飲んだお茶のせいか寝つかれぬ初夏の夜、三味線をそぞろ爪弾き、薄月夜に心境を重ね、鳴く時鳥に思いを託した小唄です。
ゆったり沁み入るような曲調で、後半、時鳥に準えた三味線の音も一興です。
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解説:「茶のとが」は、科(とが)です。
「河竹」は憂きを掛け、川辺で浮き沈みする竹を不安定な身の上に例えています。
「水調子」は、三味線の絃を基準音(一本=一の糸をA(ラ))より低くした調子で、「川竹」から掛かっています。
「涙ににじむ薄月夜」からは、つい涙ぐんでぼんやり見える薄月夜は、傘を持つ程ではないけれど、曇りがちな我が胸に似た月夜であるということです。
「晴らす雲間の時鳥」は、自分の雲った胸の内を晴らしてくれるかのように、時鳥が一声鳴いて飛んでいくということです。
明治中期。小唄備忘録500番―その187「茶のとが」(2分7秒)
画は、梶田半古「杜鵑一声」(上)と、上村淳之「時鳥」(下)です。