竹谷とし子です。

 

北海道の先住民族であるアイヌの歴史・文化を学ぶため、旭川博物館と、白老(しらおい)町のポロトコタンを訪問しました。白老町には2020年4月、国立博物館が誕生する予定で、先日の公明党北海道開発振興委員会で、政府より来年度予算案を聴取しました。

 

白老町ポロトコタン

 

幸い台風15号がそれて、雨の予報が覆り、快晴のもとで訪れた、ポロト湖畔。アイヌ民族が四季折々の自然と共存し、豊かに暮らした事が想像されます。

 

 

 

 

 

 

 

家を意味するアイヌ語の「チセ」の中で、アイヌ民族の家や文化の説明を約15分位伺い、歌、音楽、イオマンテの儀式の踊りを見学しました。海外の方もいらっしゃいましたが、反応を拝見していると、歌や踊りなどの文化芸術は、言葉の壁を超えると実感しました。

 



漆塗りの器は、和人との交易で鮭や熊の皮と交換して得られたもので、これらが沢山ある家は漁や狩りがうまいということの証になり、周囲から尊敬されたそうです。

 

 

素敵な模様には、家紋など意味があるようです。それらも貴重な文化資産です。

 

 

夏から秋にかけてとれた鮭は、外で寒干しされた後、屋内で燻製されて保存食にされていたそうです。天井も煙でいぶされて雨漏りが防止され、建物の保存性を高めていたと。

 

 

アイヌの重要儀礼である「イオマンテ」は、殺したヒグマなど動物の魂「カムイ」を、神々の世界に送りかえすお祭りでした。

 

ポロトコタンでは、熊が飼われており、見学できます。また、熊にクッキーのような餌を、写真手前の筒から入れて食べさせる体験もできました。熊は上手に、餌を口でキャッチして食べると、手を出して「もっとちょうだい」というような仕草をしました。北海道の熊は大変危険な動物ですが、オリに入っているので大丈夫です。

※外で会う熊には、彼・彼女たちのためにも、餌をあげないで下さいね。

 

 

 

 

 

江戸末期から明治にかけて探検家、三重県出身の松浦武四郎氏は、北海道の名付け親ともいわれる人ですが、アイヌの人々との共生を目指して行動した人として尊敬されています。

 

 

 

最寄りのJR白老町駅とポロトコタンは1km弱です。迷いながら歩いて、20分位でした。

白老町駅までは、札幌から電車で約1時間で、新千歳空港からは約30分ほど。

 

 

 

たまに特急が止まります。JR北海道の路線存続は、北海道の暮らしと観光振興のため、重要な政策課題。国内外の観光客に、乗車率の低い地方の公共交通が使われると、住民の足である路線存続の後押しになります。地域生活の持続可能性という面からも、観光政策がとても大事です。

 

 

海外の人に教えていただいたのですが、ボボス Bobo(bourgeois bohemian)s ブルジョワ・ボヘミアンと呼ばれる新しい人たちがいて (経済的に何不自由なく暮らす若い人々で、本物志向で創造的な人々をそう呼ぶのだそうです) 自然や先住民族などの文化に関心をもつ傾向が高いのだそうです。

 

長い間受け継がれてきたアイヌの歴史と文化は、途中で迫害を受けながら消えてしまったものもありますが、本物と言えるものだと思います。そして、その背景にある、自然を敬い共存する精神は、国や民族を超えて、尊敬を受けるものだと思います。

 

「モノ」を買う、消費型観光から、体験する「コト」を重視する方向に、海外からの観光客の志向が変化している、と言われています。今まで当たり前のように存在していて、その価値に気づかなかったような、日本の自然、文化、芸術、歴史が、各地で見直されています。

 

アイヌ民族の歴史や文化は、大変貴重な財産ですが、まだ研究が十分進まんでいないこともあり、これから発見されることもあるかもしれません。

 

 

アイヌ民族の居住地は、北海道を中心に、東北、樺太、北方領土、千島列島とダイナミックに広がっていたことが、歴史上明らかにされています。北方の諸民族や中国の影響も受けて、それぞれに、衣装の形や文様も多様だったことでしょう。そういう詳細な研究は、まだこれからでしょうか。7月に訪問した、北方領土の国後島や択捉島にも、写真が残されているのを見てきました。

 

ぜひロシアと日本の研究者が共同で考証し、アイヌ民族と北方地域の、歴史文化資産の価値を高めてほしいと思います。

 

 

 

 

 

展示を比較するため、旭川市歴史博物館にも行きました。白老町から電車で3時間位です。

 

旭川市博物館


こちらの博物館では、縄文時代から近代までの旭川市の歴史が、整然と並ぶ物証の展示と共に、時系列で説明されています。

 

旭川博物館は特に、アイヌ民族を中心とする、北方先住民族の歴史考証に定評があると聞いていましたが、その通り、非常に見応えがある展示でした。

 

 

元寇は歴史上有名ですが、アイヌ民族が元と戦っていた歴史があることは、知られていません。私も初めて知りました。

 

アイヌ民族が海をカヌーで自在にわたりグローバルに活動していたことや、アイヌ文化とは異なるオホーツク文化と呼ばれる文化をもつ北方民族が、アイヌと同化し、あるいは排除されながら、同時代に存在していたことも、比較的、最近分かったことのようです。出土された竪穴式住居や、土器の文様などと共に詳しく説明されていました。

 

アイヌ民族は、グローバルな交易で、日本の内地や大陸から、美しい装飾品の数々も入手し、手の込んだ木彫りや刺しゅうなど芸術性の高いものを身につけていた事が、豊富な展示物から伺われます。

 

 

 

 

 

 

 

 

アイヌ期以前の縄文時代からの土器も、出土された場所の記録と共に展示されています。

 

 

ミニチュア土器というものが、こんなに集まっているのを初めて見ました。

 

 

 

 

ひとつ、旭川博物館で勿体ないと感じたことは、日本語のみの説明だったことです。他の博物館も、共通の課題だとは思いますが・・・。こんなにレベルの高い展示と説明が、外国人の方が来たとしても、十分内容を伝えられません。白老を中核とする民族共生象徴空間の構想の中には、多言語対応は入っているでしょうか。

 

尚、旭川市から約1時間のところには、最近有名になっている美瑛の青い池があります。ネットで拡散され、世界中からの観光客で人気の場所になっています。火山対策の堰堤に、水が自然にたまったものだそうですが、人造といわれてもこの青さは確かに神秘的で美しいです。