オリジナル小説 【いつもジャーニーが流れていた】(第5回) | 《遠い昔、深夜放送が好きだった人たちへ贈る小説》間々田陽紀の世界

《遠い昔、深夜放送が好きだった人たちへ贈る小説》間々田陽紀の世界

■好きな音楽、好きな映画、好きなサッカー、好きなモータースポーツなどをちりばめながら、気ままに小説(234作品)・作詞(506作品)を創作しています。ブログも創作も《Evergreen》な風景を描ければと思っています。

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『確かに川名の言う通りだと思う。小説家として作品を世に出すために、何もフリー・ライターになる必要なんか全く無いと今では思っているよ。小説家として作品を創出するに当たって、特異な体験をするかそれが出来ないのであればとにかく小説を書ける時間を少しでも多く確保するとかと言ったことが重要だと思う』
正直佐藤が選択したフリー・ライターの仕事がどんな内容なのかが分からなかった川名には、佐藤の話が半分くらいしか分からなかった。

『佐藤はさっき読み違えたと過去形で話をしたけど、もう小説を書くのを辞めたのか?』
川名は佐藤に尋ねた。
『もう60歳だからね・・・』
佐藤は明確な答えを口にしなかった。
『そう言う川名は?』
『俺は相変わらず♪Don,t stop believin,かな・・・』
佐藤が思わず苦笑いしながら反応した。

『そう言えば昔、お前はジャーニーのエスケープと言うアルバムの中のその楽曲を熱心に聴いていた時があったな。俺が出版社でお前が銀行でまだ働いて時だったよな』
『1981年俺が25歳でちょうど結婚を機に赴任先で会社を辞めた時から今の今までずっと、俺はこの楽曲♪Don,t stop believin,の歌詞《自分を信じ続けるのさ》を自分に言い聞かせるように聴き続けているよ』

『なるほどね・・・。お前はまだ小説を書き続けると言うことだ!』
佐藤の話を肯定も否定しないままで、川名は受け流した。2人が話を続けていると、司会の学生から参加者全員が中央に集まるように声が掛かった。川名と佐藤の2人もその声に後押しされるように、長い間座っていたイスから腰を上げた。

毎年年1回大学卒業後も必ずこの大学同人誌の総会の場で、川名は同期の佐藤と再会して来ていた。川名は35歳の時に離婚してから60歳の今までずっと独りきりで生きて来た。それに比べると佐藤は結婚して子供2人にも恵まれていたので、川名に比べて背負っている責任が重たかったに違いなかった。

川名にとってはさほどの意味も無かった60歳と言う年齢も、背負ってきた責任の重さの違いで佐藤には意味のある年齢に思えていたのだろう。独りきりで暮らして来た川名は、とにかく人目なども気にする必要もないのである程度自由気ままに生きて来ることが出来た。

佐藤みたいに夫や父親と言う役割があると、周囲のことが気になって自分の想い通りの選択が出来ない事もあっただろう。ひょっとしてそんな佐藤が、60歳と言う年齢を機に川名が手にしていた独り身の自由さを意識し始めて来たのかもしれないと川名には思えた。

大学時代から川名と佐藤の2人だけが、結構我が道を行くと言うか周囲からの雑音に左右されることが少なかった。だからこそ2人が違う形で小説を書くことに、拘り続けて来ることが出来たのだろう。川名は佐藤以外に長く個人的な繋がりを続けている同期は、誰一人もいなかった。

今から思えば川名は佐藤との距離感が遠過ぎず近過ぎず、とても程よい状況が保っていられたことが大きかった。2人が異常に接近する関係性だったら、そこには様々な軋轢が生じていたかもしれなかった。或いは逆に2人の姿がほとんど視界に入らないほどの関係性だったら、とっくのとうに会うことは無くなっていただろう。

大学卒業してから40年近くも経つと言うのに、川名も佐藤も毎年若い頃に夢を託した大学の同人誌の総会に毎年顔を出して来た。そして60歳になっていた川名と佐藤との間には、灯し続けて来ていた夢の灯りの明るさに微妙な差が出来ていたように川名には思われた。

将来の可能性なんて話なら、川名と佐藤の間では何等変わるところが無かった。大学卒業後40年間2人は2人なりに夢と向き合ってきたが、決してそれが結実すると言った状況を手に入れることが出来ないでいた。

それでも川名と佐藤の間での違いと言うものがあるとすれば、それはこの40年間に流れ過ぎた時間に対する後悔の念の強さかも知れなかった。特にここ数年間毎年の総会終了後の忘年会では、いつもすぐに2人きりになっていたがその時の酔い具合が年を重ねるごとに佐藤の酔い具合がひどくなって来ていた。

最初は歳のせいかもしれないと川名は考えていたが、どうやら佐藤が60歳を意識し始めるのと合わせてひどく酔う様になっていたように思われた。大学卒業時に出版社に就職した佐藤の方が銀行に就職した川名に比べると、小説を書くと言うことに関しては夢に近づいていたように思う。


