回覧板に「幸福の科学」の広告 | 歴史の裏

回覧板に「幸福の科学」の広告

区役所は「町内会の行為」

 

隣から来た回覧板を回そうとして、「これおかしいんじゃない」って妻が言った。見ると、中にお知らせを挟んだバインダーの下の部分に「幸福の科学」の広告が載っている。殿堂の写真の右肩に「どなたでも自由に参拝できます。」とある。妻は「これなら天理教も創価学会も宣伝できるわね」と言う。なるほど、その通りだ。バインダーにはほかに料理店や医者や葬儀屋などの広告も載っているが、宗教団体がOKなら、回覧板のバインダーが宗教団体の広告で占められることにもなる。回覧板の内容なんてほとんど役に立たないから、これまでは見もしないで隣へ回していたが、言われればやはりおかしい。

 

憲法の「信教の自由」違反

大げさに言えば憲法20条の「信教の自由」違反ではないか。20条には「信教の自由は何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない」とあり、第3項には「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない」とある。地方自治体もこれに準じなけらばならないはずだ。

回覧板は地域に関した情報や、町内会や催し物のお知らせなどのために配られるものだが、実態としては区役所や支所、警察や消防などのお知らせがほとんど。いわば行政の広報の役割を担っている。

 

「区は口出しできない」

そこで、区役所の担当課に「区として何か言えるのではないか」と言ったところ、窓口に出た男性は「町内会が自主的にやっていることなので、こちらからは言えません」と予想通りの答えだった。私は「中身は区のお知らせがほとんどだ。その表紙に幸福の科学の広告を載せて全戸配布することは区がその広告を認めていることになり、憲法20条違反ではないか。上司と相談して検討してください」と要望した。

しばらくすると(意外に早かった)電話があり、「区のお知らせは町内会に頼んで配っていただいているので、どんなバインダーを使っていようと、区が意見を言える立場にありません」とやはり予想通りの答えが返ってきた。「中身は区のお知らせ(今回は区のお知らせだけ)なのだから、憲法違反のバインダーにお知らせを挟まないよう、頼めるのではないか」と再度言うと、「あくまで町内会が自主的にやっていることなので、町内会の方に言ってください」と言う。押し問答の末、私は「あなた方は面倒なことはやりたがらない。町内会が勝手にやれということのようだが、私の言っている意味を上司に報告してください」と言って電話を切った。

 

戦時に国の意思伝達手段

回覧板と言えば、私たち戦中派には

 

とんとん とんからりと 隣組
格子を開ければ 顔馴染み
廻して頂戴 回覧板
知らせられたり 知らせたり

 

という隣組の歌が思い出される。1940(昭和15)年に内務省が下部機構整備を府県に通達したのを契機に全国に隣組をつくらせ、お互いに監視させ、その連絡手段としてつくらせたのが回覧板。政府の意思を徹底するための手段だった。行政にとって便利な制度なので、戦後も続いている。いわば行政の下請け業務なのだ。各町内会などは地域づくりの一環として自治体から助成金をもらっているから、区の広報文書を回覧してくれと言われれば断れないのが実情。区は町内会が自主的にやっているというが大ウソである。