1.イラク石油の歴史


(2)フセイン体制化での石油開発(前回 のつづき)


この政権の長寿の秘密は何か。飴と鞭である。まず鞭について述べると、秘密警察のネットワークを張り巡らし、国民を監視下に置いた。反対派は徹底的に弾圧された。政治犯が監獄を満たし、国民は恐怖におののいていた。飴の方をみると、1970年代初めから石油の価格が上昇し、イラクは石油ブームに沸いた。これがインフラ建設に向けられた。大学がホテルが道路が病院が続々と建設された。国民の生活水準は目に見えて上昇した。鞭も厳しかったが飴も大きかった。


このバース党支配の下で権力の階段を上った男がいた。サダム・フセインであった。この男の出世は、石油価格の上昇と歩調を合わせていた。不思議な偶然であった。1971年のリビアによる当時としては大幅な石油価格の値上げの成功、1973年の第一次石油危機、そして1978年の第二次石油危機がフセインの出世の時期に発生した。そして石油価格が当時のピークであった1979年にフセインは大統領に就任した。これほど幸運な指導者は少ない。もう一人の例はロシアのプーチンであろう。プーチンが権力を掌握した1999年から石油価格が急騰し始めた。2008年に大統領を退く時期には石油価格は遂に1バレル100ドルを超えた。この男も国内的には大変な人気である。


>>次回 につづく