今、私の頭皮がマッサージされて血流が良くなっているのがわかる。頭蓋骨にへばりついているもんだと思っていた皮膚が柔らかくなり、骨から浮いているような感じを覚える。すべての毛根のコリがほぐされて、停滞していたかもしれない何かの流れ(育毛剤のCMで見るような、血液だか体液だかが勢いよく何かが流れているやつ)がたちどころに活力を取り戻していく気がする。頭全体がじんわりとイタ気持ちいい熱さに包まれる。ああ、私のすべての毛根たちよ、よかったねえ。これでまた元気になっておくれ。
ところで、父が38歳の時に産まれた私は、30代の前半からハゲが進んでいたという父のふさふさ姿を、全く知らない。それに私は幼い頃から額が広いので、これは父親に似たからで、ハゲの前兆なのだろうと思っていた。だから、私も大人になったら当然、父と同じようにハゲるのだと信じていた。ところが、中学高校予備校大学社会人と成長していっても、私の生え際は後退していかなかった。「よかった、まだハゲていない!」と思う一方で、「いつハゲ始めるのだろうか」と不安も感じながらここまで来た。40代に突入して白髪が増えたが、生え際前線は依然停滞中だ。ただし休戦協定が維持されているだけで、いつ協定が白紙撤回にされてもおかしくはないのだ。
でも、とここで開き直る。
私はどうせ男だ。ハゲは自分の意志では制御不能なものだ。男なら誰でも生え際に不気味な時限爆弾が仕掛けられているのだ。できれば不発のまま一生を終えたいが、ストレスやら睡眠不足やら様々な要因が時限爆弾のタイマーの針を進めてしまう。
だったら、ハゲを全面から肯定して受け入れようじゃないか。ハゲの何が悪いのか。ハゲても堂々と街を歩こうじゃないか。うちの父親は偉い。少なくとも40年以上、ハゲを隠さずに生き続けている。見苦しい抵抗は今すぐやめよう。暑苦しい被り物を今すぐ脱ぎ捨てよう。ハゲな自分を目いっぱい愛してあげようじゃないか。等身大のぼくを見て!
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ヘッドスパが終わり、魅惑のシャンプールームからカット台の椅子に移動する。
ドライヤーをかけてもらいながら、鏡に映る自分の髪形を見る。
まだふさふさしている髪を愛しく思うのだ。
やっぱり、なるべくならハゲないでほしいなあ。
加山雄三 ベスト40/Dreamusic

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