これまで取り上げそびれていたBL漫画たち その2 | 偏食猫の好きなものを好きなだけ

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好きなもの=漫画、小説、時々映画について書きます。かなり偏りがあります。

 

おまゆ『おあずけのキスのゆくえ』

 

(あらすじ)

ゴシップ編集記者というハードな仕事のストレスを、出張ホストとの一夜限りのセックスで吐き出す俊。貪るようなキスで頭を溶かし、身体を重ねて快感に溺れる。
ある日、甘い顔立ちに惹かれ指名したタチ専キャスト・ナオに、いつものようにキスを求めると…
――俺 キスNGですよ
ショックを受ける俊だったが、恋人にするように優しく丁寧に触れてくるナオに、感じたことのない温もりと切なさを覚えてしまい…。
過激でピュアなギャップ・ラブ。

 

エロも清潔感もある、顔の良い2人の純愛 89点

 

なんと顔の良いことか。とため息が出る表紙。そこは安定のおまゆ先生です。『コンビニ君〜』もよかったですし、何より今描かれている『欲しいときだけ、好きなだけ』が私的には最高の攻めと受けでして、我慢できずに単話でも購入しているくらい。

 

というわけで、こちらの『おあずけのキスのゆくえ』も期待に違わずの絵の綺麗さでした。お話もすごくちゃんとした恋愛のお話でして、かわいいかったです。

 

なんでしょうね。「出張ホスト」とか「一夜限りの・・」とかまあそれなりに現実的というかハードな話にもなりそうな要素は盛りだくさんなのですが、終始清潔感が漂っていました。

 

おまゆ先生の絵の雰囲気によるところが大きいとは思うのですが、何より主人公2人がね。なんというかわいい人たち!いい子たち!という感じで、そんな2人がちゃんとした恋愛をしていて、温かいお話でした。

 

また恋愛不要論者の吉川さんがいい役割を担ってくれているんですよね。しかしあの人絶対過去に何かあったよね。

 

ナオ君はいい子すぎてちょっと心配になるけど、俊さんと妹さんがいるからね、大丈夫かな。とにかく、今読み返しても「顔の良さがすごい」としみじみ思うこちらの作品。読後感の良さもあって、おすすめです!!

 

 

 

 

 

暮田マキネ『還らずの夏』

 

(あらすじ)

愛してるから、さようなら。オメガバース作品を含む珠玉の短編集コミックス創刊第1弾! 描き下ろしペーパー付! ! <あらすじ>「高校出たらさ、二人で暮らさね?」陽(はる)と奈津(なつ)は物心つく前から、何をするにもどこへ行くにも二人一緒だった。ずっと、こんな日々が続くと信じていたのに―――君がいない夏がくる

 

暮田先生らしい影と不穏さ溢れる短編集  86点

 

暮田マキネ先生の短編集となるこちら。いやー、暮田ワールド全開でした。

 

美しい絵もかわいい絵も自在に描く高い画力、優れたストーリーテリングと並ぶ暮田先生の魅力って不穏さというか影の部分がどの作品にも通底しているところだと思うんです。

 

その影の部分がこちらの短編集に収録されているどの作品にも見られてよかったですねー。

 

表題作はもう胸が締め付けられました。このどんなに頑張っても絶対にどうしようもない絶望感て私は弱くて、辛かったですねー。まあ私的には敷島くんが好みなので、「そっちに行けばいいのに」なんて思ったりもしましたが。(薄情)

 

ちなみに中表紙が悲しいけど素敵でした。

 

他も、ご主人様と使用人の話、『ファザーファッカー』の前日譚といい、どれも不穏。幸せになる道が見えない!!でもそこがいい!!