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■レーベル《遠い昔、深夜放送が好きだった人たちへ》間々田陽紀 小説の世界~シリーズ 間々田 陽紀 中編集(原稿用紙90~100枚)1作250円


【1】Tシャツとピンクの万年筆
【2】リバプールの旅人
【3】あなたがネクタイ外したから、私もヒールを脱ぐわ
【4】僕のプレイリストはタイムカプセル
【5】鳴らない風鈴
【6】切り分けられた林檎
【7】キャロルキングを聴きながら
【8】真冬のストローハット
【9】5年目のバレンタインデー
【10】セイントバレンタインデーの奇跡
【12】街角のバレンタインデー
【13】瞳の中のバレンタインデー
【14】バレンタインデー・ラプソディ
【15】ラストチャンス・バレンタインデー
【16】奇跡を呼んだナレーション
【17】コーヒーチケット1冊分の恋
【18】ハッピーエンドまでの君と僕とのセオリー
【19】ブロークンハート・イヴ
【20】グッドミュージックが生まれる街
【21】聖マルタンの夏
【22】ノン・アップデート・メモリーズ
【23】グッドバイ色の街だから
【24】雨の中のオレンジ
【25】君がヒロインになる瞬間(とき)
【26】シャッター音がくれた奇跡
【27】眠れない夜はニルソンを聴きながら
【28】リベンバーミー
【29】フォーマイセルフ&フォーユアセルフ
【30】ジョナサンがいた風景
【31】ファイナル・コンサート
【32】気分はアウトオブデート
【33】それぞれのダイアリー  
【34】あの頃君は駆け抜けて逝った  
【35】ミュージシャンたちの恋物語
【36】サマークリスマス
【37】ジーンズのある風景
【38】ゲバ字の消えた夏
【39】高校3年生のネアンデルタール人
【40】アルバート・ドッグを吹く風
【41】ワーズワースそして教授と私の旅
【42】天窓から眺めるロンドンの街
【43】チェスターの空の下
【44】ウクレレの音が流れる夏
【45】私は夢見るシャンソン人形
【46】いつか観たジョンレノン
【47】あの日聴いた夢のカリフォルニア
【48】懐かしいね、ガントレ!
【49】神楽坂で聴くサウンドオブサイレンス
【50】キャロルキングをお寺で
【51】サウンドトラックはユーミンで
【52】ルート66へに誘われて
【53】俺たちのジュークボックス
【54】キックオフは、これから!
【55】タイムカプセルからビートルズ
【56】2人のランナウェイ
【57】もうラヴソングは唄えない
【58】遅れて来たラヴレター
【59】君にとどけボーントゥーラン
【60】母はクラプトンが大好き
【61】タイムアフタータイムなんて
【62】シャーリーンの唄ですよね
【63】気分はハロー・グッドバイ
【64】クロスロードとオヤジたち
【65】サザンカンフォートを抱えた娘
【66】あなたがトミーで私がジーナ
【67】ロールプレイング・ラヴをあなたと
【68】パンタロンじゃなくベルボトムさ!
【69】俺は根っからのランブリング・マン
【70】タイムタイムタイム~冬の散歩道
【71】俺のロード・ソングは、ウィリン
【72】アメリカ《名前のない馬》から始まった
【73】ツェッペリンに包まれて
【74】ロイ・ブキャナンの流れる家
【75】フォークソングが消えた日
【76】終わらないメロディ
【77】俺もお前もストレンジャー
【78】ジョニ・ミッチェルで聴きたいね
【79】今さら、ハートに火をつけて
【80】アフリカを聴きながら
【81】プロコル・ハルムが唄っている
【82】ゼーガーとエバンズが教えてくれた
【83】ビタースウィート・サンバを取り戻せ
【84】ティアーズ・イン・ヘヴンなんて
【85】俺たちはフール・オン・ザ・ヒル
【86】このリフに魅せられて
【87】さらば黄昏のレンガ路よ
【88】心にハングリー・ハートを
【89】いつもジャーニーが流れていた
【90】ジャニスと踊ろう
【91】俺は今でも25or6to4
【92】君に捧げるララバイ
【93】ジャニスが語りかけた夜
【94】キリング・ミー・ソフトリーをあなたに
【95】恋をするならシェイクスピアで
【96】ゲーテが教えてくれた愛のシーズン
【97】僕と君だけのファーザー・クリスマス
【98】恋する気分は、ヴェルレーヌから
【99】愛を語るならヴェッキオ橋で
【100】ショーシャンクの空が・・・
【101】ビーハイブ・ヘアの女(ひと)
【102】カセットから流れ出たメロディ
【103】オヤジたちのスタンドバイミー
【104】届かない、君へのラブソング
【105】マージー・ビートに魅せられて
【106】父のギターが残してくれたもの
【107】夜のパリ、それはラヴレターの香り
【108】閉ざされたままのギターケース
【109】雨の日には、グラント・グリーンでも
【110】ボースサイドナウが流れる喫茶店で
【111】恋のリフレイン
【112】ベイビーが流れていた季節
【113】フォロー・ミーに誘われて
【114】それでも、あなたにラヴソングを
【115】想い出のコンサート・チケット
【116】スターダストをあなたと
【117】ナローボートで素敵な恋を!
【118】ライトハウスで出逢った、あなたへ
【119】レモンの木の下で
【120】2度目のチャイルドフッドフレンド
【121】ミニシアターより愛を込めて
【122】あの時YESと言えていたなら
【123】ソリチュードに包まれて
【124】窓辺のロミオ&ジュリエット
【125】フラに恋する君に恋した僕
【126】ミルキーウェイで、さよならを
【127】コイントスで決めた恋
【128】二人の恋はメリーゴーランド
【129】スラッキー・ギターに魅せられて
【130】ソー・ファー・アウェイが流れる街
【131】メッセージノートのある喫茶店
【132】恋のワン・ウェイ・チケット
【133】ベルベッド色の恋
【134】神楽坂ラヴ・ストーリー
【135】すれ違いのスウィート・ハート
【136】リッスン・ツー・ザ・レイディオ
【137】夏のレムナント
【138】ダウンタウンボーイ
【139】中央フリーウェイ
【140】AVALON
【141】フォーカス
【142】Midnight Scarecrow
【143】セシルの週末
【144】街角のペシミスト
【145】ジャコビニ彗星の日
【146】ツバメのように
【147】ダイヤモンドダストが消えぬまに
【148】イチゴ白書をもう一度
【149】ベルベッドイースター


