福岡県大木町は、「大木町もったいない宣言」を、議会で決議。(2008.3.11)

「大切な自然と資源は、未来世代からの預かり物」、との考えから、ごみを資源として活かす循環のまちづくりが行われています。


その中心は、「生ごみ」の活用です。

全体のごみの重量の半分を占める生ごみを、メタン発酵させてガス化し、発電に使っています。

生ごみは、実は、身近な再生可能エネルギー資源です。




成功の秘訣は、生ごみ分別に対する、住民の皆さんの協力です。

平成18年11月から全町で始まった、生ごみ分別。

各家庭には、特製の、水切りバケツが配布されています。



週2回、収集日の前日に地区に収集用バケツが配達され、回収されます。


家庭の生ごみは無料、(大木町では、ごみではなく、資源になります)

燃やすごみ、プラスチック、紙おむつ、粗大ごみは有料です。

生ごみを分別するほど、ゴミ袋代が減る仕組みです。

その結果、

ごみ重量は、7年前から54%減少。

ごみ処理費用は32百万円/年削減。

削減した分を、子育て支援や高齢者福祉などに使い、住民に還元。

これはすばらしいと思いました。

住民から要望の高かった図書館を、木を使って改修したり、高齢者が集える会場に体育館第二アリーナを改修したりと、目に見える形で使っているそうなのです。時間があれば拝見したいところでした。



話を元に戻します。

収集された生ごみをガス化するには、

機械に投入して細かくする必要があります。




機械に入れる前に、

貝殻など硬いもの(機械がこわれる)、
タケノコの皮(硬くて微生物が食べにくい)などを取り除きますが、

家庭での分別を厳しくしずぎず、入れてもいいですよ、と言っているそうです。

そのかわり、ここで、取り除いてあげるのです。

一番大事な作業です。臭気対策も万全にして、外に出しません。



しかも、ごみ出しが困難な高齢世帯には、見守りもかねてサポート。

これもすばらしい。いたるところに、心を感じます。




し尿処理も同じ施設で行われます。(以前は海洋投棄)

メタン発酵施設は、一般の処理施設に比較すると1/3~1/4の建設費だったそうで、町の財政にもメリットがあるということでした。



こちらの発電機は日本製です。

同じような施設では、外国製の発電機が安いという理由で選ばれていることが少なくないのですが、今後、こうした施設が増えれば、日本製の発電機ももっと低価格化・普及が進むことでしょう。

それによって、日本の産業・雇用が生まれていきます。日本にはエネルギー・環境分野の高い技術があるものの、国内で普及しないため成長が思うように進んでいませんが、進めるための政策づくりに向け、各地の調査を重ねています。

ごみ、下水、し尿などの処理施設は全国どこにでもあり、いずれ更新時期がきますので、それにあわせて、生ごみを分別して、メタンガス発酵→発電にしていくことが考えられます。





生ごみ発電がある、おおき循環センターでは学習施設も併設され、全国からの視察にも対応。

隣接の大川市の木をふんだんに使った温もりある空間は木の香り。

ここの電気は、生ごみからできています。



ご説明も丁寧で、分かりやすい。



ごみゼロに向けて、現在、27分別と。



町会主体の紙ごみ回収は、一町会あたり12~14万円/年の収入。

町からも補助してますが、従来の回収よりも、町の負担は少ないそうです。




紙おむつのリサイクルにも、企業と大学とのコラボで全国初の実証に参加。

どんどん進化しています。






生ごみメタン発酵のメリットは、発電だけではありません。

ガス化したあとの、残りの液体は、栄養豊富な有機肥料に。





毎年6000tの液肥。




大木町は農業が盛んな町。町民には液肥を無料でわけています。

水田などへの液肥散布作業代として、1000円/10aでサービス。
通常の肥料散布でも7~8000円かかるので、それに比べてお徳のため大変人気。希望者全員にはできないほどなので、毎年順番にやっているそうです。

しかも、町民には、できたお米を1割引で販売。

町内の農家は肥料代が節約できて、所得がその分上がります。肥料も輸入が多いですから、日本全体でこの方法が普及すると、肥料の輸入が減って経常収支が改善し、日本経済にもプラスです。その金額は、数百億円にもなる可能性があります。
今までのように、ただ燃やすだけでは環境に悪いだけでなく、「もったいない」のです。


さて、循環センターの横には、大木町の野菜や果物をふんだんに使ったビュッフェ・レストランがあります。ごみ処理施設は迷惑施設と見られがちですが、レストランがあっても大丈夫なのです。町外からの利用も多く、30分待ちは普通で、2時間待ちといわれた方もいたとか。

特産のキノコ、揚げたてのフライが、特に人気だそうです。



新鮮な野菜・果物、選べるビュッフェ形式。人気が出るのも頷けます。



これは?フルーツのホワイトチョコレートフォンデュ、のようなものでしょうか?



こちらの運営は、すべて、女性がしきっているそうです。

ちょっとした心遣いが随所に。

女性、若者、高齢者も活躍できる町にという考えが、生きています。



お隣は「道の駅」。新鮮野菜や果物。

キノコが面白い売り方をされています。もぎたてを買えるようにという配慮。

キノコが育った後の廃菌床は、アスパラの生産に再利用されます。

ここでも、循環農業。

しかも、アスパラはとても収益性が高く、サラリーマンから転身もあると。



この素晴らしい循環まちづくりのリーダーは、石川潤一町長です。

もとは、町の環境課長さんでした。



「子どもの時代につけを残さない地域社会づくり」

隣接自治体の女性議員さんと一緒に学ばせていただきました。



気候変動という地球規模の問題に、地域から取り組む姿勢に心から共感。

しかも、最も身近な、「生ごみ」という問題からです。

とても、貴重な視察になりました。

ありがとうございました。