家族の在り方は家族の数だけある。

 

家庭内暴力、リストラ、妻の恋、娘の留学、どこの家庭にも潜んでいるかもしれないな。


村上龍作  『最後の家族』



息子の家庭内暴力に悩む家族だが、息子自身も悩んでいる。

ある日、向かいの家のDVを目撃し、DVの心理を学んだりするのだが、己の内なる怒りは収まらない。

引きこもりの息子が、外に向かう気持ちになったのは、向かいの奥さんを助けようと画策するため。

意を決して法律家や福祉の人に会う息子。

村上龍は単に家族のもつれを小説にしたのではないなと確信した。

息子が助けたいのは自分自身だっのではないか。

人を救いたい気持ちの隣には支配したいという欲求がある。自立は自律でもある。

自立こそが彼自身の再生だ。

静かに変化する家族。

 

物語はそれぞれが自立することで結ばれていてほっとした。

 

村上龍の作品ってもっとスピード感がある気がしていた。

 

でもこれは緊迫した出来事なのにどこか落ち着いて読めた。

 

良い作品だと思います。