米国を巻き込み戦争に持ち込みたいイスラエルは、イランへの挑発を続ける。
2月5日、米NBCテレビとのインタビューでオバマ大統領は「イスラエルはイラン攻撃を決定したわけではない。イランが米国本土を攻撃する意図や手段を持っているとは思わない」と述べた。
イスラエルのイラン攻撃が近づいている、との推測が流れているなかで、状況を沈静化させようとの意図を大統領自身が示した。発言には、イスラエルや米国の攻撃が迫っているとイランが考えて先制攻撃を始めるのを防ぐ狙いがあったのではないかと推測される。米国はイランの暴発によって、戦争が始まるのを心配している。
逆にイスラエルは、イラン側からの手出しによって戦争が始まるのを望んでいるのではないかと推測させるような行動をとっている。たとえば1月11日、イランで核開発にかかわっている専門家が暗殺された。一部ではイスラエルと欧米の諜報機関が合同で暗殺を行ったとの見方もあるようだ。事実1月11日の暗殺に関しては、イラン政府は米国、英国、イスラエルを非難した。
だがイスラエルの単独犯行との解釈も可能である。暗殺の直後にホワイト・ハウスのスポークスマンが米国の関与を否定した。またクリントン国務長官自身も関与を強く否定した。さらには、その他の暗殺についても関与を否定した。認めるはずもない、との見方もあるだろう。だが、わざわざ国務長官自らが否定する必要があるだろうか。演技にしては、あまりにも熱のこもった否定ではなかっただろうか。
しかもタイミングからすると、欧米の関与は想像しにくい。1月21日にトルコ・イスタンブールでイランの核開発をめぐる同国とP5+1との協議が予定されていたからである。P5とは安保理常任理事国5カ国︵米英仏中露︶である。プラス1は、歴史的にイランと関係の深いドイツである。この6カ国をP5+1と呼ぶ。また1月末にはIAEA︵国際原子力委員会︶のハイレベルの調査団がイランの招待で同国を訪問する予定も組まれていた。このような時期に欧米が暗殺を実行するだろうか。
>>次回 につづく
※『エコノミスト』2月28日、30~31ページ掲載
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