行った」———そんな肉体的な達成感が、精神的で象徴的な意味に思わざるを得なくなっていたのだ。
 
 歩けたじゃん、おれ。
 自分の二本の足で歩けたじゃん。
 今は病気でも、自分の力で一歩一歩進んで行けるようになるんだって。
 
 そう思ったら、涙が止まらなくなってきた。
 今の自分の不甲斐なさだったり、なかなか改善しない苛立ちだったり、なんとなく世間に対して申し訳ない気持ちだったり、いろんな理由がごちゃ混ぜにブレンドされた涙が次から次へとあふれ出てきた。うつの時はよく泣いてしまっていたのだが、この日が間違いなく一番泣いた日だった。
 やっぱり、実家に頼ってちゃいかん。自分の足で進まなきゃいかん。そんな気がしてきた。
 
 そして翌日、母親の運転する車で実家を後にしたのだった。無期限の予定だった実家療養は、たった二泊三日で終わった。
 ひょっとしたら、この故郷で感じたことも、神様がくれたチャンスだったのかもしれない。「自力で進めるんだ」と思えたことは、その年の夏以降に自転車散歩の楽しさを覚えて、結果的に急速に病気が軽くなっていくきっかけになったからだ。
 
 
 
 
 
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 2月24日に最終の出勤をし、有給休暇消化を経て3月10日で晴れてサラリーマンではなくなった。
 ありがたいことに、こんな駆け出しの私にも仕事の依頼をしてくださる方々がいてくださった。おかげさまで有給消化期間も毎日何かするべきことがあった。だからあっという間にフリーランスになだれ込んでしまったという感がある。

 規則正しい生活が求められるサラリーマンを辞めた後の事を想像して自分で自分を心配していたのは、生活がダラダラしてしまうのではないか、ということだ。
 元々ダラダラするのが大好きな性格なので、放っておいたらきっとダラダラするだろう。一度ダラダラしてしまったらもう元には戻れない気がして仕方がなかった。
 だから、「独立してもこれまで通りに朝7時に起きよう!」と決めていた。これを守ってやってみると、結構朝が充実することに気がついた。午前中全体にゆとりが出てきて、すごくいいのだ。

【知りたくないかもしれないけど教えるわ(その1)】
毎朝の時間割は以下の通り。
7:00~7:15 起床~朝ご飯の準備
7:15~7:30 NHK BS「ちりとてちん」を観ながら朝ご飯を食べる
7:30~8:00 風呂につかる
8:00~8:15 コーヒーを飲みながらNHK「ごちそうさん」
8:30~8:45 メールチェック&Facebookに「今日の顔」アップ
8:45~9:00 散歩
9:00~   仕事

※4月以降「ちりとてちん」→「カーネーション」に変更予定。「ごちそうさん」の後釜は様子見。


 15分単位できっちり動いていくと、何となくリズムがつけやすい。NHKの朝の時間割はようできとるわ、と思った。
 おかげでダラダラが少なくて助かります。ありがとう、籾井会長。


 

【知りたくないかもしれないけど教えるわ(その2)】
ちなみに私の地元の方言は「ジャン」「ダラ」「リン」が代表選手だ。「ダラ」は軽く同意を求めたり疑問を問いかけたりする時に使う。
(標準語)「あれ、スケソウダラですよね?」「違うでしょ、マダラでしょうね」
(方言)「あれ、スケソウダラダラ?」」「ほうか?マダラダラ」

 
 
 
 
 
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 誰でもそうだと思うけど、原因がこれと断定できないイライラは本当にたちが悪くて困る。
 思い出せば、小さな原因はいくつか思い当たるのだが、どれも一発でイライラを点火させるパワーには欠ける、ということが多い。問題の根本的解決が面倒くさいから、余計苛立つのだろうか。
 
