オリジナル小説 【いつもジャーニーが流れていた】(第3回) | 《遠い昔、深夜放送が好きだった人たちへ贈る小説》間々田陽紀の世界

《遠い昔、深夜放送が好きだった人たちへ贈る小説》間々田陽紀の世界

■好きな音楽、好きな映画、好きなサッカー、好きなモータースポーツなどをちりばめながら、気ままに小説(252作品)・作詞(506作品)を創作しています。ブログも創作も《Evergreen》な風景を描ければと思っています。

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『そう言うことになりますね』
『でも田中さん、まあ色々な手段で本を集めてもすぐにその在庫本管理の問題が出てきますよね。またネットでも何でも構いませんが、販売ルートを工夫してもそこでは激しい顧客の奪い合いが発生しているでしょう。結局、売買価格の引き下げ競争になってしまう。やはりそんな時代だからこそ、対面で話が出来る固定客を大事にしなければならないと私は思います。ただそれが、世代交代などがあったりして上手くいかないのですがね』
川名は最近考え続けていることを田中さんに伝えた。

『結局はそう言うことなのでしょう。その店の身の丈に合ったお客様をしっかりと確保して、その細やかなマーケットを少しでも大きくしていく。それしかないでしょうね』
田中さんが川名の話に同意してくれた所で、会合は終了した。参加した店主の皆さんがたは、昼食会の場に移動したが川名はそのまま店の方に戻って行った。

川名が今の古本屋で働き始めてから、もう20年近く経っていた。同業者の会合に参加しても全く違和感を覚えることなく、川名はその場に身を置くことが出来るようになっていた。35歳の時に、川名は恭子との結婚生活に終止符を打って東京に戻って来た。

東京に戻って来てから5年後、40歳の川名は今の古本屋で働き始めた。東京に戻って来てから古本屋で働き始めるまでの5年間、川名はハイヤーの運転手をしていた。川名がその仕事を選択したのは、仕事の中での待ち時間と言うある意味自分で自由に使える時間があったからだった。

働きながら自由に使える時間が得られる仕事は、当時の川名にとってある意味最適な仕事だった。待ち時間の間、川名は小説を読み耽っていた。夜間は懐中電灯を持ち込んでまで、とにかく活字を追いかけていた。実はこのハイヤーの運転手と言う仕事は、川名が大学卒業する時にも就職先として考えた仕事だった。

大学卒業を前にして、川名はそれまで趣味で続けていた小説を書くと言うことに専念したいと考えた。大学時代に書き上げた小説は、いくつもの出版社の文学賞に応募してみたがすべて予選すら通らないと言う結果だった。

それなのに大学卒業後はその小説を書くと言うことに、専念しようと川名は考えたのだった。だが実際にあれやこれや考え悩んだ挙句、最終的に趣味は趣味として楽しんで行こうと決めた。何しろ大学卒業までの22年間いつも通る通学路を道筋1つ変える事も出来ないくらい、変わった事をすることが苦手だった川名だったので当然の着地点だったかもしれなかった。

平凡で皆が流れていく方向に、無批判に追随し続けていたのが当時の川名だった。今も思えばそんな何処にでもある様な感性しか持ち合わせていなかった川名が創作する小説など、万人が面白くないと決めつけたに違いなかった。だがそれでも川名は、とにかく好きな音楽を聴きながらあれやこれや物語を創作して行く時間が大好きだった。

だから大学卒業後たまたま縁のあった都市銀行で働くようになっても、同期の連中がゴルフや飲み会と動き回っていた時に川名は自宅に引きこもっていた。仕事が終われば、川名は一直線で自宅に戻り好きなレコードやFM放送を聴きながら小説を書いていた。短い恭子との婚姻生活の時でも、その生活スタイルは変わらなかった。

恭子が実家の酒蔵を経営していた父親の急病により実家を引き継ぐことになった時でも、正直恭子と一緒になって真剣に酒蔵経営に関わる事は無かった。今から思えばそんな川名の態度も、恭子にとっては受け入れられない事だったのかもしれなかった。

いずれにしても離婚後に東京に戻った川名は、5年間ハーヤーの仕事をしながら小説を書き続けていた。待ち時間はカーラジオを聴きながら、大学ノートに数多くの物語を書き綴った。ハイヤーの仕事が休みの日、川名は神田神保町の古本屋街にいつも通っていた。

そして行った時には必ず顔を出すようになっていた幾つかの古本屋が出来上がっていた。そしてその古本屋の中で一番よく通ったお店のご主人から店を手伝って欲しいと頼まれたのが、川名がちょうど40歳になっていた時だった。それから気がつくと20年間が経っていて、川名は60歳になっていた。

ハイヤーの仕事中も古本屋の店番中も、川名は大学ノートに暇さえあれば物語を書き綴っていた。最近では文章の推敲が楽なノートパソコンで小説を書くようになっていた。それこそ大学時代から好きで続けていた小説書きだったが、周囲からの評価はさっぱりだった。懸賞小説の予選通過などと言う小さな成功すら、川名は一向に手に入れることさえ出来ないままでいた。


