アメリカの分断で改めてウエストサイド物語を考える(下) | モノゴトをオモシロくスルドく見る方法「かふてつの方丈記 」

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How to look everythings essentially
or
Everythings gonna be alright

(続き)

レナード・バーンスタイン(+スティーブン・ソンドハイム作詞)の音楽がもの凄く良いのですが、

まず押さえておかないといけないのが、

・トニーとマリアのラヴソング「マリア」、「トゥナイト」(演奏会形式)、

・幸せの絶頂にいるマリアが歌う「アイフィールプリティ」(演奏会形式)、これは舞台版だと第二幕冒頭に歌われます。


・プエルトリコ移民が、アメリカへの憧憬と反感が対立する複雑な感情を唱い踊る「アメリカ」あたりでしょうか。

「アメリカ」は舞台版では女性だけで唱われますが、映画版は男女の掛け合いとなっており、映画版の方が良いと思います(女性に憧憬を歌わせ、男性に反感を歌わせて、背反する感情を際立たせている)。因みに演奏会形式だとこれ。

私が一番好きなのが、「事件」の直前の状況を描いたアンサンブル版の「トゥナイト」です(舞台版)。これは①トニーとマリアの愛、②アニタの愛と、③ジェッツとシャークスが決闘に向けて猛る様の、①~③が交互に描写されており、そして最終的に憎悪と愛がハーモニーを奏でるという物凄い構成で、ウエストサイド物語最大のクライマックスだと思います。これは音楽による弁証法だと思う。ここは舞台の方が。閉鎖空間にジェッツ、シャークス、トニー、マリア、アニタを閉じ込める事で音楽の弁証法を際立たせ、オペラとして成立させることで舞台の方が良い効果で出ていると思う。
 
あと、事件の後で追い詰められたトニーとマリアが希望を求めて歌う「サムウェア」も良い。

おまけ:Sarah Brightman - Somewhere + I Feel Pretty + Tonight

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つまり、移民国家であるアメリカででは「人種間対立」は歴史的にも非常に根深い火種でとんでもなくキケンに要素なのです。

トランプはそこに火をつけてしまっています。今は ”イスラム圏国民の入国禁止” だけだけど、この火は一旦燃え始めるとどこまで広がるか判らない、非常にキケンな行為だと思います。”イスラム圏国民の入国禁止”措置を国民の半数が支持しちゃっていると言う事は、もう火が回り始めているということだと思う。とってもキケンです。

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バーンスタインはウエストサイド物語を含めて3本くらいしかミュージカルを書いて居らず、結局指揮者になってしまいますが、数少ないミュージカルの中でも「オン・ザタウン」ももの凄く良いです。これは、「踊る大紐育」として映画化されていますが、音楽が半分くらい差し替えられており、残ったバーンスタインの曲も微妙に短縮されてしまったりして、非常に残念な出来となってしまいました。
バーンスタインのオリジナル版「オン・ザ・タウン」は前フィルソン=トーマスによってレコーディングされましたが、最近はそれすら売ってないみたい。

↓「オン・ザ・タウン」からのおすすめ曲です。
↓全部バーンスタインオリジナル版です。(曲順に沿って並べました)

 New York, New York / Gabey's Comin/Pickup Song /
  Come Up to My Place / Carried Away /
  Carnegie Hall Pavane / I Can Cook Too  /
 Lucky to Be Me / Times Square / So Long Baby /
  Ya Got Me /  Some Other Time
 
※ウエストサイド物語よりオン・ザ・タウンを推してしまっているは何故だろうと、自分でも思う。
 
 

(アメリカの分断で改めてウエストサイド物語を考える:終わり)