オリジナル小説 【ジャニスが語りかけた夜】(第1回) | 《遠い昔、深夜放送が好きだった人たちへ贈る小説》間々田陽紀の世界

《遠い昔、深夜放送が好きだった人たちへ贈る小説》間々田陽紀の世界

■好きな音楽、好きな映画、好きなサッカー、好きなモータースポーツなどをちりばめながら、気ままに小説(255作品)・作詞(506作品)を創作しています。ブログも創作も《Evergreen》な風景を描ければと思っています。

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恭一は新年度に入ってから休日出社が続いていた。6月末の株主総会が終わるまでは、この状況は変わらないだろう。恭一が今の総務部に配属になったのは昨年からだった。株主総会対応は今年で2回目になる。恭一は大学卒業後新入社員として配属になった福岡支社を1年で引き上げられた。そして配属になったのが今の総務部だった。

総務部に若い総合職が配属されることなど、前例のない事だった。恭一は3年前に、大学在学中にたった1社だけ回った会社訪問で決まった今の生命保険会社に入社していた。恭一が就職活動に不熱心だったのは、最後の最後まで大学時代に仲間たちと続けていたバンド活動から脱退するのを躊躇っていたからだった。ライブハウスで出会った仲間3人と組んでいたバンドに、恭一はリードギター担当として参加していた。

他のメンバーたち3人は、恭一とバンド活動を継続して行くことを強く望んだ。勿論恭一は彼等の期待に応えられない自分自身を責めたこともあった。しかし最終的に恭一は自分の音楽に関する能力に、どうしても自信が持てなかった。恭一レベルのテクニックなどプロとしてやっていくには不十分であることを、恭一自身が一番よく分かっていた。だから音楽はあくまでも趣味として楽しんで行くことに恭一は決めた。

そんな中途半端な気持ちで生命保険会社に入社した恭一は、何となく普通の新入社員とは違っていたようだった。何故なら配属された福岡支社の先輩たちが、折に触れて恭一にそんな話を投げ掛けていたからだった。ところがそんな面倒見のいい先輩たちに対して、福岡支社長からのパワハラがとにかく凄かったのだ。

恭一が先輩たちに支社長の言動は立派なパワハラだと話していたが、先輩たちはそれを上司による指導の1つだと言い張った。そんなモヤモヤした状況が続いてある日、恭一はいよいよ支社長によるパワハラに我慢がならなくなり、支社長に明らかなパワハラなので止めて欲しいと申し出た。残念ながら恭一が申出した後も、支社長からの先輩たちへのパワハラは止まらなかった。

恭一が入社して1年目の暮れのボーナスの金額が、同期入社の連中より低かった。先輩たちは恭一に新入社員の間は、よほどのことが無い限りボーナス評価でマイナス査定されることはないと話してくれた。その余程のことが恭一の身に降りかかってきた。年が明けた2月に、恭一は次長から呼び出されて総務部への異動の内示を受けた。

入社2年目に入る時期に異動したのは、同期の中で恭一1人だけだった。総務部に配属になった時に、定年間際の先輩社員から恭一は1年目でマイナス評価されるようでは転職を考えた方がいいぞと言われた。勿論余計なお世話だと恭一はそんな話は無視した。

総務部に来て2年目そして業務としては2回目の株主総会の準備チームの1員として、毎日恭一はその業務遂行に忙殺されていた。例年何事もなく無事終わる事が最大の目的である株主総会で、今年はちょっとしたハプニングが起こった。ほとんど総会会場から質問者が出ることなどなかったのに今年は質疑応答の場で、ある株主が質問をしたのだった。

去年1年間会社は個人情報漏洩問題で多くの課題を背負い込んでいた。そんな個人情報の取り扱いで大きな苦情に発展していた京都の株主が、総会で発言を求めたのだった。会場の役員ひな壇の背後に設営されていた質疑応答対応チームに、緊張感が一気に広がった。

個人情報管理と言うことで、システム担当役員か総合リスク担当役員か、或いは事務管理担当役員か、質問に対する回答を誰が担当するかで、恭一の周囲は殺気立っていた。システム部の連中はシステム上の問題ではないと回答対応をしようとしない。事務管理部の連中も、帳票管理の問題が特定されていないと回答対応をしようとしない。

総合リスク管理部の連中も個人情報問題はそもそも担当外だと言って回答対応をしようとしない。発言者に対しては現地の支社長が長期間に渡って対応していたが、解決までには至っていなかった。

発言者は《個人情報を漏洩させて契約者に精神的な負担を掛けたことに対して、会社としてどんな対応を検討するのか?》と質問してきた。総務部長と総務課長は、あちこちのテーブルを駆け回り、最終的に総合リスク管理部担当役員から回答するように手配した。模擬の質疑応答で用意していた回答内容を、すぐに当該役員のパソコン画面に表示した。

