昨年末シリアのアレッポの攻防戦が終わった。アサド政権軍と、それを支援するロシアやイランなどの諸勢力が勝利を収めた。敗れたのは反体制派と呼ばれる勢力である。その意味を理解するためには、現在のシリアの情勢の理解が必要だろうか。大まかに解説しよう。


シリアはアサド政権の支配地域と、その他に分かれる。その他はさらに二つに分かれる。アサド政権に反対する勢力の支配地域とクルド人の支配地域である。クルド人は、アサド政権寄りでもなければ、反アサド勢力寄りでもない。クルド人はクルド人寄りである。つまりクルド人の自治や独立を求めている。という事は、シリアがアサド政権と反アサド政権勢力とクルド人に三分されている。面倒なのは、反アサド勢力である。反アサド勢力は、大ざっぱには二分できる。一つは比較的穏健とされる勢力、通常は反体制派と呼ばれる勢力である。もう一つはイスラム急進派である。そのイスラム急進派は、さらに二つに分けられる。IS(「イスラム国」)とアルカーイダ系の組織である。


これで、やっとアレッポの戦いの終結の意味を語る準備ができた。アレッポを支配してきたのは、主として反体制派であった。穏健とされる勢力であった。この勢力がロシア軍の激しい空爆にさらされ、そしてイランの影響下にある勢力の陸上での攻撃を受けて敗退した。この敗北によって反体制派と呼ばれる勢力がアサド政権を倒してシリアの将来に関して大きな役割を果たすという線は消えた。残るのは勝ち誇るアサド政権、クルド人、そしてイスラム勢力である。


それでは、なにゆえに穏健とされ欧米やトルコの支援を受けていたはずの勢力が敗退したのだろうか。


>>次回につづく


※「まなぶ」2月号P.58に掲載されたものです。