小笠原流の礼法
最低の礼法講演
きょう(2月26日)午後、品川シルバー大学同窓会による講演会「作法の源流、小笠原流作法 日本の正しい伝統文化と日常の立居振る舞いを学び直す」を聞いた。がっかりだった。若い時から数知れぬ講演を聞いたがこんなひどい講演はなかった。最低だ。
家系の話ばっかり
講師は小笠原流礼法師範の内田菱正氏。祖先の清和源氏の話から始まり、飛鳥、源平合戦、戦国時代、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康に仕え、江戸、明治時代と延々と小笠原家の歴史を語る。種本をつまみ食いして話すだけで、文字の説明もなくたくさんの人名が出てくるから意味が理解できない。1時間経っても小笠原家の歴史の話が終わらない。講演会は老人が対象だから、1時間で休憩に入ることになっているが、休憩時間まで食い込む。
休憩後も家系の話。前触れでは「礼法とは決して一辺倒なものではなく、時・場所・状況に応じた自然な振る舞いが重んじられます」と宣っていたが、一向に本題に入らない。言葉では「うるわしい人になること」というが、講演は「うるわしい」なんてお世辞にも言えない。
心が伴わない礼法
講演のテーマから、私は小笠原流が日本文化形成に果たしてきた役割、現代生活で礼法はどのような役割を持ち、私たちは生活の上でどんな心構えが必要なのかという話しを期待していたが、まったくの期待外れ。最後に、ほんの少し、お辞儀の立礼(会釈・浅めの敬礼・深めの敬礼)の仕方、礼三息、残心(礼を終わった後にも心を籠める)について実践させた後、懐紙の折り方(祝い事、葬儀、残菓包みの仕方)を教えてくれた。礼の仕方は参考になったが、懐紙の折り方など、お茶でもやらない限り実生活では何の役にも立たない。
聞いていた老人どもはみんなうんざりしていた。レジメには「礼法は、相手を大切に思う心から生まれる振る舞いの美学で、相手と自分に心地よい時間を作る礼儀作法です。周りを察する心、思いやりの心として現代にも通じるものです」と書いてある。この女性講師の講演は真逆だった。これでよく分かった。小笠原流を学ぶと形だけが身に付き、「相手を大切に思う心」がなくなり、「自分だけが心地よい時間を作る」ようになり、「周りを察する心、思いやりの心」がなくなるのだ。