 以下、本日朝からの小さい原因例。
 
・目の前で行ってしまって以来、エレベーターがなかなか来ない
・ヤマ、オチのない朝礼を聞かされる
・どこかで「リバーサイド」という文字を見て潜在意識が反応しているのか、井上陽水さんの「リバーサイド・ホテル」がいつまでも頭の中をぐるぐる回っている
・昼休み、食べたい店にこれでもかの行列ができている
・空いてる店をやっと見つけて入ってみたら、テレビがやたらとうるさい
・会社の向かいのデスクの男のゲップがうるさい
・映像素材のレンダリング待ち(←今)

 
 …という風に、どれも破壊力もない悩みだが、その分特効薬もない。逆にこの一つ一つにいちいち対応していたり怒ったりしていたらますます疲れてしまう。だから一つ一つ我慢する。だからイライラが貯まる。
 
 こういう小さなイライラが貯まる時、どうしてもうつに罹った当時を思い出してしまうのだ。思い出して、今の調子の良さにほっとする。
 
 私のうつの決定的な原因は、いまだによくわかっていない。
 何らかの火薬が少しずつ貯まっていって、何らかの衝撃が引きがねとなって一気に爆発してしまった、という自覚はあった。
 精神疾患の原因がはっきりと分かっている場合には、それを除去するのが最も簡単だと聞いたことがある。なるほど、それはそうだろう。異動先の新しい上司と馬が合わないことが原因であれば、元の職場に戻るのがいい。引っ越した先の環境が原因であれば、安住できる他の場所に移ればいい。その実現可能性の難易はさておき、簡単な理屈だと思う。
 
 しかしそれができなかったり、私のように原因が特定できなかったり、という場合も多いだろう。
 そんな時に、結果的に私自身を助けてくれたのは、それらの細かい原因を全て肯定することと、気分が晴れるはけ口を見つけておくことだった。
 
 はけ口は多くあればあるほど楽になると思う。私の場合、散歩がその一つだった。
 というわけで、今日のランチは、テレビがガチャガチャうるさい店で中華飯を早めに食べて(早食いは太る原因らしいけど)、先週末の雪がまだちょこちょこと残る街をぶらぶら歩く時間を多めに取った。
 街を行く人たちはまだまだ真冬の装いだ。都会の中だから梅の花が咲いたかどうかはわからないけど、あと半月もすれば春めいてくるだろう。今は裸のケヤキの並木に葉っぱが出てくる日も近い。ああ、楽しみだな。何となくだけど、やっぱり春になるっていいなあ。
 
 病気を乗り越えた後の私は、より単純になったのか、こんな20分程度の散歩でイライラが軽くなってしまう。昔は引きずっていたであろう厄介事も、随分楽に感じられるようになった。これも病気になったおかげなんだと思った。
 あと5日間出社すれば、今の会社を退職できます。楽しみだなあ。
 
 
 
 
 
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 年々、マスメディアで報道されるニュースの賞味期限が短くなっている気がしてならない。
 そもそも、個人がメディアとなっている時代だ。マスメディアが流す情報は減ることはないから(偏ることはあっても)、我々の脳味噌は情報でお腹いっぱいの状態が続いている。
 
 2014年2月6日の夜のニュースは、「ソチオリンピック開幕」「別人作曲疑惑」「東京都知事選挙」「ソニーのリストラ」などがメインだったのだが…。この中のニュースで例えば半年後に憶えているものは、せいぜいソチオリンピックぐらいではないだろうか?「佐村河内守さん」なんていうめちゃくちゃインパクトの強い名前も、「えーっと、聞いたことがある気がするけど誰だっけ?」となるまでにそんなに時間がかからないかも知れない。
 所詮、細川・小泉の演説に集まった大群衆を、あたかも舛添の支持者であるかのように報じるのが今のマスメディアだ。我々国民の興味なんて、彼らにしてみたらいくらでもコントロールできる茶番なのかも知れない。
 
 それでも私は、気になるニュースの「それから」を知りたい。なのに、マスメディアはほとぼりが冷めたら報道をしなくなる。あれだけ報じられていた「特定秘密保護法案」の議論は?中国の「防空識別圏」はどうなった?あの社長射殺事件の犯人は?どれもこれも茶番?
 
