ドローン攻撃

 

21世紀に入って多用されるようになった兵器のもう一つの例に、ドローンがある。つまり、無人機である。イラクやアフガニスタンでの戦争でアメリカ軍が多用した。その後ドローンは、イスラエル、トルコ、ウクライナ、ロシア、さらにはフーシー派などの国家として承認されていない武装組織によっても使われるようになっている。ここではアメリカに話を絞ろう。

 

アフガニスタン戦争を始めた頃から、その利用が目立ち始めた。偵察とか爆撃、あるいは標的殺害に使われている。アメリカは、国家の組織である軍隊に対してばかりでなく、自国がテロ組織あるいはテロリストとみなす相手をドローンで攻撃してきた。

 

誤爆や巻き添えになる人々が多く大きな問題となっている。しかも問題はそれだけにとどまらない。アメリカ市民が海外で、テロリストとして殺害される例もすでに起こっている。仮にアメリカの諜報当局がテロリストと認定し危険な人物と判断しているにしても、アメリカ政府が、法的な手続きも経ずにドローンを使って他国の主権を犯して侵入し、殺害してよいものだろうか。

 

アメリカによるドローンを使った標的殺害で最も有名な事件が2020年1月に起こった。イラン革命防衛隊の海外活動を統括していたカーセム・スレイマー二ー将軍の殺害だった。イラクを訪問中のスレイマー二ーを、トランプ大統領はドローン攻撃で殺害した。公式に戦争状態にもない国の軍幹部を第三国で公然と殺害するというのは、他に例を知らない。イランは報復としてイラクのアメリカ軍基地を弾道ミサイルで攻撃した。アメリカ軍に死者がでなかったので戦争は避けられた。だが、ドローン攻撃が引き起こした両国間の戦争の危機だった。

 

        

軍事技術は、アメリカの憲法の起草者たちが想像もしなかったレベルにまで到達している。こうした戦争未満の武力行使をいかに制御すべきなのか。アメリカ合衆国憲法は沈黙している。現状では、これが法的な危機であるとの激しい議論は聞こえてこない。今日もアメリカ製のドローンが世界の空を飛行している。大きな戦争を引き起こす危険性をはらみながら。そしてトランプの大統領復帰の可能性が話題となっている。

 

-了-