妻Ⅲ
新婚旅行
58回目の結婚記念日は無事迎えられたが、永久の別れが近い妻との思い出
新婚旅行は本土復帰前の沖縄と南九州。パスポートを取って行ったので、これが最初の海外旅行。通貨は米ドル。沖縄は3泊4日だったと記憶しているが、旅費がとても安かった。4日間ガイド付き、2人でネット144㌦。当時のレートは360円だから51840円。私の月収より安かった。ガイドは那覇空港に車で迎えに来てくれた。一応推奨コースはあったが、こちらの要望でどこへでも行ってくれた。妻は美粧院(そう呼んでいた)にも行った。一日は庶民の生活が知りたいとガイドと別れバスに乗って中城城跡へ行った。沖縄旅行ではここが一番心に残った。古い城跡とエメラルドグリーンの海とのコントラストが絶妙だった。首里城は正殿が戦災から復興しておらず、守礼の門だけで平凡な城跡だった。面白かったのはバスの運転手がサンダル履きで運転席の後ろに自分のシャツをハンガーに架けて干していた。当時はそれが当たり前のようだった。
国際通の蛇皮製品の店で土産を見た後、店続きの工房で製作工程を見学した。店から工房へは靴を脱いで間のすだれをかき上げて入った。振り向くとすだれはニシキヘビの皮だった。妻に「蛇だよ」と言うと、「キャー!」と大声を上げ、裸足のまま店の中を突っ切り約20㍍先の大通りまで駆け抜けた。店の人は何が起きたのか分からなかった。私は知らなかったが、妻は「蛇」と言うだけで身震いするくらい大嫌いで、絵を見るのも嫌。私が土産を見つくろっていた時は遠くにいて見ないようにしていたらしい。息子が小学校高学年の時にバレンタインデーにはたくさんチョコレートをもらってきた。冷やかされるのが嫌だったのか、チョコレートを入れた机の引き出しの一番上に蛇皮のベルトを置いていた。妻は引き出しを開けられなかった。
帰りに30㌢ほどの巨大なパイナップル(当時はパイナップルは本土ではほとんど見られず、大変珍しいものだった)を2つ買い、長い葉を持って移動していたが、宮崎空港の植物検疫で葉を切られてしまった。当時は沖縄は外国だから葉についている虫を持ち込んではならないという理由だった。葉を取られたので持ち歩くのに難儀した。宮崎の都井岬ではホテルの人が「やせい馬がいる」と言ったので、妻が「安い馬なら買って帰ろうか」と言った。妻は野生馬の存在を知らなかった。 (つづく)