対話のメカニズムの構築

 

歴史ではなく今日的な課題に関して言えば、ぜひとも最近のイランの地域政策に支持を表明したい。つまりサウジアラビアを始めとする周辺アラブ諸国との関係改善の姿勢である。これに全面的な同意を表したい。産油国間の対立と紛争は、日本のような石油輸入国に何の益ももたらさないからである。中国の仲介かどうかに関わらず、日本がエネルギー供給を依存する地域の安定化は歓迎すべきだからだ。アメリカが必ずしも、テヘラン・リヤド間の関係改善を喜んでいない。ここで日本の独自の認識を強調しておきたい。

 

またイランと周辺諸国の関係改善は、産油国同士の対立を封じるのみならず、さらにイスラエルによるイラン攻撃を難しくする。仮にイスラエルがイランを空爆するとすれば、イスラエル空軍はイラン周辺諸国の空域を飛行せねばならない。そうした諸国の明示的もしくは暗黙の了解が得られないとすれば、イスラエルによる開戦は難しくなる。イランとアラブ諸国の和解は地域の安定化に、この面からも寄与する。これまで敵対してきた諸国との関係改善に踏み出したイラン指導層の勇気に敬意を払いたい。また日本でペルシア湾岸地域の安全保障に関する国際会議の定期的な開催の提案がなされてもよいだろう。政治レベルでも、実務レベルでも、あるいは研究者や市民レベルでの恒常的な意見交換の場を日本に設けたい。

 

こうした場に、たまたまアメリカの研究者が参加したりすれば、イランとの接触のチャンネルにもなる。かつて京都郊外の比較的に目立たないホテルで、日本の某シンクタンクが国際会議を招集し、そこにイランとアメリカの研究者が、「偶然に」同席して意見交換を行った例もある。イランとアメリカの研究者たちが、それぞれの政府に近かったのも、「たまたま」であった。

 

もっとも普段は外国人の少ない地域に多数の外国人が集まっているというので、不審を抱いた京都府警が動きかかるというエピソードも引き起こした。

 

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