参議院議事録からの抜粋

○竹谷とし子君 
 続いて、子供の貧困対策について伺います。
 相対的な子供の貧困率は一六%を超え、六人に一人が貧困状態にあります。特に高いのは一人親家庭の貧困率で、五割を超えています。
 資料三を御覧ください。一人親家庭の就業率は一般世帯に比べて高いです。母子世帯は八割、父子世帯は九割が就業しながら頑張って一人で子供を育てている状況です。しかし、収入は平均より低く、特に表にあるように母子世帯は平均百八十一万円と、大変厳しい経済環境で生活をやりくりされているということが分かります。
 子供の貧困対策として低所得の一人親家庭への支援が欠かせないと思います。総理のお考えを伺います。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 子供たちの未来が家庭の経済状況によって左右されてはならないと、このように思いますし、望めば全ての子供たちが大学や専修学校に進学できるような状況をつくっていきたいと思います。そして、確かに、今委員が御指摘になったように、一人親家庭、経済的に厳しい状況であるということは、そこのお子さんたちも将来にわたって厳しいスタートになっていく可能性があるということではないかと思います。
 このため、昨年十二月に取りまとめたひとり親家庭・多子世帯等自立支援応援プロジェクトに基づき、一人親世帯などを支援する児童扶養手当の第二子以降への加算額の倍増、そして、就職に有利な資格の取得を促進する高等職業訓練促進給付金の充実と、その支給期間の二年から三年への延長、そして求職者支援訓練を受ける際の託児サービスの提供、また、一人親家庭特有の課題にワンストップで対応する自治体の相談窓口の整備、どこに、いろんなところに相談に行かなければいけないということではなくて、ワンストップで様々なそういう悩みに応じることができるようにしております。また、一人親家庭の子供が安心して過ごせる地域における居場所づくりなどに取り組んでおります。
 今後とも、一人親家庭等の自立を支援をし、そして子供の貧困対策に全力で取り組んでいきたいと思います。
○竹谷とし子君 是非よろしくお願いいたします。
 自公政権で児童扶養手当の第二子以降の増額など給付を今増やしてきているところであると思いますが、税制面でも私は配慮が必要であるというふうに思っております。
 資料四を御覧ください。一人親になった理由、厚生労働省の資料でございますが、二十五年間で離婚が二〇ポイント増加、また未婚の母も増加をしています。未婚の母だけではなくて、未婚の父という家族構成もあります。
 税金について伺いたいと思います。
 一人親世帯の多くが収入が限られている中で、少しでも税金が安くなる所得控除、これは大変重要な役割を果たしています。一人親家庭の所得控除については、特定寡婦控除、これも重要です。これがある場合とない場合があります。結婚の経験が過去にある場合には、本人の基礎控除のほかに特定寡婦控除というものがあります。所得税と住民税が低くなる、抑えられるという役割を持っています。しかし、これは結婚したことがない未婚の母子、父子の場合にはありません。税制上の格差があります。
 二百万円、例えば二百万円の勤労収入がある一人親世帯でどうか、寡婦控除適用の有無による所得税、住民税の差は幾らになるかということを、まず財務省、そして総務省に伺いたいと思います。
○政府参考人(飯塚厚君) お答え申し上げます。
 御質問の給与収入二百万円の一人親家庭のケースで、一定の前提の下で復興特別所得税を含む所得税等を計算いたしますと、三十五万円の寡婦控除の適用を受ける場合で九千六百円、適用を受けない場合で二万七千五百円となりまして、その差は一万七千九百円となるところでございます。
○政府参考人(林崎理君) お答え申し上げます。
 給与収入二百万円で扶養親族である十六歳未満の子供が一人いる一人親家庭の場合、個人住民税の税負担でございますけれども、一つ、死別又は離婚の場合は寡婦に該当する方の合計所得金額が百二十五万円以下となる、こういう制度が住民税にございまして、非課税ということになります。それから、未婚の場合は六万一千五百円ということになりまして、その差額は六万一千五百円でございます。
○竹谷とし子君 資料の五を御覧ください。今、財務省と総務省に、年収二百万円の場合に所得税と住民税が一人親家庭で十六歳未満の子一人がいるケースで幾らになるかということを伺いました。
 所得税では、死別、離婚の寡婦控除がある場合には九千六百円、そして未婚、結婚したことがない、寡婦控除が受けられない場合には二万七千五百円、二百万円の収入で二万七千五百円の所得税。さらには、住民税で大きく差が開くことになります。寡婦控除があればゼロ円ですが、未婚の場合、寡婦控除がないので六万一千五百円。さらには、社会保険料も引かれます。そして、保育料あるいは公営住宅の賃料などが住民税の大きさに比例をして決められる自治体が多くあります。そこでも差が出てきます。例えば、ある自治体では保育料が寡婦控除を受けている方はゼロ円で、未婚の場合は同じ所得であっても四万六千八百円というふうに。それらを足すと年間十二万六千二百円、ほかの行政サービスも受けていることを考えると差はもっと大きくなることが考えられます。
 この問題は自治体の現場では広く認識され始めています。厚労省の直近の調査では、二割以上の自治体で未婚の一人親家庭でも寡婦控除があるとみなして所得を計算し、保育料や公営住宅の賃料などを算定して、差が生まれないように何らかの対応を取っているということが分かっています。
 現在、政府税制調査会で所得税の税制改正について検討がなされていると思います。総理に伺います。今後の検討の中で忘れてはならない、むしろ最も配慮すべき立場の家庭は、生活が苦しい中で一生懸命に働いて子供を育てている低所得の家庭、特に一人親家庭であると思います。今、未婚の母子、父子家庭が非常に厳しい状況に税制面でもあるということを見ていただきました。中でも、子供の貧困対策として、例えば未婚家庭の所得税の控除を大きくするとか、寡婦控除と同等の控除を適用するとか、さらには低所得の子育て世帯全体に所得税の控除をもっと大きくするなど、子育てに重点を置いた税制面での具体的な検討が必要だと思います。総理のお考え伺いたいと思います。
○国務大臣(麻生太郎君) これは竹谷先生もう御存じのとおりですが、寡婦控除は、これは夫との死別とか離婚等々、家族の生計を支えていかなければならないという人に対して税制上の配慮を行うものでありますから、まあ簡単に言えば未婚の母には適用されていないと、まずこれが第一なんだと思いますが。
 今お尋ねの寡婦控除につきましては、これは今年ですから平成二十八年度の与党の税制改正大綱において、これは家族の在り方にも関わる事柄なので、今問題になっております配偶者控除とか扶養控除との関係にも留意をしながら、これは夫との死別、離婚等々の事情に基づいて配慮ということなんでしょうが、制度の趣旨というのも踏まえながら、所得税のいろいろな控除の在り方等々につきましては、これは議論の中で検討を行おうということにされておりますので、与党における検討も注視しつつ、これは今年度末にかけてということになろうと思いますが、必要な検討を行ってまいりたいと考えております。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 政府の立場として今財務大臣からお答えをさせていただきましたが、与党で今検討しておられますので、その検討を政府としてはしっかりと注視をしながら必要な検討を行っていきたいと、こう考えております。
○竹谷とし子君 子供という立場からすると、親がどういう事情で一人で育ててくれているかというのは関係がないと思います。子供の貧困対策という視点で、是非与党の中でもしっかりと議論をして考えていきたいと思います。