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■レーベル《遠い昔、深夜放送が好きだった人たちへ》間々田陽紀 小説の世界~シリーズ 間々田 陽紀 長編集(原稿用紙300枚~450枚)1作500円

【1】校内放送でビートルズ
【2】府立第14中~青春グラフィティ!
【3】そうだドルフィンへ行こう
【4】夜のグラフィティ
【5】もう一度聴いてみようかホテルカリフォルニア 
【6】今何故、500マイルも離れて
【7】坊っちゃん、フォーエバー
【8】ブローイングインザウィンドでも聴いてごらん
【9】木登り~タイムワープ


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■レーベル《遠い昔、深夜放送が好きだった人たちへ》間々田陽紀 小説の世界~シリーズ 間々田 陽紀 短編集(原稿用紙~50枚)1作100円

【1】夜空と波間の彼方に
【2】深大寺ラヴストーリー 
【3】ダブルレインボーの彼方に
【4】真冬のウインド・チャイム 
【5】ギターケースの中のラヴレター 
【6】横浜ロックンローラー 
【7】遅れて来たフラワーチルドレン 
【8】阿波人形浄瑠璃ラブソディ
【9】真っ赤なマニュキアの指先を見つめた夏
【10】君がいた街角
【11】聴かせてよ、あのリフを!
【12】ワイパーの向こうで消えた女性(ひと)
【13】さよなら、ミュージシャン
【14】ボーカルインストラクターの夢追い人
【15】写譜屋の恋物語
【16】スポットライト・グラフィティ
【17】リペアマン・ブルース
【18】歌えないラヴソング
【19】夢捨て人のハーモニー
【20】君の名前が消えたエンドロール
【21】ユア・シックスティーン
【22】ピアノのある喫茶店
【23】旅人からのリクエスト
【24】君への恋心をアップデート
【25】トラックドライバーの独り言
【26】サリンジャーを手にした君へ
【27】ハイタッチなんて似合わない
【28】君の知らないイエスタデイ
【29】君へ送るハートビート
【30】エルトンからの贈物
【31】君に聴かせたいメロディ
【32】31文字のラヴレター
【33】48時間のランナウェイ
【34】君が遺した風景だから
【35】恋のロングバケーション
【36】私の彼はトラベラー
【37】ミュージシャンからの恋文
【38】さよならグッドメモリー
【39】恋のスターティンググリッド
【40】横浜バイザシー
【41】冷たい雨が好きだから
【42】街角ピアノ物語
【43】キネマのある街
【44】本日限りが好きだから
【45】この曲にはフルートが必要だから
【46】テイク・ミー・アロング
【47】3年越しのデスティニー
【48】あの日の君の肖像画
【49】奇跡のハーモニー
【50】ポートレイトの君は誰なの?
【51】雪降る街でサヨナラを
【52】永遠のチャイルドフッド・フレンド
【53】ミルキーウェイって何色?
【54】フラガールのいた夏
【55】消えないグラフィティ
【56】ドルフィンに連れてって
【57】校内放送なんて聴かないよ
【58】ジュークボックスのある風景
【59】君と僕とのタイムカプセル
【60】ギターケースの中の青春
【61】フォークソングが流れていた季節
【62】サマー・オブ・ラブを知ってる?
【63】グッドバイブレーション
【64】レオンラッセルで聴きたいから
【65】何故君はキャロルキングが好きなの
【66】メッセージボードのある駅
【67】僕が反逆児だって?
【68】街角グラフィティ
【69】すれ違いのダイアリー
【70】永遠の噓だったなんて
【71】ジュークボックスが鳴り続けてる
【72】君が好きだったプレイリスト
【73】深夜放送ラプソディ


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