以下の拙文を出版元の了承を得てアップします。

この件に関しましては、すでに論じてきましたが、これは、その「進化版」になります。
 

「ガザ戦争の拡大のシナリオ/イエメンのフーシー派」 
『まなぶ』2024年2月号、10~14ページ 

 

 

世界経済を脅かす危機

 

昨年10 月に始まったガザでの戦争は、すでに2万人以上の人々を殺し、さらに多くを傷つけ、無数の人々を難民状態においた。そして今日もつづいている。この戦争は悲劇だが、この悲劇の拡大が懸念されている。一つは、レバノン南部に拠点を構えるシーア派組織ヘズボッラーとイスラエルの衝突である。すでに低レベルでの衝突が始まっているので、より正確に表現すれば、衝突の拡大である。

 

もう一つ懸念されるのは、アラビア半島南部の国イエメンの広い部分を支配するフーシー派の動きである。フーシー派がイスラエルに向けて弾道ミサイル、巡航ミサイル、そしてドローンを発射している。また同派は、紅海でイスラエル関連とされる船舶を拿捕したり攻撃したりしている。紅海は世界貿易量の12 パーセントが通過する重要な航路である。フーシー派の動き、そして、フーシー派への対応によっては、この貿易路が長期にわたって使えなくなる懸念がある。また、戦乱が周辺の産油国に飛び火する可能性もある。そうなれば、間違いなく輸入物価全般の上昇、さらにはエネルギー価格の上昇によって、世界の人々の生活が脅かされるだろう。ここではフーシー派について解説しよう。

 

フーシー派

 

この世界の表舞台に突然に踊り出てきたフーシー派とは、いったい何者なのだろうか。フーシー派は、シーアの一部とされるザイド派に属し、イエメン北部でサウジアラビアと国境を接する都市サアダを中心とする地域を拠点としている。ちなみにイエメンの人口の3分の1はシーア派である。イエメンの総人口が3千万程度なので、実数にすると1千万人がシーア派という計算だ。フーシー派だけだと、そのイエメンの人口の10 パーセント強とされる。つまりシーア派の3分の1になる。

 

さて2011年の「アラブの春」の後、2014年に始まったイエメン内戦でフーシー派は勢力を強めた。この年9月に、フーシー派は首都サナアを掌握した。ちなみに、フーシーという人物に指導されているのでフーシー派として言及されるが、これは他称であり、自称はアンサッラー(神の味方)である。ここでは、なじみの深いフーシー派という表記を通そう。

>次回につづく