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《遠い昔、深夜放送が好きだった人たちへ贈る小説》間々田陽紀の世界

■好きな音楽、好きな映画、好きなサッカー、好きなモータースポーツなどをちりばめながら、気ままに小説(249作品)・作詞(506作品)を創作しています。ブログも創作も《Evergreen》な風景を描ければと思っています。

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小説短編集 【75】オブラディ・オブラダ(原稿用紙30枚)


※沙希は、いまだに50代の若さで病死した父親の喪失感から抜け出ることが出来ないでいた。大学4年生になっていた沙希は、卒業後に洋画配給会社で働きたいという夢の実現についても母親より父親に頻繁に相談していた。ところが沙希の夢へアプローチしている姿を見ることもなく父親は旅立ってしまったのだ。
 
 沙希にとって近しい人の死は、それこそ父の死が初めてのことだった。お通夜から葬儀そして斎場までの粛々として時間が流れて行った中で、今でも沙希は自分は悪い夢をみているだけだと思うことが度々あった。しかしさすがに父親の死から半年も経っているので、今では父親のいない現実と何とか向き合おうと必死にもがいていたのだった。
  
 両親とも高校の先生の家で一人っ子として育てられた沙希は、家庭には常に両親がいて当たり前という中で育った。そんな沙希にとって居て当たり前の父親が家庭から姿を消した現実を、いまだに上手く受け入れることが出来ないでいた。とにかく大切な人が死んでし まうということが、今の沙希にとっては恐怖心に近い感覚として受け止められていた。
 
 そしてその恐怖心が上手にコントロール出来ない時間が続いていく中で、こんな悲しい結末が待っているのが分かっているのに、どうやって生きていいけばいいのだろうと考えている沙希がいたのだった。それこそ父親の次には、やがては大好きな母親もこの世からいなくなってしまう。
 
 はっきり言って母親が亡くなって、大切な父親と母親の2人に二度と会うことができない風景が必ずいつかは現実のものとなる。そんな悲しい現実が待っているのに、どうやって先へ進んでいくことが出来るというのだろう。沙希は出口のない迷路に入り込んでしまった・・・。


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小説短編集 【76】ミュージック・メモリーの奇跡(原稿用紙30枚)

※大学3年生の宏太は、祖母が亡くなると言う悲しい知らせの中で新年を迎えていた。宏太は昨年末高校生の時以来、久しぶりに岡崎市にある祖父母の家に立ち寄った。宏太が祖父母の家に来たのは、宏太が高校1年生の時以来だった。
 
 5年前宏太は高校生になって初めての夏休みを祖父母の家で過ごした。あの時はとても元気だった祖母が、昨年末急死した。脳溢血だった。正直5年前の元気な姿の祖母の事を思うと、宏太は祖母の死が現実の出来事のようには思われなかった。
 
 5年前東京で希望する高校へ進学していた宏太は、入学後1ヶ月経った頃には既に高校を休むようになっていた。今から思っても高校へ入学したばかりの宏太に、特別なことがあった訳ではなかった。ただ学校生活が面白くなかったのだ。
 
 少しは大人の仲間入りが出来るかと期待していた高校生活だったが、宏太に待っていたのは義務教育だった中学の延長といった風景だった。勿論積極的に部活など何もしようとしなかった宏太が悪かったと今では思うのだが、当時は全て受動的になっていた宏太がいたのだった。
 
 そのまま中途半端な不登校生活が夏休み前まで続いた宏太は、父親からの勧めで久しぶりに1週間くらい父親の実家のある岡崎市の祖父母家ので過ごしてみてはと声を掛けられた。確かに長い夏休み、ずっと家の中にいるのも退屈だった宏太は小学生以来久しぶりに祖父母家のを訪れたのだった。
 
 当初1週間ぐらいと思って祖父母の家に行った宏太だったが、結果から言うと夏休み中祖父母の家で過ごすこととなった。理由は宏太にとっては新しいが、祖父が半世紀以上も利用している古い音楽を楽しむツールに出会ったためだった・・・。


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