 マスメディア論はさておき。
 情報の受け手にとってニュースや言葉の賞味期限が短いのは、我々がその中味とか意味とか、他の事象とのつながりとかをよくわからないからではないだろうか。自分の体にビシバシ関係してくるものなら必死でその意味を知ろうとするものだからだ。つまり、その言葉が持つ本質が自分の腹にストーンと落ちてくれば、その言葉の賞味期限は延びるし、あるいは永遠になるんだと思う。その永遠になったものが、いわゆる座右の銘になるのではないか。
 
 だから、「名言」をたくさん残した人というのは、日常に流れるどんなニュースよりも価値がある。時代や国境を簡単に飛び越えて広まる強さがある。かっこいいなあ。
 というわけで、膳場さんには悪いけど、NEWS23を途中で消して、昨夜はこの本を読んで寝ました。茶番よりも本質を知って生きていきたい。
 
 
 
 
 
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 美意識は人によって様々だから、大上段に「こうであろう」と断言したくはない。
 でも、今さらなんだが、ギャルの方々のあの大げさなつけまつ毛はなんなんだ!といいたくなるランチタイムを過ごしてしまった。
 
 元々私は薄化粧が好きで、こってりしたメイクを見ると「見てはいけないもの」を見てしまったような残念な気分になる。母親がほとんど化粧っ気のない人だからだろうか。幼い頃からその感覚は変わっていない。
 昔から山姥メイクやらガングロやら、その他どう名付けていいものか戸惑うようなきついメイクが流行ってきた。ここ数年の大げさなつけまつ毛もその流れだろうが、…やっぱり慣れない。
 まばたきする度にその辺のほこりや塵がわっさわっさと舞うような気がして、特に潔癖症でもない私だが近づくのが怖いのだ。どうしてあんなものが流行るんだろう?男の目からして、全然魅力的に見えないのだが。私がおっさんになってしまったからなのか?だったらなおさら嫌だなあ。
 
 そして迎えた本日のランチタイム。
 Uの字カウンターの向かい側には、同じようなつけまつ毛二人組が私と対峙している。また見てはいけないものを見てしまった気になった。怪我をして腕を吊った人の三角巾とか、松葉杖にギプスとかを見てしまったような、「可哀そうに…」という感情が先に来た。
 向こうはその気はゼロだろうが、こっちは気になってしょうがない。だいたい、まつ毛がデカすぎて表情がわからず不気味である。トッピング用の高菜を目に当てているようにも見えてしまう。まさか。
 なるべく向かい側を見ないように見ないようにしながらラーメンを食べた。食べ終わって水を飲むときに見てしまった。ギャルの方々は、ラーメンそっちのけでスマートフォンをいじっていた。つい「のびちゃうよ!」と言いそうになったが、それは別問題なのでやめておいた。私はつけまつ毛に関して惑わされていたのであって、食事中のマナーを注意する気はない。これ以上、彼女らを私の中で悪く思わないようにしたい。本当はいい子たちなのかも知れないし。といろいろ考えて、そのまま勘定を払って店を出た。
 
 通りへ出て、これを言ったら最後のセリフ、「まったく、最近の若いもんは…」と危うくつぶやきそうになったその瞬間、また別の敵キャラが目の前に現れた。
 50代ぐらいのおじさん。頭には中華料理屋のような帽子。上半身は灰色のブレザー。短めの前掛け。その下は…。
 
 …プロレスの編み上げブーツ。前掛けに隠れた部分はたぶん短パン。嗚呼。
 
 美意識は人によって様々だから、大上段に「こうであろう」と断言したくはないが…、何やら貴重な体験をしたお昼休みだった。
 
 
 
 
 
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