高橋和夫の国際政治ブログ

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12月25日(土)午前9時半~13時
朝日放送テレビ『正義のミカタ』


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アフガニスタンの巡り合わせ

2021年8月末にアメリカ軍の飛行機が最後まで残っていた同軍の将兵を載せてアフガニスタンの首都カブールの空港から飛立った。「これで01年から約20年間に及んだアメリカの歴史上で一番長い戦争が終わった」と、アメリカのメディアは報じている。もちろん終わったのは、アメリカにとってのアフガニスタン戦争に過ぎない。アフガニスタンの人々にとっては、これからも内戦がつづくのが懸念される。


この戦争の勝者はだれだろうか。もちろんアメリカ軍を撤退に追い込んだターレバンと呼ばれる人々の勝利である。ターレバンを支援したパキスタンの勝利でもある。そして国際政治全体の大きな視点で見ると、勝者は中国だろう。アメリカがアフガニスタンやイラクで血を流しお金をドブに捨てるような戦争をしている間に、超大国へと中国は飛躍した。アメリカの関心が中東に集中している間に、中国は周辺の海域に人工の島を建設し、軍事基地を置いた。アメリカにとってはアフガニスタンやイラクは、第2のベトナム戦争であった。発展途上の世界で無駄な戦争をしている間にライバルが力をつけるという経験は、アメリカにとっては初めてではない。


1960年代から70年代にかけてソ連の存在感が大きくなった。もちろん第2次世界大戦末期からソ連は超大国として姿を現し、アメリカときびしく対立した。さすがに両国が直接に戦火を交えることはなかったので、この対立は冷たい戦争、つまり冷戦として知られる。しかし、両国は朝鮮半島で、中東で、インドシナで、代理戦争をくり広げた。冷戦は、発展途上の世界では熱かった。だが、軍事力や経済力を比べると、ソ連はアメリカに及ばなかった。ところが60年代から70年代に急速に力をつけた。軍事面ではアメリカを上回る力を保有しているのではとの議論さえあった。


この時期に軍事面でソ連がアメリカとの差を詰め追い抜いたとの認識を生んだ背景には、二つの要因があった。一つは、もちろんアメリカがインドシナの泥沼に足を取られていたからであった。


もう一つは、エネルギー価格の高騰であった。1973年の第4次中東戦争が引き起こした第1次石油危機で、石油価格は4倍になった。そして78年から翌79年にかけてのイランにおける革命状況が、同国の石油生産を止めた。石油価格はさらに2倍になった。アラブ産油国などが潤ったのは広く認識されている。


じつは、世界最大級のエネルギー生産国のソ連が、この恩恵を最も受けた国の一つであった。ソ連はキューバ、アンゴラ、モザンビーク、シリアなどにさまざまな形で支援を与え、介入した。そして介入を可能にするための大艦隊を建造した。当時は「熊が泳ぎを覚えた」と表現された。そうしたソ連の軍事力の拡張を象徴したのが、1979年末のアフガニスタン介入だった。


ところがソ連はアフガニスタンで激しい抵抗を受け、結局1万5千名の戦死者を出して10年後の89年に撤退した。そして、その2年後の91年に崩壊した。その崩壊によって、国際政治の上でのアメリカの一極覇権が成立した。


その10年後の2001年、アメリカが同時多発テロに襲われた。黒幕とされる国際テロ組織アルカーイダは、当時のターレバン政権支配下のアフガニスタンに根拠を構えていた。アメリカは、その指導者であるオサマ・ビンラーディンなどの引き渡しを要求した。ターレバン政権が拒絶すると、アメリカはアフガニスタンに軍事介入して、同政権を倒した。その後20年にわたってつづく同国への介入の始まりであった。


その介入の隙に中国が超大国として姿を現した。アフガニスタンは大国の墓場と呼ばれる。たしかにソ連にしろ、アメリカにしろ、この土地でつまづいた。力の絶頂期にソ連は、この国に介入した。だが、アフガニスタンでのつまずきが、みずからの崩壊を準備し、アメリカの一極覇権への道を開いた。そしてアメリカは、その一極覇権の時期に介入を始め、国力を消耗させた。それが中国の台頭を準備した。アフガニスタンという国は、国際政治の節目節目に登場する巡り合わせのようだ。


表 介入の半世紀

1973年第4次中東戦争と第1次石油危機

1978年イランの革命状況と第2次石油危機

1979年ソ連のアフガニスタン介入

1989年ソ連軍のアフガニスタンからの撤退

1991年ソ連邦の崩壊

2001年アメリカ同時多発テロ、アメリカのアフガニスタン介入

2021年アメリカ軍のアフガニスタンからの撤退


-了-


※『まなぶ』(2021年10月号)38~39ページに掲載された少し前の拙文です。出版元の了承を得てアップします。

石ころ、石器、石油

11月末にアメリカ、中国、日本、韓国、インドなどの石油輸入国が緊急時に備えて備蓄している石油の一部を放出した。これによって各国政府は、石油価格の安定させようとしている。ところで、なぜ石油価格が上昇しているのだろうか。


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