同様の状況を描いた作品があります。ウエストサイド物語です。
ウエストサイド物語は、「ロミオとジュリエット」をアメリカの若者社会で再構築したものですから、オリジナルストーリーを書いたのはシェークスピアです。これをジェローム・ロビンスがアメリカ社会に置き換えて出来たのが、図らずも、プアホワイトとプエルトリコ移民の対立という構図でした。なんか、今の入国制限問題を予言しているような気がします。
アメリカはそもそもが移民で成立している国家だから、色が白かろうが、黒かろうが、茶色だろうが、黄色だろうが、皆、元は移民な訳です。
白人至上主義とかあるみたいだけど、白人だって入植したのが早かっただけで、移民の子孫なのです、で、白人移民だけじゃ労働力が足りなくて、アフリカで人狩りして人身売買の末、奴隷として入ってきたのが、黒人なので、黒人奴隷も白人移民の歴史の必然として生じた物なのです。黒人奴隷はリンカーンによって解放されましたが、サベツ意識はまだ残っている。
その後、メキシコとかプエルトリコなどの中南米から移民が入ってきて、先に入植して来た白人から蔑視・危険視される。ウエストサイド物語はこのような背景を基に構築されています。
現在、蔑視・危険視されているのはイスラム圏の人達なので、トランプが入国制限とかしちゃって、国民の半数が支持してしまうのです。メキシコ国境の壁もそうでしょう。
で、ウエストサイド物語ですが。
サベツ感はそんなにあからさまではありませんが、白人グループ(ジェッツ)とプエルトリコ人(シャークス)を対立させていますから、アメリカで「対立関係」を描こうとするとどうしても人種の問題に当ってしまうと言う、これは移民国家アメリカの永遠の課題なのでしょう。なお、ジェッツは白人とは言ってもポーランド系移民でプアーな訳で、同じ白人でも出自により格差があるとを示しており、移民国家アメリカの人種問題の奥深い闇を感じます。
ストーリーは自明なので今更ですが、白人のトニーとプエルトリコ人のマリアがフォーリンラブして、両者の対立を解消しようとするけれども、ハナシは悪い方悪い方とコロげて行ってトラジェティックな結末に至ると言う物です。ただ、この悲劇によって対立は解消されるのでは無いか・・・という予感を以て終幕を迎えるので、そこに救いがあります。
(続く)