完全制圧の道険しく


ISが主要拠点としてきたモスルの陥落は、イラク情勢が新たな段階に入る転機となる。ISという共通の敵を失った中央政府とクルド人がどう対峙していくのかが懸念事項だ。


クルド自治政府は独立の是非を問う住民投票を9月に行うと表明している。シーア派のアバディ政権がスンニ派の意向をどこまでくんで復興を進めていくかも課題で、不安定な状況は今後も続くだろう。


支配地域を狭めつつあるISは、世界各地でのテロ活動を強めていくと見られる。このまま組織の体がなくなっていけば、過激派組織アルカイダに吸収される可能性もある。対IS作戦の主戦場はシリアに移るが、様々な
勢力が入り乱れる中で完全制圧の道は険しく、中東情勢の先行きは楽観できない。


※『日経新聞』(2017年7月12日 水曜日)朝刊9面「国際2」欄に掲載した記事です。