中途半端な回答内容だったので、質問者はなかなか納得しなかった。後日支社からだけでなく本社から直接訪問の上対応させて頂くと言うことで、何とかその場を収めることが出来た。


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■レーベル《遠い昔、深夜放送が好きだった人たちへ》間々田陽紀 小説の世界~シリーズ 間々田 陽紀 中編集(原稿用紙90~100枚)1作250円


【1】Tシャツとピンクの万年筆
【2】リバプールの旅人
【3】あなたがネクタイ外したから、私もヒールを脱ぐわ
【4】僕のプレイリストはタイムカプセル
【5】鳴らない風鈴
【6】切り分けられた林檎
【7】キャロルキングを聴きながら
【8】真冬のストローハット
【9】5年目のバレンタインデー
【10】セイントバレンタインデーの奇跡
【12】街角のバレンタインデー
【13】瞳の中のバレンタインデー
【14】バレンタインデー・ラプソディ
【15】ラストチャンス・バレンタインデー
【16】奇跡を呼んだナレーション
【17】コーヒーチケット1冊分の恋
【18】ハッピーエンドまでの君と僕とのセオリー
【19】ブロークンハート・イヴ
【20】グッドミュージックが生まれる街
【21】聖マルタンの夏
【22】ノン・アップデート・メモリーズ
【23】グッドバイ色の街だから
【24】雨の中のオレンジ
【25】君がヒロインになる瞬間(とき)
【26】シャッター音がくれた奇跡
【27】眠れない夜はニルソンを聴きながら
【28】リベンバーミー
【29】フォーマイセルフ&フォーユアセルフ
【30】ジョナサンがいた風景
【31】ファイナル・コンサート
【32】気分はアウトオブデート
【33】それぞれのダイアリー  
【34】あの頃君は駆け抜けて逝った  
【35】ミュージシャンたちの恋物語
【36】サマークリスマス
【37】ジーンズのある風景
【38】ゲバ字の消えた夏
【39】高校3年生のネアンデルタール人
【40】アルバート・ドッグを吹く風
【41】ワーズワースそして教授と私の旅
【42】天窓から眺めるロンドンの街
【43】チェスターの空の下
【44】ウクレレの音が流れる夏
【45】私は夢見るシャンソン人形
【46】いつか観たジョンレノン
【47】あの日聴いた夢のカリフォルニア
【48】懐かしいね、ガントレ!
【49】神楽坂で聴くサウンドオブサイレンス
【50】キャロルキングをお寺で
【51】サウンドトラックはユーミンで
【52】ルート66へに誘われて
【53】俺たちのジュークボックス
【54】キックオフは、これから!
【55】タイムカプセルからビートルズ
【56】2人のランナウェイ
【57】もうラヴソングは唄えない
【58】遅れて来たラヴレター
【59】君にとどけボーントゥーラン
【60】母はクラプトンが大好き
【61】タイムアフタータイムなんて
【62】シャーリーンの唄ですよね
【63】気分はハロー・グッドバイ
【64】クロスロードとオヤジたち
【65】サザンカンフォートを抱えた娘
【66】あなたがトミーで私がジーナ
【67】ロールプレイング・ラヴをあなたと
【68】パンタロンじゃなくベルボトムさ!
【69】俺は根っからのランブリング・マン
【70】タイムタイムタイム~冬の散歩道
【71】俺のロード・ソングは、ウィリン
【72】アメリカ《名前のない馬》から始まった
【73】ツェッペリンに包まれて
【74】ロイ・ブキャナンの流れる家
【75】フォークソングが消えた日
【76】終わらないメロディ
【77】俺もお前もストレンジャー
【78】ジョニ・ミッチェルで聴きたいね
【79】今さら、ハートに火をつけて
【80】アフリカを聴きながら
【81】プロコル・ハルムが唄っている
【82】ゼーガーとエバンズが教えてくれた
【83】ビタースウィート・サンバを取り戻せ
【84】ティアーズ・イン・ヘヴンなんて
【85】俺たちはフール・オン・ザ・ヒル
【86】このリフに魅せられて
【87】さらば黄昏のレンガ路よ
【88】心にハングリー・ハートを
【89】いつもジャーニーが流れていた
【90】ジャニスと踊ろう
【91】俺は今でも25or6to4
【92】君に捧げるララバイ
【93】ジャニスが語りかけた夜
【94】キリング・ミー・ソフトリーをあなたに
【95】恋をするならシェイクスピアで
【96】ゲーテが教えてくれた愛のシーズン
【97】僕と君だけのファーザー・クリスマス
【98】恋する気分は、ヴェルレーヌから
【99】愛を語るならヴェッキオ橋で
【100】ショーシャンクの空が・・・
【101】ビーハイブ・ヘアの女(ひと)
【102】カセットから流れ出たメロディ
【103】オヤジたちのスタンドバイミー
【104】届かない、君へのラブソング
【105】マージー・ビートに魅せられて
【106】父のギターが残してくれたもの
【107】夜のパリ、それはラヴレターの香り
【108】閉ざされたままのギターケース
【109】雨の日には、グラント・グリーンでも
【110】ボースサイドナウが流れる喫茶店で
【111】恋のリフレイン
【112】ベイビーが流れていた季節
【113】フォロー・ミーに誘われて
【114】それでも、あなたにラヴソングを
【115】想い出のコンサート・チケット
【116】スターダストをあなたと
【117】ナローボートで素敵な恋を!
【118】ライトハウスで出逢った、あなたへ
【119】レモンの木の下で
【120】2度目のチャイルドフッドフレンド
【121】ミニシアターより愛を込めて
【122】あの時YESと言えていたなら
【123】ソリチュードに包まれて
【124】窓辺のロミオ&ジュリエット
【125】フラに恋する君に恋した僕
【126】ミルキーウェイで、さよならを
【127】コイントスで決めた恋
【128】二人の恋はメリーゴーランド
【129】スラッキー・ギターに魅せられて
【130】ソー・ファー・アウェイが流れる街
【131】メッセージノートのある喫茶店
【132】恋のワン・ウェイ・チケット
【133】ベルベッド色の恋
【134】神楽坂ラヴ・ストーリー
【135】すれ違いのスウィート・ハート
【136】リッスン・ツー・ザ・レイディオ
【137】夏のレムナント
【138】ダウンタウンボーイ
【139】中央フリーウェイ
【140】AVALON
【141】フォーカス
【142】Midnight Scarecrow
【143】セシルの週末
【144】街角のペシミスト
【145】ジャコビニ彗星の日
【146】ツバメのように
【147】ダイヤモンドダストが消えぬまに
【148】イチゴ白書をもう一度
【149】ベルベッドイースター