 

あ、オメガバースものの『不機嫌なつぼみ』は唯一ほんわかしたいい話でした。これ、もっと長く読みたいなー。

 

ということで、どのお話もそれぞれの雰囲気がちゃんとあってよくできています。暮田先生のいろいろな作品が楽しめる『還らずの夏』、ぜひ読んでみてください。

 

 

 

 

 

藤峰式『賭けセクGP』

 

(あらすじ)

「お前に、こいつの価値が分かるわけないだろ」その日限りの出会い目的でBARを訪れた佐久間そこで学生時代の因縁相手・皆瀬と再会を果たす一方的な恨みを持つ佐久間は、見知らぬ人のフリをし一泡吹かせようとラブホに誘った昔からなんでもこなしてしまう皆瀬に情けなく「挿れさせてください!」と言わせたいのにお互いに主導権を握らせたくない!!そんな皆瀬からセックスで賭けを持ちかけられて…!?ハメるか嵌められるか、譲らないエロバトルが始まる…!!ギャグとエロのスペシャリスト藤峰式が贈る、究極の鍾愛!!

 トラウマもコンプレックスも吹っ飛ばすエロバトル 88点

 

藤峰式先生の作品は面白さが保証されていますので、安心感がすごい。こちらもいつも通り、高いテンションでギャグとエロが描かれ、最後は幸せなゴールに連れていってくれました。

 

とにかく佐久間がかわいそうでね。ずっといろいろなことに囚われてるじゃないですか。エリートとしてのプレッシャーとか絶対に勝てなかった皆瀬へのコンプレックスとか。そんな彼が「セックスでは勝つ!!」と奮い立つ(え?ダブルミーニングではないですよ)けど・・っていう。

 

佐久間ほどじゃないかもしれないけど、みんなありますもんねこういう囚われていること。自分を認められないとか。

 

お話は、皆瀬と関わりを持っていくことで佐久間の中でいろいろなものが変わっていき、賭けは負け続けるけど最後は自分を認められるようになっていました。

 

藤峰式先生のこういう突拍子もない設定からすごく普遍的なことを描くところ、すごいと思います。ギャグもちゃんと入れてこれだもんね。

 

しかし、皆瀬。いいわー。これまたスパダリですよね。すごく今どきな感じがある。あとアレが大きい。大事ですよねー。

 

まあなんとなく、『有給オメガ』とかに比べると爆発力というかググッと引き込まれるものはなかったかなと思いますが面白かったです。

 

ということで、こちらの作品、藤峰式先生らしさを堪能できる良作です。

 

 

 

 

 

紅『片思いは最悪』

 

(あらすじ)

「俺とセックスしてくれ!」 幼馴染でもあるBL漫画家・冬馬から突然性交を強要された燎。BL漫画を描く上で男同士のセックスを実際に試したいと言うが、燎は長年片思いしている相手のとんでもない提案に、嬉しいやら悲しいやら――この据え膳、食っても食わなくてもしんどいんだけど? 

 

天然な受けの怖さと気の毒な攻め 82点

 

いますよねー。極度の浮世離れキャラ。作家とか創作者、学者とかに多い気がする。だいたいエロにも疎くて、人に指南してもらったりとかそういう展開とセット。

 

こちらの『片思いは最悪』もまさにそれ。BL漫画家の冬馬は創作活動のためにと幼馴染の燎にセックスの実践の相手を頼むって、おーい、すごいな。そんなに浮世から離れちゃってるのか。でも顔がいいからモテるらしく、彼女とかはいたんだよね。なんつー奴。

 

しかしですね、これ、実は両片思いの話ですよね。燎はずっと冬馬のことが好きで世話を焼いてあげてますけど、冬馬も自覚していないだけで燎のことが好きなんですよ。ただ恋愛感情がわからないってだけで。まあそれでよくBL漫画家やってるなとは思いますが。

 

燎が不憫すぎるので、やっとのことでハッピーエンドになって「報われたね」と思ってしまいました。まあこれからは冬馬の身体がもつまで、燎がSっ気を炸裂させまくってイチャイチャするんだろうからほんとにめでたしめでたしという感じ。

 

エロ多め、でもさらりと読める作品です。