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《遠い昔、深夜放送が好きだった人たちへ贈る小説》間々田陽紀の世界

■好きな音楽、好きな映画、好きなサッカー、好きなモータースポーツなどをちりばめながら、気ままに小説(243作品)・作詞(506作品)を創作しています。ブログも創作も《Evergreen》な風景を描ければと思っています。

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★5月5(日)、下記作品が無料購読できます

小説短編集 【70】永遠の噓だったなんて(原稿用紙30枚) 


※智樹が小説の動機付けに繋がるダイアリーを書き始めてから、智樹の本棚に何冊のダイアリーが積み上げられただろう。それこそ初めて智樹がダイアリーを綴り始めたのは高校生の時だった。もっともダイアリーと言っても使わなくなったノートに、退屈な授業の合間に悪戯書きを自由気ままに綴り出したのが切っ掛けだった。
 
 今25歳になっていた智樹は、机の隣に置いてある大きな本棚の一番下の棚に、放置されていたダイアリーの束を見つめていた。目の前の大きな机の片隅に放置されていた最新のダイアリーは、ほとんど開かれることがなくなっていた。
 
 大学生の頃から小説の新人賞に応募し始めた智樹は、自身が創作する小説のヒントの全てを高校生の時から書き始めていたダイアリーの中から得て来ていた。流れ過ぎた時間の中で高校生の或いは大学生の智樹が、その時々の様々な風景を前にして悩んだことや考えたことなどから、智樹は小説の一文を紡ぎ出していた。
 
 そして大学に入学してから2年後、小説を書き続けて出来上がった作品を順番に出版社の新人賞に応募していた智樹に、初めて嬉しい結果がもたらさせたのは智樹が20歳の時だった。予選通過なども全くなかった中で、智樹が投稿した小説が初めて、ある出版社主催の新人賞の佳作に選出されたのだった。
 
 智樹のパソコンの投稿済作品のフォルダー中から、新しく受賞作品と名付けたフォルダーの中に移行した初めての作品だった。あの時智樹の傍らには、受賞をともに喜んでくれた同じ大学の同級生の玲奈がいてくれた。智樹も玲奈も20歳の時だった。
 
 今玲奈のことを語るとすれば全て過去形で語るしかないことは、25歳になっていた智樹には自身の未熟さを思い知らされることと同一のことだだった。20歳で出版社の編集者にマンツーマンで小説家として指導を受けていた智樹は、編集者と智樹自身の努力のお陰で新人小説家として周囲から、それなりの評価を得るまでになっていた・・・。


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小説短編集 【71】ジュークボックスが鳴り続けてる(原稿用紙30枚)


※優し過ぎた木葉への想いに豊樹は、いまだに振り回されていた。あの夜木葉の20歳の誕生日に、ふと立ち寄ったカフェバーで2人は初めて本気でお酒と向き合った。勿論それまでにも真似事くらいのお酒を口にすることがあった2人が、少しだけ背伸びをして次から次へとビールを口に運んだ。

 何処かで勢いに任せて普段とは違ったことをしなければとつまらない衝動にかられた2人は、シックなカフェバーにお似合いの古いジュークボックスから流れ出ているオールディーズナンバーに合わせて不器用で不自然な動きのダンスを、互いの身体を寄せ合いながら踊り続けた。

 今から半年前の忘れられない風景だった。その夜から豊樹からの連絡に木葉が全く反応することがなくなった。電話もメールも所在無げに虚しい反応のない世界に入り込んでいた。一体あの夜、2人に何があったと言うのだろう。いや豊樹が木葉に何をしたと言うのだろう。そんなことを考え続けている豊樹の頭の中では、あの日以来ジュークボックスが鳴り続けていたのだった。

     ※

 豊樹が木葉と出会ったのは1年前のコンサートスタッフのアルバイト先だった。偶然オフィシャルグッズの販売を担当することになった2人は、互いに同じ20歳であるという事だけで何故かしら運命さえ感じているようだった。もっとも、それは豊樹だけのことだったのかもしれなかった・・・。


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