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■レーベル《遠い昔、深夜放送が好きだった人たちへ》間々田陽紀 小説の世界~シリーズ 間々田 陽紀 中編集(原稿用紙90~100枚)1作250円


【1】Tシャツとピンクの万年筆
【2】リバプールの旅人
【3】あなたがネクタイ外したから、私もヒールを脱ぐわ
【4】僕のプレイリストはタイムカプセル
【5】鳴らない風鈴
【6】切り分けられた林檎
【7】キャロルキングを聴きながら
【8】真冬のストローハット
【9】5年目のバレンタインデー
【10】セイントバレンタインデーの奇跡
【12】街角のバレンタインデー
【13】瞳の中のバレンタインデー
【14】バレンタインデー・ラプソディ
【15】ラストチャンス・バレンタインデー
【16】奇跡を呼んだナレーション
【17】コーヒーチケット1冊分の恋
【18】ハッピーエンドまでの君と僕とのセオリー
【19】ブロークンハート・イヴ
【20】グッドミュージックが生まれる街
【21】聖マルタンの夏
【22】ノン・アップデート・メモリーズ
【23】グッドバイ色の街だから
【24】雨の中のオレンジ
【25】君がヒロインになる瞬間(とき)
【26】シャッター音がくれた奇跡
【27】眠れない夜はニルソンを聴きながら
【28】リベンバーミー
【29】フォーマイセルフ&フォーユアセルフ
【30】ジョナサンがいた風景
【31】ファイナル・コンサート
【32】気分はアウトオブデート
【33】それぞれのダイアリー  
【34】あの頃君は駆け抜けて逝った  
【35】ミュージシャンたちの恋物語
【36】サマークリスマス
【37】ジーンズのある風景
【38】ゲバ字の消えた夏
【39】高校3年生のネアンデルタール人
【40】アルバート・ドッグを吹く風
【41】ワーズワースそして教授と私の旅
【42】天窓から眺めるロンドンの街
【43】チェスターの空の下
【44】ウクレレの音が流れる夏
【45】私は夢見るシャンソン人形
【46】いつか観たジョンレノン
【47】あの日聴いた夢のカリフォルニア
【48】懐かしいね、ガントレ!
【49】神楽坂で聴くサウンドオブサイレンス
【50】キャロルキングをお寺で
【51】サウンドトラックはユーミンで
【52】ルート66へに誘われて
【53】俺たちのジュークボックス
【54】キックオフは、これから!
【55】タイムカプセルからビートルズ
【56】2人のランナウェイ
【57】もうラヴソングは唄えない
【58】遅れて来たラヴレター
【59】君にとどけボーントゥーラン
【60】母はクラプトンが大好き
【61】タイムアフタータイムなんて
【62】シャーリーンの唄ですよね
【63】気分はハロー・グッドバイ
【64】クロスロードとオヤジたち
【65】サザンカンフォートを抱えた娘
【66】あなたがトミーで私がジーナ
【67】ロールプレイング・ラヴをあなたと
【68】パンタロンじゃなくベルボトムさ!
【69】俺は根っからのランブリング・マン
【70】タイムタイムタイム~冬の散歩道
【71】俺のロード・ソングは、ウィリン
【72】アメリカ《名前のない馬》から始まった
【73】ツェッペリンに包まれて
【74】ロイ・ブキャナンの流れる家
【75】フォークソングが消えた日
【76】終わらないメロディ
【77】俺もお前もストレンジャー
【78】ジョニ・ミッチェルで聴きたいね
【79】今さら、ハートに火をつけて
【80】アフリカを聴きながら
【81】プロコル・ハルムが唄っている
【82】ゼーガーとエバンズが教えてくれた
【83】ビタースウィート・サンバを取り戻せ
【84】ティアーズ・イン・ヘヴンなんて
【85】俺たちはフール・オン・ザ・ヒル
【86】このリフに魅せられて
【87】さらば黄昏のレンガ路よ
【88】心にハングリー・ハートを
【89】いつもジャーニーが流れていた
【90】ジャニスと踊ろう
【91】俺は今でも25or6to4
【92】君に捧げるララバイ
【93】ジャニスが語りかけた夜
【94】キリング・ミー・ソフトリーをあなたに
【95】恋をするならシェイクスピアで
【96】ゲーテが教えてくれた愛のシーズン
【97】僕と君だけのファーザー・クリスマス
【98】恋する気分は、ヴェルレーヌから
【99】愛を語るならヴェッキオ橋で
【100】ショーシャンクの空が・・・
【101】ビーハイブ・ヘアの女(ひと)
【102】カセットから流れ出たメロディ
【103】オヤジたちのスタンドバイミー
【104】届かない、君へのラブソング
【105】マージー・ビートに魅せられて
【106】父のギターが残してくれたもの
【107】夜のパリ、それはラヴレターの香り
【108】閉ざされたままのギターケース
【109】雨の日には、グラント・グリーンでも
【110】ボースサイドナウが流れる喫茶店で
【111】恋のリフレイン
【112】ベイビーが流れていた季節
【113】フォロー・ミーに誘われて
【114】それでも、あなたにラヴソングを
【115】想い出のコンサート・チケット
【116】スターダストをあなたと
【117】ナローボートで素敵な恋を!
【118】ライトハウスで出逢った、あなたへ
【119】レモンの木の下で
【120】2度目のチャイルドフッドフレンド
【121】ミニシアターより愛を込めて
【122】あの時YESと言えていたなら
【123】ソリチュードに包まれて
【124】窓辺のロミオ&ジュリエット
【125】フラに恋する君に恋した僕
【126】ミルキーウェイで、さよならを
【127】コイントスで決めた恋
【128】二人の恋はメリーゴーランド
【129】スラッキー・ギターに魅せられて
【130】ソー・ファー・アウェイが流れる街
【131】メッセージノートのある喫茶店
【132】恋のワン・ウェイ・チケット
【133】ベルベッド色の恋
【134】神楽坂ラヴ・ストーリー
【135】すれ違いのスウィート・ハート
【136】リッスン・ツー・ザ・レイディオ
【137】夏のレムナント
【138】ダウンタウンボーイ
【139】中央フリーウェイ
【140】AVALON
【141】フォーカス
【142】Midnight Scarecrow
【143】セシルの週末
【144】街角のペシミスト
【145】ジャコビニ彗星の日
【146】ツバメのように
【147】ダイヤモンドダストが消えぬまに
【148】イチゴ白書をもう一度
【149】ベルベッドイースター


