「対策」だけが存在する日本

 

 

こうした状況下で日本の移民受入数の少なさが際立っている。図3の地図の各国に丸の大きさは、その国に移民受け入れ数を示している。もちろん世界最大の移民受け入れ国はアメリカである。図4に示すように、5千万人のアメリカ国民は移民である。アメリカ市民の7人に1人は移民という計算になる。

 

ヨーロッパで最大の移民受け入れ国はドイツである。移民の総数は1600万人近い(図5)。ドイツの総人口が8千万人程度なので、これは5人に1人の割合になる。割合からすればドイツはアメリカ以上の移民受け入れ国になる。アメリカやドイツに比べると日本の受入数は少ない。それも、けた違いに少ない。図6に示すように300万人に達していない。これで日本は国際貢献国家と言えるだろうか。

 

移民ではなく、難民の受入数で見るとどうだろうか。たとえば2015年にドイツはシリアからの難民を100万人も受け入れた。これと比べると、日本の難民受入数はケタ違いに少ない。しかも何ケタも、である。2022年に、日本は飛躍的に難民認定数を増やしたと政府が発表したが、その数は、わずか74人であった。これで日本は自らを国際貢献国家と呼べるだろうか。

 

前に引用した日本国憲法前文の「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う」という言葉にふさわしい政策をとっていると言えるだろうか。「自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」との精神を政策面で体現していると誇れるだろうか。

 

日本という国が、いかに、この問題を軽視していたかを端的に示すのは、移民政策が存在しないという状況である。もちろん難民政策もあるはずがない。あるのは難民対策という付け焼刃の、その場しのぎだけである。

>次回につづく