参議院重要事項調査団は、デンマーク王国のメディコンバレーアライアンス事務局と、ドイツ連邦のハンブルク州にある航空応用研究センターを視察しました。

 

いずれも、その地域で強みのある産業に関連する企業や研究機関が集まり、相互に協力してイノベーションを生み出し、企業収益を上げ、地域で良質の雇用をつくるための取り組みですが、共通しているのは、イノベーションに必要なネットワークづくりを何よりも重視していることでした。

 

メディコンバレーとは、アメリカのシリコンバレーを真似して名付けられたものですが、デンマークの首都コペンハーゲンと海峡を挟んで橋でつながっているスウェーデン南部に広がる、バイオテクノロジー・医薬・医療関連企業や大学など研究機関、医療機関の集積地です。

 

メディコンバレー・アライアンスは、大学、病院、企業、サイエンスパーク、投資ファンド、地方自治体等255の団体が参加するメディコンバレー内の非営利ネットワークで、主にイベントやセミナーの場を提供し、相互のシナジー効果を生み出し、メンバー企業の成長に結びつけることを目的としています。

 

調査団が訪問したメディコンバレー・アライアンス事務局は、特別な会議場や研究施設などを持っているわけではなく、メンバーの役に立つ情報を収集・分析し、セミナーや広報、投資誘致活動を行うことに特化しており、わずか5名で運営しているということでした。近々、日本の製薬メーカーも、この地域に進出するようです。

 

感心したことは、事務局の成果は参加企業全体の収益向上であり、参加団体がアライアンスに年会費を払って加入し続ける価値を提供するという明確な自己評価基準があることでした。現在、事務局は公的支援なく、参加団体の年会費のみで成り立っているということです。

 

ネットワークを作ることで価値を生み出す方法や、コーディネートのうまさは、日本が見習うべき点だと感じました。

 

実際に、メディコンバレー・アライアンスのやり方を、日本の地方都市でも参考にしているところがあります。福島県の会津若松市で、ICT分野に強い会津大学を中心にしたデータバレー構想を進めています。

 

 

一方で、メディコンバレー・アライアンスと似たような形で、航空産業に特化した企業や研究機関などのネットワークでイノベーションを生み出し、企業収益を向上させるための取組が、ドイツのハンブルク応用航空研究センターにありました。こちらは、ネットワークづくりに加えて、大きな体育館のような場所に試作ができる研究センターも備えています。

 

(ハンブルク応用航空研究センターパンフレットより)

 

しかし、やはり、一番重要視されていることは、イノベーションを生み出すために、参加団体内外のコミュニケーションを促進するネットワーク作りです。そのための場を作り、頻繁にイベントも開催しているそうです。

 

前のブログにも書きましたが、このセンター施設見学で真っ先に案内されたのは、研究者などが集まるカフェやお洒落な会議スペースです。なぜカフェ!?と、驚きましたが、カフェに休憩にきて一緒になった人と話し、情報交換したりすることで、協力できるきっかけやイノベーションの発想が生み出されるのだと。だから一つの大きなテーブルにして誰かと話さざるを得ない構造にしている、ということでした。

 

(ハンブルク応用航空研究センターパンフレットより)

 

このセンターには、他者との協働でイノベーションを生み出すため、エアバスなど大企業だけでなく、中小企業、スタートアップ企業も参加でき、上下関係なく、パートナーとして話ができる環境を重視していました。

 

大企業と中小企業は、決して、王様と奴隷のような関係ではありません。

 

もともと、製造業に強いドイツの中小企業は、イノベーション精神が強く、競争力の高い製品開発に長け、その結果、大企業にも勝る高い利益率を実現しています。伝聞ですが、ドイツの企業収益の8割以上を中小企業が生み出しているそうです。

 

 

イノベーションを創出するため他者とのネットワークをつくることが大変重視されていることがよくわかりました。

それゆえ、欧州では、ネットワーク作りのための会議が、様々な場面で盛んに行われているようです。

 

調査団は、欧州で活躍する日本企業の経営者らから話を伺いました。現地企業との合弁会社を設立したり、新しいビジネスチャンスにアンテナをはり、協力関係のきっかけをつくるため、ネットワーク作りは重視されています。

 

ラウンドテーブルと言って、たとえば、一時間毎に、テーマを決めて、それに関心をもつ、知らない人同士がテーブルに集まり、ワークショップを行うことで相互に知り合っていく、というような形のイベントがよく行われているようです。

 

日本でも最近は、ワークショップ形式の研修を目にするようになってきました。教える側、運営する側にちょっとしたスキルも必要ですが、取り入れていくと効果が大きいと思います。

 

余談ですが、公明党の香川県女性局がこのような、ワークショップ形式で女性政策に関するフォーラムを開催したことがありましたが、具体的に成果が生み出されて、非常に良かったのを思い出しました。

 

(続く)