2012年7月10日にパキスタン各紙が伝えたところによると、業界筋はこの冬の深刻なガス不足を懸念している。また電力不足の産業界への悪影響も予想されている。長期的にも厳しいガス不足が予測されている。2017年までには日量で35億立方フィートが不足する。こうした状況を受けて、パキスタン国内にはイランからのガス輸入計画の促進を求める声が高まっている。


この計画によれば、イランのペルシア湾岸のアスルーエからパキスタン国内までパイプラインを建設し、ガスを運ぶ予定である。初期の段階では日量7億5千万立方フィート、そして最終的には日量15億立方フィートのガスが30年間にわたりイランからパキスタンへ輸出される予定である。アスルーエからパキスタン国境までの1150キロメートルのパイプラインは、ほぼ完成している。


対イラン経済制裁を強化しているアメリカが、この計画に強く反対している。一時はパイプライン建設資金の融資の予定であった中国が、3月になって翻意した経緯もある。これはアメリカの強い圧力の結果だとみられている。しかし、先月になってパイプラインの建設の契約がロシアのガスプロム社と結ばれた。またパキスタン側のパイプラインの建設にイランが、5億ドルの融資を提案している。なお建設資金の総額は15~18億ドルと見積もられている。


アメリカは、イランの代わりにトルクメニスタンからのガス輸入をパキスタンに働きかけている。しかし、そのためにはアフガニスタンを通過するパイプラインの建設が必要である。ターレバンとの激しい戦闘の続いているアフガニスタンでのパイプラインの建設と管理は、至難の業である。したがって、この説得は功を奏していない。


昨年のパキスタン領内でのアメリカ軍によるビンラーディン殺害以来、アメリカ・パキスタン関係が危機的な状況にある。そうした中でのイランからのガス輸入の促進は、ワシントンを間違いなく刺激し、イスラマバードとワシントンの関係をさらに難しくするだろう。

(7月11日、記)


畑中美樹氏の主宰するオンライン・ニュースレター『中東・エネルギー・フォーラム』に2012年7月13日(金)に掲載された文章です。


なるほどそうだったのか!!パレスチナとイスラエル
高橋 和夫
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