さて、マレーシアに話を戻すと、2014年3月に不思議な事件が起きている。
クアラルンプール空港を飛び立った北京行きのマレーシア航空370便が消息不明となった。その後、1年以上もたった15年7月、まったく違う方向のインド洋の東部で、つまり東アフリカの方面で同機の機体の一部が発見された。飛行記録を収めたブラック・ボックスは発見されておらず、真相は依然として闇の中である。
この事件と空港の職員がコンピューターをサボタージュしていたという事件と関連があるのかどうかも不明である。しかし、マレーシアの空港をめぐる保安管理への不安を高める二つの事件であった。マレーシアに関する不安の第三の根拠をあげると、マレーシア航空の安全管理への姿勢である。
同じ年の7月には、オランダのアムステルダム発のマレーシア航空17便がウクライナ上空で撃墜された。親ロシア勢力の対空ミサイルによる撃墜との説が有力である。先に述べた同年3月の失踪事件に次ぐ不幸であった。不運と言えば不運である。だが、戦争状態にあるウクライナ上空の飛行をつづけたマレーシア航空の判断は、適切だったのだろうか。疑問を抱いてしまう。この空域の飛行を取りやめた航空会社もあった。
マレーシア出身者が「イスラム国」で訓練を受けているだろうとの推測、空港の管理の甘さ、同国の航空会社の姿勢、この三つを足すと、やはりマレーシアの治安が気にかかる。
-了-
※『まなぶ』2016年年7月号、58~59ページに掲載されたものです。