本日ラジオ出演のご案内です。

 

7月26日(金)20:05~20:55頃

『荻上チキ・Session』

その1か月に起こったニュースについてリスナーメールを交えて語る「ニュース座談会」

 

 アシスタント: 南部広美(フリーアナウンサー)

 放送地域:TBS ラジオ放送圏内の関東エリア

 ※TBS ラジオのYoutube チャンネルで音声同時生配信

  放送後にPodcast による音声配信も行います

 

 

イラン

 

その上、4月にイスラエルとイランのミサイル攻撃の応酬に関しても、イランを支持する立場をとった。これは、産油国との関係を強化するという政策の反映だろう。また、この事件の直接のきっかけが、中国にとっては看過できかったのだろうか。

 

というのは、4月1日にイスラエル空軍がシリアの首都ダマスカスのイラン大使館を爆撃しイラン市民が犠牲になったからだ。外交施設は国際法によって保護されている。それを爆撃するというのは、とんでもない国際法と国際秩序に対する挑戦である。それだけでも中国がイランを支持するには十分な根拠である。

 

同時に大使館の爆撃という途方もない国際法違反の犠牲になった経験が、中国にはあるからだ。1999年5月、当時まだ存在したユーゴスラビアという国の首都ベオグラードの中国大使館がアメリカ空軍によって爆撃され30名近い死者が出た。アメリカは、これを誤爆として謝罪したが、当時は旧ユーゴスラビアの内戦において米中が対立していたという背景もあり、中国側は誤爆を装った意図的な攻撃ではないかとの疑いを抱いた。ハイテクで知られたアメリカ空軍が大使館を誤爆するだろうかという疑問は、あって当然だろう。ちょうど2024年5月は、その「誤爆」の25周年にあたる。その記念の月の1か月前のイスラエルのイラン大使館爆撃である。しかも、誤爆の振りさえしない意図的な攻撃である。中国としては、絶対にイランの報復の権利を擁護したかったろう。

 

重力

 

いずれにしろ、こうした最近の中国の姿勢に、イスラエルは不快感を示している。昨年10月末には、中国のイスラム教徒の多い新疆ウイグル地区で人道に対する罪が進行しているとの声明に、多くの国々と共にイスラエルは名を連ねた。

 

また今年4月には議員団が台湾を訪れて当時の蔡英文総統と面談している。イスラム教徒と台湾の問題、いずれも中国の嫌がる点を突いた格好だ。

 

おそらく中国とイスラエルの関係を見極めるヒントは、前に紹介したハイファのコンテナ・ターミナルの将来だろうか。この戦略的な港湾に中国資本が入ることに、アメリカは反対してきた。というのは、この港にはアメリカ艦隊も寄港するので、その軍事機密が守れないのではないかと懸念しているからだ。

 

イスラエルが中国のハイファへの資本参加を許容し続けるのか、それともアメリカの意向に配慮するのか注目される。

 

北京政権の成立が1949年だったが、その翌年にイスラエルは承認している。その後も中国との関係を維持してきた。しかし、中国がパレスチナ人寄りでイラン寄りの旗色を鮮明にするようになって、このイスラエルと中国の関係にも緊張が走るようになった。中東で全ての勢力と良好な関係を維持するという中国のアクロバット外交の終わりが見えてきた。中国の中東外交にも、やっと重力が効き始めたようだ。

 

-了-