エネルギー

話をウクライナ情勢に戻そう。まず、この戦争によって、エネルギー価格が上昇した。ヨーロッパ諸国はロシアからの石油と天然ガスの輸入に依存してきた 。ウクライナでの戦争が引き起こした混乱でエネルギー価格は、一時期は天井を抜けた。 支持率の低迷するバイデン政権にとっては石油価格の高騰は避けたいところだったので、これがイランとの合意への圧力となるだろうとの読みもあった。核合意が再建されイランに対する経済制裁が撤廃されれば、イラン原油が国際石油市場に戻って来る。現在のイランの石油輸出は日量100万バレル程度と見られているが、中長期的には、これが倍増するだろう。またイランがタンカー備蓄などで保有しているとみられる原油が1億バレル近くある。この放出が、石油市場を沈静化させるのに寄与するだろう。それだけイラン核合意の再建交渉の成功の価値が上がっている。バイデン政権にとって、そしてヨーロッパ諸国にとってである。イランの交渉上の立場が強くなった。少なくともイラン側は、そういう理解だったようだ。

しかし同時にウクライナで対立しているロシアが、本当にイランとの核問題で協力してくれるだろうかとの疑問も残る。イランの石油が市場に戻ってくれば、ロシアのエネルギー面でのヨーロッパに対するテコは弱くなる。ロシアと欧米は、イラン核問題とウクライナ問題という二つのチェスを同時にプレーしている。欧米にとっては、ウクライナでの戦争は、イラン核合意再建の必要性を高め同時に難しくした。

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