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※優し過ぎた木葉への想いに豊樹は、いまだに振り回されていた。あの夜木葉の20歳の誕生日に、ふと立ち寄ったカフェバーで2人は初めて本気でお酒と向き合った。勿論それまでにも真似事くらいのお酒を口にすることがあった2人が、少しだけ背伸びをして次から次へとビールを口に運んだ。
何処かで勢いに任せて普段とは違ったことをしなければとつまらない衝動にかられた2人は、シックなカフェバーにお似合いの古いジュークボックスから流れ出ているオールディーズナンバーに合わせて不器用で不自然な動きのダンスを、互いの身体を寄せ合いながら踊り続けた。
今から半年前の忘れられない風景だった。その夜から豊樹からの連絡に木葉が全く反応することがなくなった。電話もメールも所在無げに虚しい反応のない世界に入り込んでいた。一体あの夜、2人に何があったと言うのだろう。いや豊樹が木葉に何をしたと言うのだろう。そんなことを考え続けている豊樹の頭の中では、あの日以来ジュークボックスが鳴り続けていたのだった。
※
豊樹が木葉と出会ったのは1年前のコンサートスタッフのアルバイト先だった。偶然オフィシャルグッズの販売を担当することになった2人は、互いに同じ20歳であるという事だけで何故かしら運命さえ感じているようだった。もっとも、それは豊樹だけのことだったのかもしれなかった・・・。