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■レーベル《遠い昔、深夜放送が好きだった人たちへ》間々田陽紀 小説の世界~シリーズ 間々田 陽紀 長編集(原稿用紙300枚~450枚)1作500円

【1】校内放送でビートルズ
【2】府立第14中~青春グラフィティ!
【3】そうだドルフィンへ行こう
【4】夜のグラフィティ
【5】もう一度聴いてみようかホテルカリフォルニア 
【6】今何故、500マイルも離れて
【7】坊っちゃん、フォーエバー
【8】ブローイングインザウィンドでも聴いてごらん
【9】木登り~タイムワープ


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■レーベル《遠い昔、深夜放送が好きだった人たちへ》間々田陽紀 小説の世界~シリーズ 間々田 陽紀 短編集(原稿用紙~50枚)1作100円

【1】夜空と波間の彼方に
【2】深大寺ラヴストーリー 
【3】ダブルレインボーの彼方に
【4】真冬のウインド・チャイム 
【5】ギターケースの中のラヴレター 
【6】横浜ロックンローラー 
【7】遅れて来たフラワーチルドレン 
【8】阿波人形浄瑠璃ラブソディ
【9】真っ赤なマニュキアの指先を見つめた夏
【10】君がいた街角
【11】聴かせてよ、あのリフを!
【12】ワイパーの向こうで消えた女性(ひと)
【13】さよなら、ミュージシャン
【14】ボーカルインストラクターの夢追い人
【15】写譜屋の恋物語
【16】スポットライト・グラフィティ
【17】リペアマン・ブルース
【18】歌えないラヴソング
【19】夢捨て人のハーモニー
【20】君の名前が消えたエンドロール
【21】ユア・シックスティーン
【22】ピアノのある喫茶店
【23】旅人からのリクエスト
【24】君への恋心をアップデート
【25】トラックドライバーの独り言
【26】サリンジャーを手にした君へ
【27】ハイタッチなんて似合わない
【28】君の知らないイエスタデイ
【29】君へ送るハートビート
【30】エルトンからの贈物
【31】君に聴かせたいメロディ
【32】31文字のラヴレター
【33】48時間のランナウェイ
【34】君が遺した風景だから
【35】恋のロングバケーション
【36】私の彼はトラベラー
【37】ミュージシャンからの恋文
【38】さよならグッドメモリー
【39】恋のスターティンググリッド
【40】横浜バイザシー
【41】冷たい雨が好きだから
【42】街角ピアノ物語
【43】キネマのある街
【44】本日限りが好きだから
【45】この曲にはフルートが必要だから
【46】テイク・ミー・アロング
【47】3年越しのデスティニー
【48】あの日の君の肖像画
【49】奇跡のハーモニー
【50】ポートレイトの君は誰なの?
【51】雪降る街でサヨナラを
【52】永遠のチャイルドフッド・フレンド
【53】ミルキーウェイって何色?
【54】フラガールのいた夏
【55】消えないグラフィティ
【56】ドルフィンに連れてって
【57】校内放送なんて聴かないよ
【58】ジュークボックスのある風景
【59】君と僕とのタイムカプセル
【60】ギターケースの中の青春
【61】フォークソングが流れていた季節
【62】サマー・オブ・ラブを知ってる?
【63】グッドバイブレーション
【64】レオンラッセルで聴きたいから
【65】何故君はキャロルキングが好きなの
【66】メッセージボードのある駅
【67】僕が反逆児だって?
【68】街角グラフィティ
【69】すれ違いのダイアリー
【70】永遠の噓だったなんて
【71】ジュークボックスが鳴り続けてる
【72】君が好きだったプレイリスト
【73】深夜放送ラプソディ


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