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■レーベル《遠い昔、深夜放送が好きだった人たちへ》間々田陽紀 小説の世界~シリーズ 間々田 陽紀 長編集(原稿用紙300枚~450枚)1作500円

【1】校内放送でビートルズ
【2】府立第14中~青春グラフィティ!
【3】そうだドルフィンへ行こう
【4】夜のグラフィティ
【5】もう一度聴いてみようかホテルカリフォルニア 
【6】今何故、500マイルも離れて
【7】坊っちゃん、フォーエバー
【8】ブローイングインザウィンドでも聴いてごらん
【9】木登り~タイムワープ


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■レーベル《遠い昔、深夜放送が好きだった人たちへ》間々田陽紀 小説の世界~シリーズ 間々田 陽紀 短編集(原稿用紙~50枚)1作100円

【1】夜空と波間の彼方に
【2】深大寺ラヴストーリー 
【3】ダブルレインボーの彼方に
【4】真冬のウインド・チャイム 
【5】ギターケースの中のラヴレター 
【6】横浜ロックンローラー 
【7】遅れて来たフラワーチルドレン 
【8】阿波人形浄瑠璃ラブソディ
【9】真っ赤なマニュキアの指先を見つめた夏
【10】君がいた街角
【11】聴かせてよ、あのリフを!
【12】ワイパーの向こうで消えた女性(ひと)
【13】さよなら、ミュージシャン
【14】ボーカルインストラクターの夢追い人
【15】写譜屋の恋物語
【16】スポットライト・グラフィティ
【17】リペアマン・ブルース
【18】歌えないラヴソング
【19】夢捨て人のハーモニー
【20】君の名前が消えたエンドロール
【21】ユア・シックスティーン
【22】ピアノのある喫茶店
【23】旅人からのリクエスト
【24】君への恋心をアップデート
【25】トラックドライバーの独り言
【26】サリンジャーを手にした君へ
【27】ハイタッチなんて似合わない
【28】君の知らないイエスタデイ
【29】君へ送るハートビート
【30】エルトンからの贈物
【31】君に聴かせたいメロディ
【32】31文字のラヴレター
【33】48時間のランナウェイ
【34】君が遺した風景だから
【35】恋のロングバケーション
【36】私の彼はトラベラー
【37】ミュージシャンからの恋文
【38】さよならグッドメモリー
【39】恋のスターティンググリッド
【40】横浜バイザシー
【41】冷たい雨が好きだから
【42】街角ピアノ物語
【43】キネマのある街
【44】本日限りが好きだから
【45】この曲にはフルートが必要だから
【46】テイク・ミー・アロング
【47】3年越しのデスティニー
【48】あの日の君の肖像画
【49】奇跡のハーモニー
【50】ポートレイトの君は誰なの?
【51】雪降る街でサヨナラを
【52】永遠のチャイルドフッド・フレンド
【53】ミルキーウェイって何色?
【54】フラガールのいた夏
【55】消えないグラフィティ
【56】ドルフィンに連れてって
【57】校内放送なんて聴かないよ


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