アフガニスタンへの陸上自衛隊の派遣問題が報道され始めた。以前から、この問題に関しては議論が政府内部で行われて来たようだ。自民党と民主党の一部では合同の研究会が持たれているようだ。この研究会に参加しているのは、民主党の中で賛成の議員である。もちろん民主党内部に反対もある。憲法9条との整合性を巡る議論が続きそうである。また公明党は、派遣に否定的である。支持母体の創価学会が自衛隊の海外派遣に批判的だからだろう。イラクのサマワの自衛隊派遣の際には、公明党は治安面以外のイラクへの協力たとえば南部の湿地帯の環境問題などに熱心であった。支持層への、治安面以外の協力も進めているという説明が必要だったからだろう。東京での状況である。


アフガニスタン現地に目を移すと、状況は悪い。ターレバンの復活が言われて久しい。また、かつては例を見なかった自爆テロが頻発している。アフガニスタンが「イラク化」している。首都カブールに駐在した外交官の話しを聞く機会があったが、首都でさえ護衛付きで行動しているそうである。仮りにアフガニスタンに陸上自衛隊を派遣する場合に、イラクのサマワの様な比較的に安全な場所探しに苦労しそうである。比較的安全な場所には、既にNATO各国の軍隊が展開しているからである。そうした場所が残されているだろうか。サマワでオランダ軍やオーストラリア軍の協力を得たように、適当なパートナーが見つかるだろうか。


アメリカは、各国にアフガニスタンへの増派を求めている。ブッシュ路線を基本的には踏襲しそうな共和党のマケイン候補が11月の大統領選挙に勝てば、アメリカからのアフガニスタンへの陸上自衛隊の派遣を求める圧力は続くだろう。また民主党のヒラリー・クリントンとバラク・オバマの両候補も、イラクからの撤兵を主張しつつも、アフガニスタンをアルカーエダとの戦いの主戦場と位置づけている。と言うことは、選挙の結果がどう転ぼうとも、アフガニスタンへの派遣の圧力は強まるだろう。


陸上自衛隊派遣以外の協力も考慮されているようだが、現地での治安状況が悪く大規模なODAの実施も困難である。パキスタン北部のアフガニスタン国境地域の安定のための大規模な支援との議論あるよう。だが、現地のNGOを通じての支援、いわゆるお団子(ODAとNGOを続けたODANGOをローマ字読みすると「お団子」と読める)を実施するとしても、適当なNGOが少ないだろう。現地の部族の長老にお金を渡すしかないだろう。だが、そうするとお金が何処に流れたのかをモニターするのが困難となろう。


問題は山積している。とりあえず世論対策の一環として政府は、この問題を公に論じ始めたのだろうか。サミットで何らかの方針を発表したいのだろうか。イラク派遣の際には小泉首相の人気の高さが背景にあったが、今回は、この面での雰囲気も異なっている。